「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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 今回は、2024年8月27日(火)配信のテキストをお届けします。

 次回は、2024年9月10日(火)20:00の配信です。

 お楽しみに!

2024/08/27配信のハイライト

  • 「ニコニコ会員再設定の謎」と「ユニクロ会長の炎上」
  • 「アメリカ大統領選の変化」と「政策ごとの投票」
  • 新刊紹介『子供の科学完全読本 1924-1945』
  • ボーイングの凋落と「手を抜けるようになったら、営利企業は必ず手を抜く」
  • 「宦官は長生き」と「血液脳関門を通過する」
  • 「生まれる前のヒヨコを選別」と「研究サイクルを自動化、AIサイエンティスト」

「ニコニコ会員再設定の謎」と「ユニクロ会長の炎上」

山路:ニコニコチャンネルがようやく復活して。

小飼:ようやく復活したみたいで。

山路:一応YouTubeも相変わらず同時に公開はしてるんですけど。まぁなんか懐かしいというか、コメントがちゃんと画面の上を流れるのは、とても良いですよね、これは(笑)。

小飼:ね。

山路:ただ、これニコニコチャンネル復活したとはいえ、まだ気になることがありまして、このニュース、けっこう気にならないですか、という。ロシア系のハッカーが交渉決裂と言って、これどう考えればいいんですか?

小飼:あんまりないんだけどもな。あんまり同じところを強請るよりも、見切りをつけて、とっとと次のところを行くというのが標準的な戦略なんですけどね。

山路:ここんところって前、弾さん、本当に内部犯行の目っていうのは完全に潰したのかっていうことを何回か言ってたじゃないですか。

小飼:そこは、だから一番あり得るのは、内部犯行者がまだいて、その人がまだ使える状態にあるというのが。

山路:これっていうのは、単純にバックドアというよりも、指示があったときに共謀して動いたら、バックドア的なものをその都度作れちゃうという。

小飼:そうそうそう。

山路:だからソフトウェアのほうをいくら精査しても、それは出てこないというようなことがあり得るという。

小飼:あり得る。

山路:いやー、なんか怖いですね。

小飼:まあ、ネズミってやつですね。

山路:しかし、そんな仕事を受け負うんだったら、相当もらってないと、割合わない感じですけどね。そこまでやるんだったら。

小飼:まあ、あるいは相当、KADOKAWAとかドワンゴに恨みがあるとか。

山路:あと、ハッカーの声明文とかでちょっと気になったのが結局、金をKADOKAWA側は払わなかったっていうことなんですかね。

小飼:いや、だからその辺もわかんない。払ったのか払ってないのか。

山路:KADOKAWAに800万ドル要求したが支払い応じなかったとコメントしたみたいなふうに書かれてるんですけど。

小飼:いや、払われたけど十分でなかったというケースもあるからね。はじめはもっと請求してたのに、ちょろっとしか寄越さなかったというのも、中にあるので。

山路:なんか、いつまた配信が止まってしまうのかわからないというドキドキ感はあって。

小飼:今日も配信しきるかなというスリルはありますね。

山路:まぁ本当に、でもとりあえずニコニコチャンネルまで含めて、これでほぼ全サービス復旧したのかな、ニコニコ関連は。まだいくつかあったかな。なんかニコニコチャンネルがだいたいいつも一番厄介だという話は聞いてたんですけど、まぁ本当にニコニコの中の人、頑張ってもらいたいところですけどね。

スタッフ:なぜかトラブルがあるとニコニコチャンネルが一番最後の対応になってしまうというのが毎度毎度なんですけれども。

山路:やっぱりシステムとして複雑だってこと?

スタッフ:まぁ世界で初めてのシステムってやつですからね。継ぎ木に継ぎ木を重ねる大元のやつみたいなもんなんで、これが。要は何か新しくするにしても、このチャンネルがあるからってのをベースにみんな設計してあるっていう大元になってるってことですよね。

山路:まぁまぁ本当にニコニコの中の人頑張ってくださいということで。で、ハッカーついでっていうわけでもないんですけれども、次の話題としてこれ、けっこうでかいかなと思ったのが、Telegramっていうメッセージアプリの会社のCEO。

小飼:日本ではあんまり知られてないですけれども。

山路:この人がパリで拘束されたと。ただこのTelegramって暗号通信なんかの機能もいちおうあって、それでロシアなんかでいろんな人が通信使って、ロシア政府がけっこうにらみを聞かせてたという話もあるじゃないですか。だけど、捕まえたのはフランスなんだと。

