主張
雇用対策の充実
正社員が当たり前の社会こそ
安倍晋三首相は自らの経済政策「アベノミクス」で雇用も賃金も改善したと宣伝しています。しかし実態は、賃金の安いパートや派遣の労働者など非正規雇用が増えているばかりで、正社員など正規雇用の回復は遅れています。総務省の5月の労働力調査でも、非正規は1年前に比べ30万人増えていますが、正規は1万人しか増えていません。非正規雇用で働く人たちはすでに全体の4割近くです。その是正が求められるのに、正社員は増やさないというのは異常です。正規雇用を増やし、正社員が当たり前の社会を実現することが急務です。
遅れる正社員の雇用改善
安倍首相が雇用改善の証拠としてよくあげるのが有効求人倍率です。求職者に対する求人の比率が「1」を超え続けているから雇用は改善しているというものです。確かに最近の5月の一般職業紹介状況の調査でも、有効求人倍率は1・09と求人数が求職者数を上回っています。しかし正社員についてみれば有効求人倍率は0・67にしかならず、正社員の仕事を探している人の3人に1人以上が職に就けない状態です。雇用の改善とは程遠いのが実態です。
厚生労働省の「労働市場分析レポート」によれば、正社員の求人は増加幅が小さく緩やかな増加にとどまっており、しかも、建設や運輸、郵便など一部の業種をのぞけば、製造業など多くの業種で正社員の求人の割合が低下していると指摘しています。正社員の雇用回復の遅れは、日本経済にとって軽視できない大問題です。
日本の大企業は労働者の賃金を抑え、正社員を減らして、賃金の安いパートや派遣に置き換えることでもうけを拡大してきました。20年ほど前、当時財界の労務部と呼ばれていた日経連(現在の経団連)が、安上がりな非正規雇用を増やすなどの政策を「新時代の『日本的経営』」ともてはやしたことは有名です。自民党政府もそれにこたえ、劣悪な労働条件を招くと禁止してきた労働者派遣事業を原則解禁し、製造業などにも派遣労働を拡大してきました。非正規の比率が急速に拡大し、働いても生活できない「ワーキングプア」など貧困と格差が拡大した原因です。
安倍政権になり、「アベノミクス」で経済が上向きになったと宣伝しながら、実際には正社員の求人が増えていないのは、大企業が依然として、生産が増えても正社員は増やさず、安上がりな非正規雇用を拡大して、もうけを確保する姿勢を変えていないことを示すものです。安倍政権の「アベノミクス」は、「世界でもっとも企業が活躍しやすい国」にすることを明言し、大企業には減税する一方、労働者には「生涯ハケン」をもたらす派遣法の大改悪や「残業代ゼロ」に道を開く「改革」を押し付けています。これでは正社員など正規雇用の改善が遅れるのは明らかです。
人間らしく働くルールを
もともと労働者派遣法でも常用雇用との「代替」が禁止され、派遣は「臨時的・一時的」とされているように、企業が労働者を雇用するのは正社員など正規雇用が当たり前です。大企業の横暴をやめさせるとともに、正社員が当たり前の人間らしく働けるルールを確立すべきです。安倍政権が雇用改善をいうなら、まず大企業に正社員の求人を増やさせることです。