主張

安倍首相所信演説

国民の声聞かず突き進むのか

 9月はじめに内閣を改造した安倍晋三首相の、臨時国会での所信表明演説を聞きました。「地方創生」や「女性の輝く社会」など改造内閣の目玉政策にはエピソードもちりばめ、多弁です。しかし、6月の通常国会閉会後強行した集団的自衛権行使容認の閣議決定にはまともにふれず、経済情勢の悪化の中で国民が不安をつのらせている来年10月からの消費税再増税には言及がありません。原発の再稼働や沖縄での米軍新基地建設については問答無用で強行する態度です。国民には耳を貸さず、由(よ)らしむべし、知らしむべからずとばかりに強権政治を突き進むのか。

国会軽視のきわみ

 安倍政権が、通常国会の閉会を待ちかねたように7月1日に強行した集団的自衛権行使容認の閣議決定は、7月半ばに衆参両院の予算委員会でたった1日ずつ閉会中審査がおこなわれただけで、本会議での説明も審議もおこなわれていません。閣議決定にあたって安倍首相は、「今後もていねいに説明し、理解を得る努力を続ける」と約束しました。にもかかわらず、閣議決定後初の所信表明演説で、「法制の整備に向け準備を進めている」というだけで、中身については一言も説明しないとは、国会軽視もはなはだしいものです。

 歴代自民党内閣でさえ憲法上許されないとしてきた集団的自衛権の行使は、日本に対する武力攻撃がなくても他国のために日本が武力を行使するものです。戦後日本のあり方の根本的な転換です。それをまともに国会で説明もしないというのは強権政治のきわみです。安倍首相が閣議決定後の記者会見で、日本は「民主主義国家」だから「慎重の上にも慎重に、慎重を期して決定する」といったのは、まったく言葉だけかということになります。

 国会での所信表明演説は、首相に都合のいいことだけの宣伝の場ではありません。行政の責任者として、国民の声にどうこたえ、どんな政治を進めるのかを、国会と国民に明らかにする場です。安倍首相が「経済最優先」だといいながら、4月からの消費税増税が消費を落ち込ませ、景気を悪化させていることにまともに向き合わず、国民が不安をつのらせている来年10月からの消費税再増税に一言もないのは、まったく無責任です。

 原発問題では、原子力規制委の審査に合格した原発は再稼働を進めると、まさに「問答無用」の態度です。沖縄県民の“島ぐるみ”の反対を無視した米軍新基地の建設についても、「負担軽減」のためだとまったく反省がありません。国民の批判にまったく聞く耳を持たない、強権姿勢は明らかです。

強権政治との対決を

 政権復帰後の安倍首相の国会での演説は、通常国会、臨時国会あわせて4回目です。首相が「成長戦略実行国会」と呼んだ昨年秋の臨時国会では、所信表明演説で一言もふれなかった秘密保護法を国会最終盤で強行しました。「好循環実現国会」と呼んだ今年の通常国会でも、施政方針演説ではほとんどふれなかったのに、密室協議を繰り返し、閉会直後に集団的自衛権行使容認を閣議決定しました。

 国会と国民を無視した安倍首相の強権政治との対決が不可欠です。召集日に国会を取り囲んだ国民の怒りの力をさらに広げ、安倍政権を打倒に追い込みましょう。