小飼:まあ、あちこちの政府が捕まえたがってましたし、たまたまフランスにいたから。でも厳密なチャージはなんだろうね。容疑は何なんでしょうね。厳密な。

山路:いろんな誹謗中傷とか、そういうことも含めたやつを放置してたってことみたいですけどもね。この記事を読む限りは。本当にそれが理由なのかどうかはちょっとわからないんですけども。でも、

小飼:CEOであれば、法人の罪というのを代表することができるので。

山路:特にこの麻薬密売とか、児童ポルノに使われてるのにそれを放置してたっていうことを重く見たと。で、フランスが使命手配をしてたっていうことらしいんですけども。なんかこう、2ちゃんねるの責任を問うてるみたいなところとちょっと似てるような感じも受けたんですが、それとは違う?

小飼:まぁでも、ドイツの法律とかさらに厳しいからな。

山路:これまだ詳細がわかってないところで聞くのも何なんですけれども、これがたとえば麻薬密売とか児童ポルノとかなんかに、資金洗浄とか、そういうのにTelegramが使われてて、それを運用が見逃してたというか、ほったらかしにしておいたことで、それが責任問われてそのCEOが逮捕されたとしたら、それっていうのは妥当なもんですか?

小飼:いや、これこそ法廷で決着をつけてほしい問題ですね。

山路:これで捕まえるんだったら、イーロン・マスクって100回くらいもう逮捕されてなきゃいかんことになりませんか?

小飼:いや、これ抜きに捕まえなきゃいけないやつですよ。

山路:(笑)そうですか。

小飼:だから、火星でなくて、塀の内側にいるべき人なんですけどね。

山路:イーロン・マスクの話(笑)?

小飼:で、冷たい言い方してしまうと、もうSpaceXもあるのだし、Teslaもあるのだし。

山路:で、両方とも彼抜きでも回っていく(笑)。

小飼:そういうこと、用済み。

山路:そういうめちゃめちゃなところまで、すごいエンジンの力でぐっと会社を持ち上げるってことができたら、あとは他の人がやるやろっていう。

小飼:そう、だから、ロケットに例えたら、1段目が燃料全部燃やしたら、その後どうします?

山路:(笑)SpaceXだと回収するかもしれないですけどもね。

小飼:ははは、いや、その場合、燃料を少し残しとかなきゃいけないんだよね。

「Winnyの金子氏逮捕のケースと似たようなケースなんですか?」(コメント)

小飼:ちょっと違うなー。Winnyの場合は、具体的にこう言うのもなんだけど、Telegramほどのinfluenceがなかった状態での逮捕なので、どっちかっていうと当局の恥をかかされたっていうのの意趣返しなんですよね。これは金子氏にはちょっと申し訳ない言い方なんですけれども、P2Pでファイルをやり取りするプロトコルとしては、Winnyというのはマイナー中のマイナー中のドマイナーね。

山路:それはアルゴリズムの選び方が?

小飼:アルゴリズムとかではなくて、普通のソフトウェアとしてクッソ使いにくいもので。たとえばMacからいけた? たとえば今だったら常識だけども、納得ができた。納得ができない時点で、もうロートルもいいところで。

山路:当時の時点でも?

小飼:当時の時点でも。当時の時点でもアナクロだったんですよ。本当に書かれた直後くらいであれば、技術的な評価はできたものなんですけれども。あの手のものというのは、実装するよりもそれをメンテし続けることのほうが難しいんです。じゃあP2Pは死んだかって言ったら、今でも普通にBitTorrentって使われてるんですよね。

山路:そういうことも含めて、技術力的なことだったりとか、影響力的なことを考えても、別にWinnyというのは、そんなTelegramみたいなところの規模の話でもなかった?

