主張
アベノミクス予算
暮らし・経済も財政も破壊する
2016年度予算の各省庁の概算要求が出そろい、年末の政府案決定に向け、予算編成作業が本格化します。安倍晋三政権が発足して4回目の予算になりますが、消費税増税後くりかえされる経済の「マイナス」成長や財政危機の深刻化など、安倍政権の経済政策「アベノミクス」が国民の暮らしも経済も、財政も破壊することがいよいよ明らかになっています。時の政権の政治の基本方向を浮き彫りにする予算編成に、国民の監視と批判を強めることが不可欠です。
100兆円超す予算規模
8月末までに出そろった各省庁の概算要求は、総額で102兆4000億円を超え、過去最大です。「アベノミクス」で積極的な財政支出を掲げる安倍政権は、今回も概算要求の上限を示しませんでした。財務省の査定が行われても100兆円を突破するとみられており、史上初めての100兆円予算です。財源のメドは立っておらず、増税と借金のツケ回しによる国民の負担増は必至です。
概算要求額がもっとも大きいのは厚生労働省で30兆6675億円ですが、安倍政権は年金・医療など社会保障予算について高齢化などによる自然増は概算要求段階でも6700億円の伸びに抑える方針を示しました。財務省は査定でさらに切り込むとしており、医療や介護などでの国民の負担増や給付減が懸念されます。
概算要求で伸びが目立つのは軍事費と政府開発援助(ODA)の予算です。軍事費は5兆911億円と過去最大です。航空機や艦船など大型の兵器を後払いでまとめ買いする「後年度負担」が増えており、ローンを含めた実際の予算額はさらに膨れ上がります。戦争法案を先取りして軍備を増強し、アメリカとともに「海外で戦争する国」をめざす、安倍政権の狙いを浮き彫りにしています。
外務省が予算に盛り込んだODAも、4705億円と11%も増えました。安倍政権はことし2月「開発協力大綱」を決め、「国益に資する開発協力」を戦略的に実施することを決めており、予算増加はその方向を反映したものです。
安倍政権は概算要求にあたって、社会保障費など政策経費は抑制する一方、「アベノミクス」で掲げる成長戦略のために「新しい日本のための優先課題推進枠」を設け、3・9兆円程度の要求を別枠で受けつけました。一般枠では抑制しても特別枠では増額を認めるもので、まさに「アベノミクス」のためのばらまきそのものです。
各省庁の概算要求には、原発の再稼働をすすめるために地域への交付金を手厚く盛り込むなど、問題点が山積しています。国民の側からの点検が求められます。
大企業減税の中止不可欠
日本の財政は長年にわたって借金に依存してきたため、国債や借入金の残高が1000兆円を突破する深刻な危機状態です。16年度の概算要求でも国が借金の利払いにあてる国債費が26兆円にものぼります。財政を立て直す見通しもないまま、財政膨張を続ける安倍政権は危険です。
財政危機にもかかわらず、経済産業省は税制改正要望で大企業のための法人税の「税率引き下げ幅のさらなる上乗せ」まで持ち出しています。大企業を肥え太らすだけの「アベノミクス」の有害さは、いよいよ明らかです。