自民党の谷垣禎一幹事長は18日の記者会見で、自衛隊統幕監部が戦争法案の成立を前提に、自衛隊の部隊運用計画を記載した内部文書問題について「法律ができたときに『何の準備もしていませんでした』というわけにはいかない。(法律が)できたときにどう動くかは考えていかなくてはいけない」などと述べ、「問題がない」という態度を示しました。

 しかし、11日の日本共産党の小池晃議員の追及に対し、中谷元・防衛相自身が「法案の内容を先取りするようなことは控えなければならない」と答弁しています。谷垣氏の主張はこの防衛相答弁とも矛盾します。

 統幕文書の内容は、法案ができたときの単なる「準備」などというものではありません。実行計画そのものです。

 内部文書では、南スーダンへのPKO「第9次隊準備訓練」を9月から実施することを予定。8月中には「準備構想」をまとめ、年末には中部方面隊による「9次隊」が出国、2月後半には「新法制に基づく運用」を開始することが明記されています。さらに「駆けつけ警護」「宿営地の共同防衛」任務での武器使用の拡大等までもが、詳細に検討されているのです。

 同時に重大なことは、日米新ガイドラインで合意されたものの、法案には存在しない「同盟調整メカニズム」が8月から運用開始され、平時から「日米統合司令部」が動きだす仕組みとされています。さらに「軍軍間の調整所」設置という、法案にはもちろん、新ガイドラインにも書かれていない組織の配置まで記されています。事実上、自衛隊が米軍の一部となって日常から共同運用されるシステムが国会にも国民にも示されないまま動きだそうとしています。

 日米同盟強化を最優先に、国会を無視して独裁政治を進める安倍内閣の危険な体質が露骨に表れています。

 しかも、問題の文書に基づいて自衛隊幹部100人を集めてビデオ会議が開かれた5月26日は、衆院で法案が審議入りした日です。法案の審議入りの前に実行計画が作成されていたことを示すものです。こんなことまで「法律ができたときの準備」などとして許されるなら、手続きの意味はまったくなくなります。

 (中祖寅一)