Mediumの革命的な使い方。
尾原和啓さん「モチベーション革命」第2章、全文公開!
Mediumが本来目指している新しい使い方は、これなんじゃないでしょうか?
突然ですが、著者のITジャーナリストというか、コネクターというか、起業家というか…! 真に新しい職業の人って、職業名つけられないと思いますが、そんな2017年を存分に生きている人、尾原和啓さんから、いま、Kindle1位ほか、大ブームになっている本の原文をお預かりして、こちらで公開させていただくことにしました。
まず、全文公開自体が、大変新しい行為です。
でも、「なんかこの方がよさそう」なのは、心ある人たちなら、もうわかってそう。
ということで、時代を前に進める本である、この尾原和啓さんの『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』は全文公開されることになりました。
しかも、公開の手順がまた手が込んでいる。ネットの何処かに「ぺっ」とコピペされるだけでなく、色んな人のブログとかで、持ち回りで公開されてゆく、という方法がとられています。
序文は担当編集者、箕輪厚介さんのnoteで。
https://note.mu/met2017/n/n717435470eab
つづく一章は、なんと、かの西野亮廣さんのブログで公開されまして、
https://lineblog.me/nishino/archives/9302290.html
次のお鉢が私に回ってきました。
なぜかというと、もちろんお知り合いだったのもありますが、
予防医学者の石川善樹さんと私が出させてもらったばっかりの、
『どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた』
http://amzn.to/2jlx5JR
という本を、尾原さんが読んでくださって、相通じる部分を感じ取っていただいたからです。
対談もさせていただきました。
尾原さんとはお会いしたらだいたいこんな話ばっかりしている気がしますがwこの文字起こしも、近日公開しますね!
ただ、「西野バズーカ」のあとに、ふつうの会社員が何やっても、さほど面白くないじゃないですか。
なので、Medium、使ってみることにしました。「新しい!!」と私が感じて開設したこのMediumには、「ハイライト」というシステムがあります。
そう、普通のブログは、ブログの記事全体にコメントすることはできても、結構手間を書けないと、ブログの一部にコメントするのとか、難しい。でも、Mediumは、ブログの一部を「ここ大切!」とか、逆に「全体はいいけど個々だけは直したほうがいい」とか、きめ細かい注釈を、みんなでつけることが、できるわけですね。
Mediumこそ!じつは全文公開に超・向いてるんじゃないでしょうか?
読書って、個人的にじっくり読むのもいいけど、それだけじゃなくて、誰かと感想を共有しながらだと、より多面的に読めたりする。
と、考えてこの機会に、尾原さんご本人の許可を頂いて、Mediumで、公開させていただくことにしました。
ただ、電子テキストじゃなくて、本にしたほうが、「モノ」として手元に存在感を出しておくことも、物理的に流通させることも、あと、数百ページ分のテキストは本で教育されて育った私たちには読みやすい、ってことを考えると、1620円出してお買上げになるのも、ぜんぜん悪くないと思います。
尾原和啓 の モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書 (NewsPicks Book) を Amazon でチェック! http://amzn.to/2kVcOvm
残念ながらこれ2017年10月17日現在だと、在庫切れちゃってますからね。そんな弱点も、紙の本にはあるわけで。
今回は、ハイライトの面白さが発生するといいなぁ、と思って、ここに公開させていただきます。では、ぜひ「ハイライトを入れる」つもりになって、尾原和啓さん の『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』第2章、お読み下さい!! パチパチパチ。
あ、ちなみに本の内容についての私の感想も、ハイライトで入れてくつもりですよー。
あと、許されるなら、自分の本も全文公開、してみたい気、満々なんですよね…!!
