主張

「戦闘現場」派兵

“血を流す危険”が現実になる

 

集団的自衛権の行使容認を柱とする閣議決定後、初めての国会論戦が、衆参両院の予算委員会で行われました。安倍晋三首相は「自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことはこれからも決してない」と繰り返しました。日本共産党の笠井亮衆院議員、小池晃参院議員の連続追及は、首相の言明が国民を欺くうそであることを暴きました。

武器の使用も認める

 笠井、小池両氏が取り上げたのは、米軍をはじめとする他国軍隊に対し、自衛隊が実施する補給や輸送などの軍事支援活動です。

 閣議決定は、自衛隊の軍事支援活動を「非戦闘地域」に限るとしていた、従来の「歯止め」を取り払いました。この「歯止め」は、米国によるアフガニスタン報復戦争やイラク侵略戦争に際しての自衛隊派兵法(特別措置法)に規定されていたものです。

 「非戦闘地域」は「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域」と定義されます。自衛隊は、実際に戦闘が行われている地域だけでなく、「戦闘が起こる可能性がある地域」でも活動してはならないとされていたのです。政府はこの「歯止め」を、他国軍隊の武力行使と一体化せず、憲法に抵触しないための「制度的な担保」だと説明してきました。

 閣議決定はこうした「担保」を撤廃し、代わりに「現に戦闘行為を行っている現場」(戦闘現場)では支援活動はしないという新たな条件を持ち出しました。しかし、これは、これまで禁じてきた「戦闘が起こる可能性がある地域」での活動をできるようにするものです。実際、自衛隊の活動期間中に「戦闘現場」になることを想定しているのではないかとの笠井氏の追及に、首相は「戦闘行為の現場になる可能性がある」と認めざるを得ませんでした。

 一方で、首相や小野寺五典防衛相は「戦闘現場」になれば自衛隊の活動を休止・中断すると言い逃れようとしました。しかし、自衛隊が戦闘の起こり得る地域で活動すれば攻撃対象となる危険は一層高まります。武器は絶対使用しないと言えるのかと小池氏が追及したのに対し、首相は「武器の使用はある」と明言しました。自衛隊は攻撃されれば応戦し、戦闘に参加することが明白になりました。

 かつてのイラク派兵で航空自衛隊は、「非戦闘地域」とされたバグダッド空港に武装米兵などを空輸しましたが、輸送機はミサイル攻撃の危険に常にさらされ、戦場と紙一重でした。サマワには陸上自衛隊が駐留しましたが、死者を想定し、ひつぎが用意され、宿営地は迫撃砲などによる攻撃を繰り返し受けました。自衛隊員に被害がなかったのは奇跡的だと言われるほどでした。

「閣議決定」の撤回を

 「非戦闘地域」でもこんなに危険なのに、「戦闘現場」になり得る場所でも活動が可能になれば、自衛隊がイラク派兵時をはるかに上回る危険の下に置かれることは明らかです。「考えすぎ」(小野寺防衛相)などと言うのは無責任の極みです。戦闘によって自衛隊員の命が奪われ、他国の人を殺傷するという「殺し、殺される」事態を絶対に生まないため、「閣議決定」は撤回させるしかありません。