小飼:だから当局が弾圧するまでもなく、淘汰されてました。それはもう確か。というのか、淘汰されるフェーズに入ってた。当局が逮捕した時は。みんなWinnyみたいな使いにくいものは使ってなくて、P2Pをやりたい人というのを。
 本当のP2PとしてはGnutellaとかをむしろ使ってたでしょうし、本当の意味のP2Pではないんですけど、今一番使われている純P2PではないプロトコルというのはBitTorrentでしょ。なんで純P2Pではないっていうかというと、メタデータを管理するための中央サーバーというのは決め打ちなんですよね。トラッカーって言うんですけど。だからBitTorrentの場合は全部取り締まろうと思えば、トラッカーを押さえちゃえばOKなので、過去何度もトラッカーを差し押さえてますよね。Pirate Bayとか。

山路:そこのところで完全にP2Pにするよりは、コスト的にも性能的にも有利だという判断が。

小飼:そう、性能が抜群にいいんですよね、BitTorrentというのは。ものすごい高速なんですよ。

山路:これ、Telegramの話に戻ると、ここのところで裁判とかでサービスの運営者の責任みたいなものが明確化されていくことになるんですかね。

小飼:いや、そもそもどこが原告の資格を持っているのかというのは。
 この場合、個々の運営サイトではなくて、もうTelegramというアプリまで含めてるわけですよね。CEO、とっ捕まえてるからには。

山路:うーん。いや、こう、なんというのか、本当につくづくサービスの影響力っていうのが国境とかを越えてると、どこが捕まえるのかっていうこともよくわかんなくなってくるわけなんですね。

小飼:いや、本当に。フランス当局にその資格があるのかっていうね。

山路:これって、うちが捕まえるはずだったって他の国が言ったりして外交問題になることもある?

小飼:いや、わりとそういうのは珍しいことじゃないじゃん。

山路:まあ、そうですね。それは確かに。

小飼:Wikileaksのジュリアン・アサンジだってさ、ウチだウチだって、引っ張りだこになったじゃん。

山路:確かに確かに(笑)。

スタッフ:すいません。現状の世界的な法体系では、プロバイダー責任法的なやつで、プロバイダー、つまり、何て言うのか、配信の大元みたいなところ、大元というか、その配信するために必要なところを提供しているところの責任にはならないことに、

山路:アメリカとかでそれをまさに揉めてるところですよね。

スタッフ:そこまで?

山路:いや、ていうか、一番アメリカでそれが問題になってる。

スタッフ:ああ、そうなんだ。

山路:つまり、今までSNSとかそういうふうに、なんて言えばいいのかな、UGCって言えばいいの? ユーザージェネレイティブコンテンツで儲けてた会社っていうのは、自分たちは場を提供してるだけですよっていうことで責任を問われなかったんだけど、でも責任あるでしょっていうことの議論というのが高まってて、すごい、そこのところがホットな話題ではありますよね。

小飼:いや、じつは「おま国」(特定の国・地域から購入できないこと。「お前の国には売ってやんねーよ」)というのは、それを回避するための手段なんですよ。インターネットそのものには国境はないんですけれども、それをわざわざ設けるわけですよね。ユーザーのサービスの範囲というのを、国ごとに限定するとか。それでおま国という状況が発生する。

スタッフ:Netflixは日本だけジブリが見れない、みたいなもんですね。

小飼:そうそう。で、それをやってるのはジブリなわけですよ。Netflixが設定したことではないわけですよ。実装はNetflixなんだけど、Netflixに配信してもいいけれども、日本とアメリカはダメよっていうふうに言ってるのはジブリなんで。

山路:このTelegramの問題っていうのは、大きな話になっていくかもしれなくて、要注目じゃないですかね。

スタッフ:だって1年後には我が身になっている可能性があるニュースじゃないですか。

山路:我が身って?

スタッフ:つまり自分に降りかかってくる災いになる可能性もあるんじゃないですか。

小飼:でもさ、日本もLINEとかじつは問題を抱えているじゃん。

山路:あとイーロン・マスクは本当に人ごとじゃないしね。彼もとっ捕まっても不思議じゃないわけだし、このテレグラムのCEOが捕まっているんだったら。ということで次の話題に行く前に、コメントで、

「入会していたアカウントはまだ復旧していません」(コメント)