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第二章 偏愛こそが人間の価値になる ― ― ― ― ― -
AIによって世の中はいかに変わるか。作業的に、効率的に、合理的に仕事を進めるうえでは、人間はもうコンピューターには勝てないでしょう。しかし、世界を変えるような新しいサービスや画期的なイノベーションは、一人の人間の偏愛によってしか生まれません。
この偏愛こそが人間の価値になる時代においては、好きなことをやり続けることこそが最大の競争力となるのです。
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■ビジネスはプロデューサーの時代へ
みなさんもお気づきのように、仕事を頑張ったぶんだけ結果が出て、社会全体が成長していく時代はとうに終わりました。
理由は2つあります。ひとつは、日本の人口が減少傾向にあり、かつてのような右肩上がりの経済成長を望めないこと。もうひとつは、社会のIT革命とグローバル化によって、あらゆる変化のスピードが速くなったこと。
たとえ今、好調な業績で安定しているように見える会社でも、いつ社会のルールが変わり、倒産するとも限らない。私達は、それほど先が見えず、変化に富んだ時代に突入しているのです。
「時代が変わる」ということは、働き方が変わる、ということでもあります。変化を捉えきれずに、自分の価値を上げることはできません。時代と、それに伴う働き方の変化を、食品業界を例に解説していきましょう。
戦後の食料すら足りない時代では、いかに安く広く食べ物を配れるかが重視されました。よって仕事も、「全国民に健康的な食品を」と目標を決め、あとは決められた手順に沿って、ひたすら同じ商品を生産していればよかったのです。
しかし、どの家庭にも食品が行きわたるようになると、次は「品質」が求められるようになりました。「もっと美味しいものを安く食べたい」という消費者の欲求が生まれ、これらを解決することに重点が置かれるようになります。
よって仕事では、消費者の欲求という「課題」を解決する能力が求められるようになります。「美味しいものを安く」という「課題」を解決するために、ファミリーレストランや高品質なレトルト食品などが続々と生まれていきました。
では、今はどんな時代なのでしょうか? 美味しくて安いものが世の中に溢れている昨今では、消費者の欲求はうんと多様化しています。「お肉を好きなだけ食べたい、でも痩せたい」とか「SNSにアップして、いいね! されたい」などと、非常に個人的で細やかな欲求です。
よって先に消費者の潜在的な欲求を見つける必要が出てきました。「太らない肉メニュー」を開発したり、インスタ用のかわいらしくデコレーションされたケーキを提供したりと、食にまつわる「体験」そのものをいち早く仕掛けていかなければ、めまぐるしく変化していく消費者の欲求に応えられなくなってしまったのです。
すでに世の中には必要最低限のものは溢れています。今は「どう遊ぶか」までを、提案してあげなければなりません。相手の潜在的な欲求を見つけ出して、体験をプロデュースしていくのが、これからの仕事なのです。
アイデアの次は「インサイト」
「ビジネスはアイデアが大事だ」とうたわれるようになって久しいですが、先ほどお話ししたように、今はユーザーの潜在的な欲求や、購買意欲のツボである「インサイト(新しい視点)」をすくい上げる時代です。
ITビジネスの発信地であるシリコンバレーにあるベンチャー企業でも、すでに「インサイト」が重要視されています。かつて、シリコンバレーにおけるベンチャー企業の中心地は、関東でいうつくばのような、中心地から外れた地域でした。ところが、近年は都市部へと移行したのです。
かつてのITベンチャーは、世の中に足りないシステムを作ることが目的とされたので、中心地から外れた静かな場所で、熱心なエンジニアたちが黙々と開発し続けるのが主流でした。
しかし、今は、世の中に足りていないものを見つけるのが困難なほど、すでにあらゆる課題解決がなされており、より新しい切り口や、物の見方を変えることが必要とされています。よってITビジネスにおいてもLINEのスタンプや Instagramのように、「みんな、こういうのってかっこいいよね、好きだよね!」という「インサイト」に基づいたユーザー目線のサービスを発信することが大事になってきたのです。より詳細にユーザー目線に立つためには、若者が集まる都市部でのリサーチが欠かせません。よって、ベンチャー企業は都市部に集中するようになったのです。
10代を中心に大人気のSNS「スナップチャット」を立ち上げた社長は、開発当時はまだ22歳でした。このことからも、いかにユーザーの目線で、「これがあると今までよりちょっと便利になる」とか、「人よりもかっこつけられる」というような、潜在的な欲求を探し当て、体験をプロデュースできるかに、ビジネスの焦点が当てられているのかが分かります。
■残業するほど暇ではない
