政府“消費税は社会保障に”
今年度だけで3900億円削減
「社会保障のため」といって消費税率が8%に引き上げられてから1年―。政府は「増収分は全額、社会保障の充実、安定化に使う」(安倍晋三首相)と説明してきました。小池氏は、「社会保障の充実」に使われたのは増収分の16%にすぎず、「充実どころか、社会保障の負担増、給付減が続いている」と追及。2015年度の社会保障削減が3900億円にのぼることを明らかにしました(一覧表上)。小泉政権時の社会保障予算の「自然増2200億円削減」を大きく上回る削減額です。
小池氏が「社会保障のためだといいながら消費税を増税した翌年にこれだけの社会保障予算削減を国民が納得すると思うか」と迫ると、安倍首相は「給付と負担のバランスを取らないといけない」というだけで、“国民は納得”と答えることができません。
しかも、これから計画されている負担増もすさまじいものです。
最たるものが、75歳以上の後期高齢者医療。加入者1600万人のうち865万人が受けている保険料の「特例軽減」を、廃止(2017年度から)し、2~10倍もの負担増を押し付けます。
年間5650円の保険料が5万6500円と10倍になる―など具体的ケース(表下)を示した小池氏。「まさに低年金者を狙い撃ちした大負担増だ」とただしました。塩崎恭久厚労相は「(保険料は)月額でみるとイメージが変わってくる」としかいえませんでした。
一般病床などの入院患者の食事代負担も、1食260円から460円に値上げ(18年度から)します。
すでに高齢者は値上げずみで、現役世代も値上げするのがねらいです。1カ月入院なら現在の2万3400円から4万1400円にはねあがります。
小池氏が「入院時の食事は治療の一環だ」と指摘すると、厚労相は「入院医療と在宅医療との公平性をはかるものだ」と言い訳。小池氏は「公平といって高いほうに合わせるだけの話だ。ご都合主義だ」と批判しました。
年金「もらいすぎ」?
実態は「削りすぎ」 新方式でさらに削減
高齢者の所得保障となる年金はどうか。政府は、物価下落時に年金を下げてこなかったので「もらいすぎ」だとして削減し、「マクロ経済スライド」という仕組みを入れたので「100年安心の年金」といってきました。
小池氏は、これまでは年金の改定率が物価上昇率を下回ることはなかったのに、2014年に物価が年金を上回って逆転(グラフ1)したとのべ、「年金をもらいすぎどころか削りすぎだ」と強調しました。
この逆転は、年金改定にあたって物価と賃金を比べ低いほうの伸び率を使う仕組みに変えたこと、物価下落時の年金改定見送り分(特例水準)の解消を名目に13年に1%減、14年に0・7%減と年金削減を行ったためです。
さらに年金を物価・賃金の伸びより低く抑える仕組み「マクロ経済スライド」が2015年度から発動されるため、物価と年金のかい離は2・2%まで広がります。厚労相も「(小池氏の)説明は正しい」と認めました。
基礎年金満額で月2000円上がるはずが600円、夫婦2人で月20万円の場合、月6200円上がるはずが1800円しか上がりません。
「年金を目減りさせて高齢者の生活水準を維持できるのか。年金切り下げをやってデフレ脱却ができるのか」と小池氏。安倍首相は「給付と負担のバランスをとる」と同じせりふを繰り返し、所得代替率(現役世代の平均所得に対する年金水準の比率)を「50%を確保する」などと釈明に追われました。
小池氏は、「50%」について、仮想のモデル世帯(夫は40年間サラリーマンで妻は専業主婦)であって、年金支給が始まればどんどん下がってしまうものだと批判しました。
民間消費の2割占める年金―削減は地域経済壊す
年金は地方で住民所得の大きな部分を占めており、民間消費の2割を超えているのが島根、鳥取、山口、愛媛、佐賀、奈良、岐阜の7県にのぼります。
小池氏は「年金を削ることは地方経済にとって大きな打撃となる」と指摘。「こんなことやっていたら景気が悪くなり、年金財政も悪くなる。暮らしも景気もどんどん縮小していく」とのべました。
マクロ経済スライドによる年金抑制は40年代まで続き、10%への消費税増税を強行すれば、かい離は19年度には4・1%にまでさらに広がります。(グラフ2)
「何が“100年安心”の年金か」と小池氏。厚労相は「年金額だけですべての生活を守るわけではない。経済政策とセットだ」とごまかしました。
小池氏は「年金財政の帳じりあわせしか考えていないのは政府の側だ。こんな年金削減をやれば経済は壊れる」と批判。首相は「年金の給付を増やして消費を増やしていく考え方はある」と認めざるをえませんでした。
社会保障の財源
不公平税制をただし経済改革で所得増やす
社会保障の財源に関して政府は「消費税しかない」といってきました。小池氏は、不公平税制をただし、国民の所得を増やす経済改革を行えば、消費税に頼らず財源を確保できることを示しました。所得税は、高額所得者ほど負担率が下がり、法人税でも大企業ほど負担率が下がってしまいます。大金持ちや大企業を優遇する、さまざまな減税措置があるからです。(グラフ3、4)
小池氏は、トヨタ自動車が受ける研究開発減税は、介護報酬削減による国庫負担削減額1130億円を超える1200億円にのぼることを明らかにしました。「負担と給付というが、負担していない人がいる。ここにしっかり負担を求めれば安定した社会保障をつくっていける」とただしました。
トヨタは純利益1兆円、内部留保は9兆円もあるにもかかわらず、今年の賃上げにかけるお金はボーナスも含めて全体で50億円、内部留保の2000分の1の額しか賃上げに回っていません。
「十分な体力がある大企業や富裕層に応分の負担を求めるとともに、賃上げとまともな雇用で国民の所得を増やす。それでこそ、財政再建と社会保障の充実が実現する」と小池氏。「“この道しかない”というせりふは、こういうときに使うべきだ」と力を込めました。