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参院予算委
24日の参院予算委員会で日本共産党の山下芳生書記局長は、安倍内閣が閣議決定した戦後70年談話(8月14日)をめぐって、安倍晋三首相自身の歴史認識を厳しく追及しました。安倍首相は「歴代内閣の立場は揺るがない」といいながら、「わが国」が「国策を誤り」「植民地支配と侵略」を行ったという村山富市首相談話(1995年)の核心をなす文言はもちろん自らの認識をかたくなに口にしようとしませんでした。植民地支配 歴代内閣はきちんと認識
山下 日本の植民地支配認めないのか
首相 21世紀懇談会報告書に記載
山下氏は、安倍談話の問題点として「『侵略』と『植民地支配』を行ったのは誰なのか、主語がない」と指摘。「『植民地支配』というなら、どの国が、どの国を支配したのかが肝心要だ」として、次のようにただしました。山下 首相は、日本が植民地支配を行ったと認識しているのか。
安倍首相 (首相の諮問機関である)21世紀構想懇談会の報告書では、日本がかつて台湾や韓国を植民地化したこと、戦争への道をすすむなか1930年代後半以降、植民地支配が過酷化していったことが記載されている。
安倍首相は、自身の認識をいくらただされても、自らの言葉で「植民地支配」について語ることを拒絶しました。山下氏は、村山談話以降、歴代の自民党首相が日本の「植民地支配」に言及していることを指摘(別項)。
「首相自身に(日本が『植民地支配』をしたという)認識はないのか」と重ねてただしました。
しかし、安倍首相は「歴代内閣の立場は揺るぎないものと明確にしている」などと繰り返すだけ。野党議員からは「逃げるな」「首相の認識はどうなんだ」などの声があがり、審議がたびたび中断しました。
山下氏は「『引き継ぐ』といいながら、日本が朝鮮半島を植民地支配したという核心部分については一切語らない。一番大事な点は引き継いでいないことがはっきりした」と批判しました。
日露戦争は朝鮮半島植民地化のポイント
山下 朝鮮半島の人々に何をもたらしたか
首相 史実にある通り。一つ一つの議論さしひかえる
さらに、山下氏は、朝鮮半島の植民地化の経緯について安倍首相の認識を追及。朝鮮半島の植民地化を進めるうえで日露戦争が重要なポイントであったことを強調しました。日露戦争が開始された1904年、日本は韓国・朝鮮の首都を軍事占領し、日露戦争への協力を約束させます。翌05年には、日露戦争の「勝利」をテコに「第二次日韓協約(韓国保護条約)」を押し付けて外交権を完全に取り上げました。10年には、韓国・朝鮮人民の抵抗を抑圧し、「韓国併合条約」によって植民地化を完成させます。
山下氏は、日本が朝鮮の王妃・閔妃(みんぴ)を殺害(1895年)したり、韓国統監・伊藤博文が憲兵を引き連れて宮廷に押し入り、強引に「保護条約」を調印させた傍若無人なやり方を紹介しました。
山下 日露戦争が朝鮮半島の人々に何をもたらしたのか。
首相 史実にあるとおり。一つ一つの歴史的な事実について議論することは差し控える。
首相は、自らの言葉で「植民地支配」の経緯も、その中身も語ろうとしません。山下氏は「植民地支配によって、国を奪い、言語を奪い、名前すら奪ったことを日本国民は忘れてはならない。それを両国の共通の歴史認識とすることが、未来にとって重要だ」と強調。「『歴代内閣の立場は揺るぎない』としながら、『植民地支配』を語らない。これは欺瞞(ぎまん)だ」と批判しました。
中国・アジア太平洋地域へ侵略戦争拡大
山下 中国等への戦争は「侵略」か
首相 歴史家の議論にゆだねる
日本は朝鮮半島を植民地支配したことを足場に、中国、アジア太平洋地域に侵略を拡大していきました。山下 拡大した戦争は「侵略」だったのか。
首相 どのような行為が侵略にあたるか否かについては歴史家の議論にゆだねるべきだ。
小渕首相と江沢民中国国家主席(いずれも当時)が発表した「日中共同宣言」(1998年)でも、「双方は、過去を直視し歴史を正しく認識することが、日中関係を発展させる重要な基礎であると考える」と述べたうえで、日本側は村山談話を「遵守」するとし、「中国への侵略によって多大な災難と損害を与えた責任を痛感し、これに対し深い反省」を表明しています。
ところが首相は、この認識も認めようとせず、「歴代内閣の立場は今後も揺るぎない」と口ではいいながら、具体的な戦争についての認識を問われると「歴史家の議論」で逃げる欺瞞的な態度が浮き彫りになりました。山下氏は「『安倍談話』は、『村山談話』以降の歴代内閣が表明した立場を事実上投げ捨てるものに等しい」と糾弾しました。
侵略戦争を行った日本は、「ポツダム宣言」を受け入れ、終戦を迎えます。その「ポツダム宣言」に何とあるか。日本の戦争を「世界征服」のための戦争、すなわち侵略戦争だったと明確に述べています。
山下 この規定を認めないのか。
首相 日本はポツダム宣言を受け入れて、敗戦した。
答弁をはぐらかし、最後まで「侵略」を認めない首相。山下氏は「日本はアジアでも世界でも孤児になる。70年前の教訓、痛苦の反省を踏みにじる戦争法案の撤回を強く求める」と厳しく指摘しました。
■歴代内閣の表明
村山富市首相「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫(わ)びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧(ささ)げます」(1995年8月15日、「戦後50年談話」)
橋本龍太郎首相
「韓国併合につきましては、昨年11月、村山前総理が金泳三韓国大統領にあてた書簡におきまして、韓国併合条約における植民地支配のもとにおいて朝鮮半島地域の方々に耐えがたい悲しみと苦しみを与えたことにつきまして、深い反省と心からのお詫びの気持ちを抱いていることを表明されたと記憶いたしております。私としても同様であります」(96年2月16日、参院予算委員会)
小渕恵三首相
「(小渕首相は)わが国が過去の一時期、韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受け止め、これに対し、痛切な反省と心からのお詫びを述べた」(98年10月8日、「日韓共同宣言」)
小渕首相
「双方は、過去を直視し歴史を正しく認識することが、日中関係を発展させる重要な基礎であると考える。日本側は、1995年8月15日の内閣総理大臣談話を遵守し、過去の一時期の中国への侵略によって中国国民に多大な災難と損害を与えた責任を痛感し、これに対し深い反省を表明した」(98年11月26日、「日中共同宣言」)