シリコンバレーでは、残業ゼロ、週休3日の会社も珍しくありません。また、彼らは仕事が終わったら一切電話に出ないことも多々あります。これは、サービス残業に慣れきっている日本人の私たちからすれば「労働時間が短くて、仕事が成立するのか」と疑問に思うかもしれません。
しかし、彼らは仕事を休んでいる間、ただ家でのんびりとしているわけではないのです。社員にしっかり休暇をとらせるという会社の目的には、「休んでいる間に、街でユーザーをしっかり観察してきてね」という意図が込められているのです。
つまり、休んでいる間に「インサイト」を発見してくるという〝仕事〟が課せられているということでもあるのです。理由はもちろん、ビジネスにおける優先事項が「決められたことをひたすらやる」ことから、「消費者の潜在的な欲求を発見し、提案する」へ変化したからです。
インサイトの吸収量を増やすうえで、一番手っ取り早いのが外部からの刺激を増やすことです。例えばみんなが働いている月曜日に仕事を休んで街を歩いていると、
スーパーで主婦が何を買っているのか、街で子どもがどんな風に遊んでいるかが見えてくるでしょう。毎日、目の前の仕事に追われているサラリーマンには見ること
のできない「リアル」です。
最近では日本でも、インサイトを重要視して、社員に積極的に休みをとらせる会社
が 増 え てきています。例えば、有機野菜など安全食材の宅配サービスで知られる
「オイシックス」では、「50 パーセント社員」制度を実施しています。1年のうち50パーセントはオイシックスの社員として働き、 50パーセントは世界中を旅したり、大学での研究に打ち込んだりして、「インサイト」をたくさん拾ってこよう、ということです。
つまり、1年中会社勤めをするのではなく、まずは自分が生活者として生きること
で、世の中の潜在的なニーズを拾ってきなさいという意図が込められているのです。
時間をかけて課題を解決することよりも、課題自体を発見したり、新しく課題を定
義したりすることに投資するべき時代なのです。
Yahoo!で も、「 週 休 3 日 」 や「 新 幹 線 通 勤 」 を 実 施 し て、 ユ ー ザ ー が 潜 在 的 に 求めているものをしっかり観察する時間や空間をわざわざ設けています。こういった動きは、今後あらゆる業界で増えていくでしょう。
もはや、終わらない仕事に忙殺され、オフィスのデスクで残業していては、新しい
価値は生み出せなくなってきているのです。
■「ライフワークバランス」の時代
「せっかく週休3日なのに、結局休んでいても仕事のことばかり考えなければいけないのか」と思う人もいるでしょう。確かに、インサイトが重要視され、休日でもユーザー目線で観察する必要が出てくると、もはや仕事と休みの境目があやふやになってしまいます。
仕事と休みの境目がないと苦しいと感じる人は、そもそも、自分の幸せと、仕事が合っていないのかもしれません。なぜなら、仕事が楽しくて公私混同になっている人は、〝仕事をしている〟という意識ではなく、〝好きなことをしている〟という感覚で日々を過ごしているからです。
「仕事は辛いものだから、少しでも多く休んで私生活を充実させたい」と感じている人は、そもそも〝ライフ(=余暇)〟と〝ワーク(=仕事)〟が切り離されているのです。そして、今の日本のビジネスパーソンには、こういった人が非常に多いのが現状です。
しかし、「インサイト」が重要視され、仕事と遊びの境目があやふやとなった今では、なるべく仕事は「公私混同」で取り組んだほうが効果的です。
僕の周りを見ていても、仕事ができる人ほど、どんどん公私混同になっていく傾向があります。例えば、ぐっと目を引くキャッチコピーを生み出す人は、普段電車に乗っているときも中吊り広告や乗客の反応、窓の外を流れる巨大広告に至るまで、自然と観察してしまっているものです。
その顔はきっと、ちょっとにやけているでしょう。なぜなら、そうやって観察しているひとときが、彼には楽しくて仕方がないからです。彼にとって、人目を引くキャッチコピーを考えることは、もはやライフワークなのです。
ライフワークとは、たとえお金にはならなくてもついつい取り組んでしまうような、好きで好きでたまらない〝生きがい〟です。もしあなたが今、とても疲れているのなら「そんなものはない」とすぐにこの本を閉じたくなるかもしれません。しかし、どんな人にも、「このために生きているな」と思えるほど、好きなものが存在するのです。そしてそれを実感できるときが、あなたが元気になるときです。
僕の友人は、ライフとワークの境目がなくなりつつあるこの状況を指して、「これまでは『ワークライフバランス』の時代だった。これからは、『ライフワークバランス』の時代だ」と言いました。
自分が好きで仕方ないライフワークなら、放っておいても24時間、1年中考えていられます。つまり、ワークのなかのライフワークにおける部分をいかに広げていくかが大事、ということです。これは、ライフとワークが別々に独立していた時代が終わりつつあるということを表した言葉でもあると言えるでしょう。
