こちらのトラブルにより、今週もメルマガを発行することで、月2回発行のペースをキープしたいと思います。ご迷惑おかけしました。
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1.最近のお仕事紹介
2.連載「理想のアニメ原画集を求めて」
3.お蔵出し原稿
4.連載一覧
最近のお仕事紹介
1.朝日カルチャーセンター新宿教室「アニメを読む」(東京)
9月15日 『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』
【受講申込】
2.朝日カルチャーセンター新宿教室「アニメレビューを書こう」(東京)
9月1日に実施します。『映画 聲の形』を題材にレビューを書いていただき、僕が添削をしていく形の講座です。申込み後、8月22日までに所定のメアドに原稿を提出してください。アニメをもっと深く楽しみたい方、文章を書くことに自覚的でありたい方、是非。【受講申込】
3.9月のSBS学苑(静岡)
9月30日は『コードギアス 反逆のルルーシュ』を取り上げます。総集編映画も公開された本作をTVシリーズをベースに読み解きます。【受講申込】
連載「理想のアニメ原画集を求めて」
文・水池屋(コーディネート:三浦大輔)
第71回『「歩き」について考える様々なこと』
今回の本は、前回の『井上俊之「さよならの朝に約束の花をかざろう」原画集』に引き続き、アニメーターの井上俊之さんの本です。
書名からは少し内容が分かりづらいですが、内容の9割は井上さんによる歩きや走りの原画を収めた本で、原画集と言って差し支えない内容だと思います。
『井上俊之「さよならの朝に約束の花をかざろう」原画集』にも「歩き、走り編」がありましたが、今回の本はより純粋に歩きと走りを抽出して、動きとして語る内容の本となっています。
基本的には、老若男女の歩きの原画をパラパラとめくって見られるようになっている本で、『有頂天家族』や『さよ朝』の井上さんの原画集に近い形式になっています。その2つと比べるとページ数は一見薄い印象ですが、それでも100ページ近くもあり、単体の本としては十二分に内容の濃い原画集です。
元々ここに掲載されている動きは、『さよ朝』の制作時に3DCGで表現されるモブの動きや、若手アニメーター達のために井上さんが参考の1つとして描いたもので、教科書的な役割をもって描かれたようです。
日本の「アニメの教科書」という分野は、アニメ文化が広まっている国にしては未発達な分野です。日本のアニメ表現の一つの部分として、アニメーターの作画技術が取りざたされる機会も少なく、その隙間を埋めるような役割を原画集が担っているのが現状だと思います。なので、「歩き、走り」というアニメの基本中の基本の動きに対して、教科書と呼べる本が現れたことは、アニメの文化の中で大きな動きのように感じます。
掲載されている原画は、1つの動きに対して、1枚につき正面、横、斜め前の3つのアングルで描かれた同じ動きが掲載されています。同じ動きが異なったアングルで当たり前のように原画として描かれていますが、同じ動きをどんなアングルからも正確に描くことができるということが、井上さんの精度の高い技術力を感じさせるものとなっています。
動きのバリエーションも多く、男女や体格年齢別に9パターンもの動きが収められています。掲載されている動きを動画としてみたい方は、『さよ朝原画集』と同じく動画のQRコードとリンクが書かれているので、そこから実際に動いているものと原画を見比べることができます。
「走り」に関しては子供の動きが1つなので、もっと見てみたいところです。この点は、『さよ朝』の原画集も並べて見て補完したいところです。
9つの動きを3つのアングルから、単純に考えて27パターンの動きを見ることができる。さらに『さよ朝』の原画集に掲載されているものを含めれば、その数は相当なものです。それでも、これはアニメにおける歩きや走りのごくごく動きの一部分でしかないわけですから、動きという漠然とした表現がいかに多種多様に発展しているのかを考えさせられます。
巻末には、井上さんが歩きに対して考えた考察が10項目に分かれて解説されており、読み応えのある内容です。
今回は「歩き」についてという事で、「走り」に対しての言及はありませんでしたが、また何かの機会に井上さんの「走り」についての考察も読んでみたくなりました。
この記事が掲載される時とは少し時期がずれてしまいますが、井上さんがラジオに出演して作画に関して語られるようです。原画集の発売が重なり、イベントの出演やメディアへの露出など、知る人ぞ知るアニメーターだった井上さんの知名度も上がっているようです。本業のアニメーターとしてのお仕事はもちろんとして、今後もこのような本を出し続けてくれることも期待してしまいます。
(『「歩き」について考える様々なこと』/株式会社ピーエーワークス/1,200円)
お蔵出し原稿
このコーナーではおなじみ「アニメ喜怒哀楽」から、「着る喜び」を書いたものを。
「着る喜び」の歴史
衣装替えは変身と同じ
前回の「喜ぶ」が「食べる喜び」だったので、今回は「着る喜び」の話を。
そもそも「着る喜び」と感じるのはどんな時だろうか。やはりそれはある服から別の服へと着替える瞬間じゃあないだろうか。いくら素敵な服でも、着ずっぱりでは「着る喜び」を実感しにくい。つまり「着る喜び」とは「いろんな服に着替える喜び」なのだ。