楽屋での皆との会話が好きである。

楽屋という空間では、本番に向けての着替え、化粧、準備、というのが一番の目的であろうが、ふと緊張が抜けた時間の共演者との会話は、いつも以上に、その人の人となりが出るのでとても楽しい。
書いていて思い出したが、稽古場の休憩時間、喫煙するメンバーが喫煙所でする会話が羨ましいし、妬ましい。
なぜなら、休憩中の喫煙所では、稽古場での緊張した雰囲気がタバコの煙により弛緩しニコチンとタールが脳をリラックスさせ、時にプランナーと演者がフランクな会話をして盛り上がり、そこで新しいプランを思いつき、稽古場に持って帰ってきたりすることがあるからだ。
ズルい。特権だ。そんな事があるなら、僕もタバコを始めたいと思ってしまう。実際にタバコ吸わないのに喫煙所になるべくいようとしていた事もある。
タバコ休憩が有りなら、タバコは吸わないけどリラックスしたい人向けに、グラスビール休憩とかを許可して欲しいと考えていた時期もある。少しグビッとやった方が、開放的な会話が出来るに決まっている。

話が逸れてしまった。
楽屋での会話も似たところがあると思う。本番を乗り越えたという、図太い巨大な葉巻を皆で持ち寄り、仲間意識という煙を燻らせながらする会話は格別だ。

最近では、僕も楽屋内では最年長になることも多く、その楽屋の空気を作ったり、意見やルールをまとめることも増えてきた。
(その点、まわりに同年代と年長者が多かったミュージカル『ベートーヴェン』の大部屋は本当に居心地が良かった。)

そうなのだ。楽屋は楽しい場であるけれど、それ故に、ルールが存在する。カンパニーや主催団体、劇場によって大きく異なるが、スタッフさんと皆が気持ちよく過ごせるように、ある程度のルールは自然に必要とされるのだ。