念のために付け加えると、これは決して「自分の好きなことさえ磨き続ければ、どこでも生きていける」ということではありません。例えば僕は、転職した先でいつも真っ先に地味な仕事から手をつけます。他の人の手が回らなくなって停止状態のプロジェクトを整理したり、誰もが嫌がる契約解除の手続きをしたりします。
これらは、僕にとっても得意な作業ではありませんが、誰もがやりたがらない作業を率先してやることで、「いざとなったら、地味な作業もきちんとやってくれる」と周囲に信頼されるようになります。
仕事と遊びの境目がなくなる時代だからといって、好き放題やればいいというわけではありません。周囲からの信頼感を得ているからこそ、自分がより得意なことに専念する状況を作るスタートラインに立つ、ということは忘れないでいてくれると嬉しいです。いつの時代も、人は信頼がすべてです。少し話は逸れましたが、これだけはずっと変わらない社会のルールなのです。
■人間がAIを使うか、AIに人間が使われるか、それすらもまだ分からない
仕事における「インサイト」の重要性が増すことで、働き方は公私混同になっていきます。この現象をさらに後押ししていくのが、昨今話題になっているAIによる既存ビジネスへの影響です。テレビのニュースでも頻繁に取り上げられているとおり、世の中のあらゆる単純作業は、今後ロボットがやってくれるようになります。
例えば、アメリカでは試験的にAmazon の実店舗が開設され、レジ不要で買い物ができることで話題になりました。「Amazon Go」というアプリで入店時にチェックインをして、商品を持ったまま退店すれば、自動的にAmazon のアカウントに課金されるのです。これは、AI技術によってお客さんの顔を画像で認識したり、購入した商品を自動的に追跡したりする仕組みによって成り立っています。
これにより、レジスタッフが担っていた業務はすべてAIが一括管理するようになり、お店にレジスタッフはいらなくなります。これは単なる一例ですが、この現象はあと数年で世界中に一気に広がっていくでしょう。つまり、ワークだけの仕事は今後どんどんAIがやってくれるようになる、ということです。
ただ、こう言うと、ロボットは人の代わりに便利なことをやってくれる存在のようにイメージしてしまうかもしれません。AI技術は日々進化しているので、安易な認識をしてしまうと、未来の見通しに大きなズレが起きてしまいます。念のため、現時点で分かっているAIが示す近未来について、もう少し掘り下げておきましょう。
サンフランシスコ発のタクシーサービス「Uber」をご存知でしょうか? 「Uber」は、アプリによって車両を持つ一般ドライバーと乗客をマッチングするサービスで、すでに日本にも参入しています。この仕組みによって、タクシードライバーは、タクシー会社に入社しなくてもアプリと自家用車だけで、ドライバーとして仕事ができるようになりました。「Uber」の成長は驚異的で、すでにアメリカでは「Uber」のみで年収600万円を稼ぐドライバーがいたり、タクシー会社「イエローキャブ」が破産申請を提出するほどに追い込まれたりしています。
働く人間の立場から見れば、このサービスは「人が『Uber』を介していつでもどこでもドライバーになれる」という画期的なものに映るでしょう。しかし、見方を変えるとどうでしょう。「Uber」側からすれば、ゆくゆくは車の自動運転が可能になることを見通して、AIだけで乗客を運べるようにしようと考えるはずです。そのほうが、人に運転させるよりコストがかからずに済むからです。
よって、「今はまだすべてを自動運転にはできないから、当面は人に運転してもらおう」という意図ともとれなくはないのです。すでにアプリによって決済もナビゲーションも自動化できているから、運転だけ人に外注している、ということです。
もう一例挙げましょう。近年、アメリカではスマホを通して専門家と簡単に効率よくつながれるサービスが台頭してきています。
例えば、顔に原因不明のできものができたとします。皮膚病は、単なるできものでもガンになっている可能性だってあるし、不安になるものですよね。そこで念のため近所の病院に行くと何時間も待たされたうえに、「単なるできものなので軟膏を出しておきます」という簡単な診断で終わって、しかも数千円もかかってしまう。
そこで、スマホでできものの画像を撮影し、アプリを通して複数の医者にチェックしてもらえるサービスが登場しました。すぐに病院に行かなくても、医者がオンラインで「ちょっと触ってみてください、ジュクジュクしていますか?」なとど簡単な診察をしてくれるのです。それによって「大丈夫、ニキビなので来なくていいです」とか「ちょっと怪しいので、○○大学の先生をご紹介しますね」などと診断してくれます。
これは一見すると、AIにはできない「お医者さんの診察」という領域を、人間が行っているように見えるでしょう。しかし、AIは人間に診察を〝行わせる〟ことによって、膨大な数の診察データを吸収しているのです。つまり医者によって、人工知能を育てている状態ということなのです。