山路:というのがあるんですけども、これってもしかしてニコ生の、ニコニコチャンネルのアカウントって話ですよね。ここのところで、新しくニコニコが復活したときにパスワードを再設定してくださいって言われると思うんですよね。そこのところでパスワードを復活する際に、本来だったらメールアドレスを入れたら、そのメールアドレス宛てに復旧のためのURLが送られてくるはずなんですけど、けっこう送られてこないことがあるんですよ。じつは私もそうだったんですよ。なんで送られてこないのかなと思って、ちょっとネット調べてみたら、送信先のメールアドレス、最初の文字を大文字にすると送られることがあるっていう(笑)、なんかこう、まじないのようなTipsがあって。
 で、私も自分のメールアドレス、先頭の文字を大文字にして入れたら送られてきたんですよ。これってもしかして、この人の状況と……この方「パスワード再設定して成功しました」って書いてあるから、これは大丈夫だったのかな? ただ、ニコニコのシステムなんやねんと思いましたけど、そんなことあるんですか、弾さん、こういうこと普通に。メールアドレスの頭の文字を大文字にしたら正常に動作する、そんなんてネットサービスで。

小飼:よくわかんないな。でも、ちなみにメールアドレスの仕様では大文字小文字は区別しない。

山路:ですよね。それこそ、全大文字でも。

小飼:全大文字でも、いいはずです。

山路:なんかこう、なんか知らんけどそこのところが、なんか知らんけどですよ。もしもニコニコのパスワード再設定で困ってる人いたら、メールアドレスを入力するところで、最初の文字を大文字にしてみるといいかもしれないですよって。

スタッフ:久しぶりのクソミソテクニックみたいな感じですね(笑)。

山路:本当ですよね。なんだこりゃっていう(笑)。

スタッフ:そこら辺はちょっとニコニコっぽい原点回帰があるんですけどね。

山路:笑えないけどな。これなんか、はっきり言って、今もしも私パスワード再設定できなくてアカウント入れなかったら、ちょっとシャレになってなかったですよ。いやー本当にね。ということで、ちょっと次の話題なんですが。

「ユニクロ柳井さんの話をしないの」(コメント)

小飼:ユニクロ柳井さんの話?

山路:年収200万円って、今まで、日本はもう年収200万円台の国になったみたいなことを彼が言ってるんだけど、それに対して、いやいやお前がさんざん搾取してきたんじゃねえかよって炎上になってるっていう話ですよね(笑)。

小飼:いや、全くそんな通り。

山路:弾さん的にはもうおっしゃる通りという。ただ、これってなんて言うんですかね、今までこの『論弾』でも何回か言ってきたと思うんですけど、営利企業の経営者ってけっこうそういうもんじゃないですか。言っちゃなんですけど。

小飼:そういうものではある。典型的な。絵に描いたような。経営者が服を着てるような、ユニクロなだけに。

山路:ユニクロの服着てるみたいな。もうちょっといいスーツ着てるかもしれないですけどね。そこのところで、仮に労働者から搾取してるんだったら、それを国がコラって言わなきゃいけないわけなんですよね。経営者ってそういう生き物だから、みんな、国まで新自由主義みたいなのに乗っかって、そっちの方向に行っちゃいかんでしょうっていう。

小飼:国は逆をやんなきゃいけないんですよ。そうでなければ、倒産した企業の救済とかもできないわけですよ。

山路:柳井さんがそうやって、安月給でいい奴は安月給みたいなことを仮に言ってるんだとしたら、そのことに関して国がちゃんと最低賃金あげるなり、ちゃんと労働者には給料払えみたいなことをやんないといけないわけですよね。

小飼:そう、この番組で通して僕も常々言ってるけれども、政府が営利企業の真似をしてどうすると。政府にしかできんことっていうのはあるんですよ。

山路:営利企業と違って、好きなメンバー選んで雇うわけじゃないですからね、国というのは。

小飼:で、その辺がじつはグダグダになったというのは、わりと、エビデンスがいっぱい残ってて、アメリカだったらレーガンの頃、イギリスだったらサッチャーの頃、日本だったら中曽根の頃。その頃に政府も営利企業的に、governされなければ。governというよりmanage、マネージっていう言葉が出てきたのかな、されなければいけないっていうのが出てきて。それが、日本の場合は消費税が導入されて、郵政が民営化されてという形で、結実してったわけですけれども。

スタッフ:ただ、このニュースなんですけど、お前言うなっていう気持ちもわかるんですが、これ安くていいしなっていうの、私もこれユニクロですし、ユニクロとGUでしか最近買ってないんですけど、選ぶのって消費者じゃないですか。私たちがそれを選び続けてきた結果じゃないですか、安くていいものっていうふうな触れこみで。どっちもどっちみたいな、この話題に関しては。

