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(本文)

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日経新聞に日銀が国債を直接引き受けるヘリコプターマネーを批判する
以下の記事が掲載されていた。

・日銀の追加緩和どうみる(下)国債直接引き受けは無謀
ヘリマネ、現政策とは別物 齊藤誠 一橋大学教授  
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO05771030W6A800C1KE8000/


この記事に対してアルルの男ヒロシこと国際政治研究家の中田安彦氏が
私に反論してほしい、との要望があったので書くことにする。


アルルの男・ヒロシ @bilderberg54 8月8日

 
天野さん、ぜひこの日経の記事に効果的に反論してください。




まず、上記の斎藤氏の意見としてヘリマネに反論する論点を
三つ挙げている。


○異次元金融緩和は新たな資金を創造せず
○ヘリマネは民間貯蓄と隔絶した資金創出
○戦中のヘリマネは猛烈なインフレ税招く


最初の異次元金融緩和は新たな資金を創造しない、という見解は
日銀が民間銀行から国債を購入した段階では、日銀の帳簿ではなく
民間銀行を含む市場の帳簿から見れば正しい。

もともと、民間銀行が保有していた国債を購入する原資は、
民間にあったものだからだ。

日銀のバランスシートは国債を購入した時に拡大している。

そのため、日銀の帳簿ではマネーは作られている。(マネタリーベースの増加)

しかし、この段階では、民間銀行のバランスシートは増加していない。

民間銀行の資産の側が国債から現金預金に代わっただけである。

しかし、民間銀行はその現金預金を国債などの購入に使うことによって
銀行業全体のバランスシートを拡大させることができる。

つまり、日銀が民間銀行から国債を購入した時には市場のマネー量は増加していないが、
民間銀行がその現金預金を使用した時に市場のマネー量は増加するのである。(マネーストックの増加)
(詳しく知りたい方は拙著、詐欺経済学原論のP161をご覧いただきたい)

そのため、異次元金融緩和は、新たなマネーを結果的に供給していると述べることができる。

以上のような流れから、従来の民間銀行から日銀が国債を購入する金融緩和を
斎藤氏は民間の貯蓄に裏付けされた健全な政策だ、と考えているようだ。


次に、ヘリマネは民間銀行と隔絶した資金創出、というポイントについて。

このポイントは正しい。
ヘリマネは民間銀行を通さずに直接、日銀が政府に新たに創造したマネーを渡すためだ。

そのことを踏まえて斎藤氏は以下のように述べる。

「民間貯蓄の裏付けなしに新たに創出された資金が市中に供給されると、
物価は確実に高騰する。その結果、途方もない物価高騰を引き起こす」


この言葉については私は以下のように考察する。

・民間貯蓄の裏付けなしに新たに創出された資金が市中に供給されたとしても
不動産や証券などの金融経済向けの供給ならば、物価を上昇させることはない。
現に日銀が民間貯蓄の裏付けなしに3兆円以上のETFを購入していても
物価は上昇していない。

・たとえ実体経済に資金が供給されたとしても、商品の供給量の伸び率以下の信用創造量
の伸び率にとどまるならば、物価は上昇しない。

・また実体経済に資金が供給され、新たな商品の供給量率以上の信用創造の伸び率が
なされた場合にも、物価上昇率2%を目標としているのだから、2%を達成すれば、
新たな信用創造を行わなければよい。

以上のような点から、ヘリコプターマネーを行うと氏の述べているようなハイパーインフレを起こす必然性は
全くない、ということである。

物価は新たに供給される商品量と、新たに実体経済向けに取引される信用創造量の増加率の
バランスでしかない。

新たに創られる実体経済の商品量の伸び率とのバランスをとることが重要であり、
民間銀行の貯蓄に裏付けされていなければならないという根拠はないのである。

また実体経済のマネーの流通速度はほぼ一定であるので、
そのことも踏まえて、バランスをとってヘリコプターマネーを行えば
よいのである。

戦中のハイパーインフレを例に、歯止めが効かなくなる、と斎藤氏は述べているが、
現在の日本は戦中ではないし、財政問題も日銀が購入している時点で
大部分はすでに解決されている。
つまり日銀の購入した国債は事実上、政府の資産であり、その利払い金は
政府の国庫に戻ってくるためである。


財政問題に関しては以下の動画を参考。

https://youtu.be/5-FD_fpVjl0



ヘリマネ政策こそ、現在の日銀と政府が大規模に行っている金融政策、財政政策が失敗している
実体経済向け信用創造を純増させることができる真に有効な政策である。

しかも財政赤字のように国民の負担になることはない。

現在の金融財政政策がなぜ、物価上昇2%と本格的な景気回復に失敗しているのかについては
以下の動画を見ていただきたい。