このデータがたまれば、数年後には「この状態なら病院に行かなくてもいいです」という診断くらいは、AIができるようになります。さらに時間が経てば、診断そのものをAIがするようになる。診察は医者の仕事でなくなるのです。そのぶん、医者はより緊急を要する治療や難病の研究に専念できるようになるのかもしれませんが。
つまり、AIが人間の一部の仕事を担っているのではなく、人間はAIに、部品の一部として認識されてしまっている、ということでもあるのです。
よく言われるような「ロボットが単純作業を人間の代わりにやってくれる」という認識とは反対に「単純作業なんて、高度な知能を持つロボットではなく、人間にやらせてしまおう」ということが起きるかもしれないということなのです。
少なくとも、今水面下で進んでいるAIの進化は、我々の想像するずっと先を行っています。よって、仕事そのものに起きてくる大変化は、もはやどう着地するか予測がつかないのです。それほど社会が動くスピードは加速しています。ひとつだけ確実なことは、いわゆるワークだけの「サラリーマン的な仕事」の価値はどんどん落ちていくだろう、ということです。
■仕事の永遠のルール「ありがとう」
今後「人工知能革命」が加速していくと、単純作業のような仕事はどんどんAIが
担っていくことになっていきます。
では、人が仕事をしていくうえで、どんなことが大切になっていくのか。どんな仕事なら、ロボットに代替されることなく、持続していけるのでしょうか。
シンプルな言い方をするならば、それは「他人から感謝されて、お金をもらえること」です。一見当たり前のようなことですが、これこそがどんな時代が来ても永遠に変わらない仕事のルールです。
このことをもう少し掘り下げて説明するために、僕が新卒で入社した外資系コンサルティング会社「マッキンゼー・アンド・カンパニー」で学んだことをお話ししましょう。
入社してすぐの僕は、自分が担当するお客様から、1時間につきウン万円という高額なコンサルタント料をいただいていました。つまり、僕は常にお客様に対し、料金に見合うだけの価値を提供すべく、対峙していたのです。さらに、僕の上司は1時間に僕の4倍もの額をいただいていました。僕ら社員は、常にお客様から「この人にはこれだけの額を支払う価値があるか」という視線を向けられている状況なのです。
だから、僕は必死に1時間ごとにかかる料金に見合う価値を相手に提供できているかどうかを考えながら、仕事をします。すると、この「1時間の価値」が、今度は上司とのチームワークでも試されるようになるのです。どういうことかというと、1時間につき僕の4倍もの価値がある上司と、僕が1時間ミーティングをしたら、その1時間に5倍ものコストがかかっていることになる。ということは、僕が上司とミーティングするのは、まず1人で5時間以上試行錯誤して、それでも解決策が生まれなかったときに行うべきものになる。
もし僕が4時間で解決策を考えられるなら、上司の1時間をもらうより自分でやるべきということなのです。でも、6時間以上かかっても解決しないものを1人で考えるなら、上司から「それは俺に相談すれば君の価値の5時間分で解決することだ。
それなのに1人で考えてしまうから、6時間ぶんもかかってしまった。君がお客様からいただいている1時間ぶんものお金を無駄にしているのだぞ」と注意されてしまうわけですね。
僕はマッキンゼー在職時代に、自分の価値を売り値と時間でストイックに計る経験をひたすらに積んでいきました。企業は、マッキンゼーに3ヶ月間のコンサルティング料として、ウン千万円もの大金を支払ってくださいます。これほどの大金を、なぜくださるのか? それは、お客様ご自身でやられたら2年も3年もかかってしまうようなプロジェクトを、マッキンゼーに頼めば3ヶ月で済ませることができる、だからウン千万円でも支払う、ということなのです。
そんな様子を見ながら、僕はあることを考えました。それは、人は自分にはできないこと、なし得ないことに対して、いくらでもお金を払うのだ、ということです。そして、自分にはできないことをしてくれる相手に対して、人は「ありがとう」と
いう言葉をかけるのだと。
「ありがとう」という言葉は、漢字で「有ることが難しい」と書きます。つまり、自分には有ることが難しいから、それをしてくれた相手に対して「有り難い」と思う。だから「ありがとう」と言うのですね。
これは、どんな時代の変化が起きても、永遠に変わらない法則です。たとえ「人工知能革命」が起きても、人は「有ることが難しい」ことにはお金を支払う。つまり、それは「仕事」として成立し続けるということです。
そんな仕事をするうえで最もハッピーなことは、「自分にとっては好きで楽にできることと、相手にはできないこととが噛み合うこと」です。「こんなに楽で楽しくできることで、相手にお金ももらって、感謝をされるなんて!」と思えることです。
仕事をしていて、これほど幸せな瞬間があるでしょうか?
ということは、これからの仕事で大事なのは、自分にとって得意なことで、いかに相手にとって「有ることが難しいこと」を探し当て続けるか、ということなのです。
あなたにとって好きで楽にできることはなんでしょうか?
僕がすごく好きな言葉で、任天堂の故・岩田聡元社長の「〝労力の割に周りが認めてくれること〟が、きっとあなたに向いていること。それが〝自分の強み〟を見つける分かりやすい方法だ」という名言があります。自分が楽にできてしまうことは、本人にとって当たり前すぎて価値を感じないために、なかなか気づけないものです。
しかし、どんな人にもひとつくらいは、そんな経験があるはず。パソコンの配線をしただけで「本当に助かった!」と感謝されたり、冷蔵庫にあるものでささっとご飯を用意しただけで、神様のような扱いをされたり……。自分にとって意外なところに、あなたの「長所」の芽が隠されているのです。
■非効率な「好き」こそが次の産業
とはいえ、医者の診察すらロボットが代替するかもしれない時代で、人工知能ではできず、自分にしかできない相手にとって「有ることが難しいこと」を見つけるにはどうしたらいいのでしょうか? 人工知能とは、人の頭脳を代替する技術です。
単純作業じゃなければ、代替されることはないと思うのは間違いであると、すでにお話ししましたね。
人工知能にも代替不可能なもの……それは「嗜好性」です。簡単に言えば、「私は誰になんと言われても、これが好きだ」という偏愛です。人が頭で考えて、答えを出せるようなものは、人工知能のほうがより優れた答えを早く出せるようになります。一方で、人の嗜好性は、非常に非効率なものなのです。
なぜ嗜好性が非効率なのか。それは、人の嗜好とは無駄なものによって塗り固められたものだからです。例えば、ファッションは人の嗜好性の最たるものであるがゆえに、無駄な要素の多いものですよね。効率だけを考えるなら、冬の寒い日を乗り切るためには、機能性抜群でシンプルなデザインのユニクロのヒートテックを着ればいい。
しかし、そこに人の嗜好が加わるから、誰とも被らないデザインや、ひねりの利いたデザインのものを探し求めて、ZOZOTOWN でひたすら選んだり、古着屋を何軒も巡ったりする。
そう考えると、日本にはそういった嗜好性、偏愛によって生み出されてきたコンテンツ、サービスがたくさんあります。非効率で無駄なものを、世界に発信してきた国なのです。任天堂やソニーのゲーム、スタジオジブリのアニメ映画、ドワンゴのニコニコ動画、カラオケなど、これらは1人の人間が自らの偏愛を追求して生まれたエンターテインメントです。
よって、これからは「他人から見れば非効率かもしれないけれど、私はどうしてもこれをやりたい」という、偏愛とも言える嗜好性を、個人がどれだけ大事に育て、それをビジネスに変えていけるかが資本になっていくのです。
日本の人工知能の権威、東大の松尾豊教授が、こんな話を聞いたそうです。「昔の資本は筋肉でした。肉体労働を集約できることが強かった。それが蒸気管の発明で追いやられて、今の資本は頭脳になった。そして頭脳は人工知能によって効率的な仕事に追いやられて、次の資本は非効率を産業としていく嗜好になっていくのです」。これを受けて教授は「自分が何を好むのかという情報はこれから価値になります」と語っています。
もちろん、誰もがゲームやアニメ会社などのエンターテインメント企業で働くのが正解ということではなく、どんな業種でも、この「偏愛」を突き詰めることが、生き残りをかけた分水嶺になる、ということです。
そして、「偏愛」を突き詰めることは、まさに「乾けない世代」の得意分野なのです。
■変化を生き抜く3つの選択肢
この変化に富んだ時代を生き抜くには、3つの生き方があります。
ひとつめは、変化していくことをチャンスと捉えて、ずっと最先端を走り続ける生き方。「ライフワークバランス」を極め、ただひたすらに好きなことをやっていく
道です。「遊びが仕事の時代」とよく言われますが、まさに自分が好きなことを見つけた人こそが、活躍する時代になっていきます。
2つめは、宮大工のように、伝統職のなかで、コツコツと働く生き方。中途半端に古いものはなくなりますが、唯一無二の価値があり、昔から残り続けてきたものはなくなりません。むしろ、変化の時代において、オリジナルなものの価値は増していきます。ちなみに宮大工さんのなかには、年収1000万円を超える人もいると言われています。変化はありませんが、こういった仕事は今後も確実に残っていくし、収入も安定します。
ここまで読んで、「そんなに極端な2パターンしかないの?」と思われた方のために、3つめの選択肢についてお話ししておきます。
3つめは、永遠のフリーターを楽しむ生き方です。僕が住んでいるインドネシアのバリ島では、この生き方をしている人がとても多いので、まずは彼らの様子からご紹介します。現物支給のベーシックインカム社会・バリ島
僕は現在、バリ島をベースにしつつ、東京やアメリカなど各国のビジネスパートナーとオンラインでつながりながら仕事をしています。
バリ島は温暖で人々の気質も温かく、非常に住みやすいところです。実はバリ島は経済成長の途上なので、住民の平均月収も1万5000円ほどです。さらにバリ島は1年中、そこかしこでお祭りをしています。そのため、収入の多くをお祭りの飲み代などに使ってしまうのです。
彼らは、自分の成長やスキルアップのために自己投資などしません。なぜなら、日々の恵みを神様にひたすら感謝して、ただただ「今を生きること、楽しむことがすべて」だからです。
どうして、それで生活していけるのでしょうか。バリ島は温暖な気候で水に恵まれ、米を三期作で育てたりします。さらにバナナやヤシ、マンゴーがそこかしこに生えていて、にわとりは放し飼いにしていれば自然と成長してくれる。
僕はこの景色を眺めていると、まるでバリ島は現物支給によるベーシックインカムがすでに整っている環境のように見えてきます。そういう社会では必ずしも人がスキルアップしたり、成長することを要求されたりしません。1年中、村の誰かが主人公になって、持ち回りでお祭りをしている姿は、そばで見ていても、人を幸せな気分にさせるものがあります。
■AIという石油はみんなに降り注ぐのか?
これを日本に置き換えてみましょう。AI、ロボットが働いて稼いでくれるようになれば、我々はバリ島の人達のように稼ぎが少なくとも豊かに暮らしていけるのでしょうか?
僕の答えは「まだ分からない」です。
AIやロボットは、放っておいても稼ぎを作ってくれるという点で石油にも似ています。でも、この石油によって富を築いているのは、鉱脈を掘り当てたほんの一部の人達です。
バリの太陽と雨は誰にでも別け隔てなく降り注ぐけれど、AIという石油はその鉱脈を掘り当てたAmazon やGoogle など、ほんの一部の人達だけしか豊かにしてくれないかもしれません。
一方、インターネットの歴史を考えると、Google は、「人の関心に基づくデータを検索ワードという形で入力することで、検索結果という恩恵を無料で与えてくれるサービス」という形のベーシックインカムともとれます。そのサービス・ベーシックインカムの対象は、検索から地図、メール、動画、スマホのOSとどんどん広がり続けていますから、Google の家に住んで車に乗ってデータを提供すれば衣食住がタダになる、なんて時代もくるかもしれません。
これがどちらになるのか? それは、あと10年経たなければ確定しないでしょう。
なので、3番めの「永遠のフリーター」を楽しむ生き方は、選択肢としてはあり得るし、そういう生き方をしている人も多いけれど、残念ながら今後は時代の流れ、さじ加減ひとつでどちらにでも転ぶ、かなりリスクのある選択肢ということになります。
つまり、極端な選択肢を除けば多くの人達にとって、これからは「変化をチャンスと捉え、最先端を走る生き方」にシフトしていかなければならない、ということでもあるのです。
■時代の混乱を呼び起こす、4つの革命
この章のまとめとして、僕たちが生きている時代の混乱について整理しましょう。
以前、メディアアーティストの落合陽一さんと話していて、「今の時代は4つの革命が起きている」という話になりました。
ひとつめは、「グローバル革命」です。今まで、日本人は国内だけで比較されていたのが、今はインドネシア人やナイジェリア人とも比較されるようになり、加速的に成長している国の若者達がライバルとして追いかけてくる状況に立たされている。
2つめの「インターネット革命」が、これをさらに加速させました。インターネットによって、何かコミュニケーションをしたり、発信するときにかかる時間と距離がゼロになってしまったのです。
分かりやすい例で言えば、アメリカではすでにコールセンターがなくなりつつあります。なぜなら、インターネットでつなげば、人件費の高いアメリカに会社を置かなくても、半額で、しかも熱心に仕事をしてくれるフィリピンの人達に任せることができるからです。このような状況が起きているのが、インターネット革命ですね。
次に到来するのが「人工知能革命」です。「アメリカの仕事をフィリピンが持っていった」とか、「今度はベトナムが台頭してきた」、なんて国同士で戦っているうちに、ロボットがそれらの仕事を横からさらっていく。これは、この章でもすでにお話ししていますね。
落合さんは、これらに加え、「実世界指向革命」が来ると言っています。どういうことでしょうか。
例えば、本はすでに電子書籍が登場したことで、どんどんデジタル化されていますよね。しかし、相変わらず「やはり紙の良さはあるから、本はなくならない」と言う人も多いのです。
では、彼らが求めている「紙の質感」すら、デジタルに置き換わってしまったらどうでしょう? すでにアメリカのE Ink 社によって、紙のリアルな質感や、インクの適度な濃さ、ページをめくる楽しさはデジタルで再現されています。ディスプレイ上のバックライトがなくても、自然光で読むことができるので目に優しい。さらに本棚に置くときの背表紙もデザインされるなど、物質的な価値を保っている。今後は、デジタルの特性を活かし、パチッと指を鳴らせば、本の表紙を変えることもできるようになるでしょう。これは、本棚の内容によって自分の内面を他人にアピールしたいという、本が好きな人ならではの欲求を満たしてくれる機能です。
例えば、「今日は彼女が来るから、洗練された写真集にしておこう」とか「おやじが家に帰ってきた。辞書にしよう」などと、部屋を訪れる相手によって、そっと本棚を整理するときの楽しさや照れのような微細な感情や欲求を、デジタルに落とし込んでいるわけですね。
このようなことが起きてくると、「それでも紙の良さがある」とあぐらをかいてしまっている出版界の人達はあっという間にデジタルに仕事を取られてしまうかもしれないのです。印刷工場や出版取次も、なくなってしまうかもしれない。
このような4つの大きな革命が、微妙な時差で少しずつ起きてくるので、未来がどうなるかは分かりません。未来が不確定だということだけが、確実な時代なのです。
先の見えない、この変化の時代において間違いなく言えること。それは、一見非効率に見える人間の「好き」を突き詰めて、その「好き」に共感する人が「ありがとう」とお金を払ってくれる〝偏愛・嗜好性の循環〟こそが、残っていくということです。
この4つの革命によって、距離・時間・バーチャルを超え、「好き」同士の結びつきはより強化されていくでしょう。
つまり、自分の「好き」がない人間は価値を生み出しにくくなります。個人として、いかに自分の「好き」を見つけ、人生の幸せへと結びつけていくか。その具体的な方法は第4章でお話しします。
― ― 第二章終わり ― ― 第三章は10/23週 別のブログにて公開が予定されています –
モチベーション革命の「はじめに」は編集者箕輪さんの配慮で、
箕輪さんの公式ページに常設公開しています。
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コメント
コメントを書くいつも、ありがとうございます。感謝しかないです。。
尾原さん始め、この試みがどういうムーブメントを起こしていくのか、物凄く楽しみです。
Medium…今までは見るだけって感じだったんですが、初めてコメント書いてみました。
(書けているのかなぁ…あれで合っているのかどうか…。。)
尾原さんや石川さんという、物凄い人の話に出逢えたのも吉田さん無くして自分にはないと言っていいと思っています。
ラジオが無ければ吉田さんと繋がれらなったですし、本にも出合えなかったです。
また、ニコ生でも何でも配信で色々と対談、いや雑談を聴きたいと思ってしまうのは自分だけなのか…。
分からないですけど…今後も応援し続けます。。
尾原さん始め、関係各所の皆さんのご協力の元、本文を一部公開して頂き、ありがとうございます。