山路:安くていいものを作る企業っていうのは、もちろん選ばれて当然だと思うよ。消費者がそれを選ぶのは当然だと思う。でも、その安くていいものを作る過程で、不当に人から搾取してる、労働者から搾取してるってことがあるんだったら、コラって言わなきゃいけないでしょ。企業努力じゃないじゃん。

小飼:アメリカのわりとわかりやすい例で言うと、アメリカで一番安く売ってるスーパーマーケットというか、ハイパーマーケットというのはウォルマートなわけですよ。そのウォルマートの従業員というのが、あまりに給与とベネフィットの合計が少なすぎて、フードスタンプをもらわなければいけない、食っていけない。要するに生活保護を受けてるわけです。じゃあ、その生活保護の原資ってどこから出てます? 要は、企業にとって不都合なことの吐き溜めになってるわけです、政府というのは。そこが企業と同じようなドグマで回されたら、当然、救えるべき企業というのも救えなくなりますよね。救えるべき従業員というのも救えなくなりますよね。だから結局のところ、社会トータルで見た場合のコストというのは上がっちゃうわけです。物理学的な例えをすると、要はハゲタカ企業というのは、開けっぱなしの冷蔵庫と同じなわけです。それで部屋というのは涼しくなりますかって言ったら、地球はより暑くなりますよというのが答えなんですよ。

山路:柳井さんの話に関して言うと、柳井さんだけを、柳井さんの強欲ぶりを責めたら解決するっていう話じゃねえよっていうか、責めるべき相手っていうのはもう一ついるよねという話になってくるんじゃないのかな。

スタッフ:ここでいうところの当事者って、おそらく現場で働いてる労働者なんで、労働者がやっぱり弾さんがいつもおっしゃってるように、給料をあげろ、お金をよこせって言える環境じゃないのか、みたいな。

山路:そこなんだよな。本当にパワーバランスが違うところで要求をすることの大変さ。

小飼:だけれども、企業が倒産できたり、従業員を解雇したりできるということ自体が、非営利的団体であるところの政府ありきなわけですよ。そうやって失われた部分っていうのは、政府がケツ持つことになってるので。いちおう政府がケツ持つことの原資は、じつはもちろん税金だけではなくて、

山路:国債だったり?

小飼:日銀の通貨生成だったりするわけです。兎にも角にも、政府がやってるわけです。非営利団体がやってるわけです。道路も非営利団体が敷いてるわけです。各種法律というのも、これ重要ですよ。法を書いて遂行するというのも立派なサービスですからね。これも非営利的に政府がやってるわけですよね。

山路:柳井さんの炎上事件というのは、ひと回り大きな視点から見ないといけないんじゃないかなと思いました。

スタッフ:難しい、ちょっと難しくて、安易に乗れない話題でした、私には。

山路:経営者、強欲な経営者を批判して溜飲を下げるってこと自体は、当然の気持ちではあるんだろうけど、たぶんそれは相手の思う壺みたいなところがあるよね。

小飼:これですごいいいこと言ってたのが、オバマが、ちょっと待ってね、YouTubeで検索しなきゃ。今URL、

山路:オバマ?

小飼:オバマのあるスピーチで、You didn’t build that.っていうのがあるんですよ。

山路:これは特定のことについて言ったんじゃなくて、

小飼:まぁ要するに、営利企業が依っている公共サービスというのは、その営利企業が作ったわけではないでしょう。そう、こういうことを言うべきだったんだよねっていうね。これは本当になるほどだったよ。要するに、道路もお前が作ったわけじゃないと。橋もお前が架けたわけではないと。失業保険もお前がやってるわけじゃないと。

山路:お前フリーライダーやんけ、と。

小飼:その通り。フリーライドでいいんですよ、税金払ってれば。儲かってるときには税金を払えば、儲かってないときには、そういうの、正々堂々と受給すればいいんですよ。

スタッフ:なるほど。

「ユニクロは半額ワゴンの中しか買わないのがせめてもの抵抗」(コメント)

山路:って(笑)。抵抗になってるんですかね。

スタッフ:それはちゃんと事業に協力してますよ。

小飼:それどころか、なんで資本資金を持つようになったかって言ったら、そうやって裏で、社会主義としか言いようがないですよ、下支えになってるからですよね。

スタッフ:これは半額ワゴンのやつはそのまま塩漬けにしといて、倉庫に塩漬けさせるか、そのまま焼却させるほうが、たぶん抵抗としては正しいと思うんで。

小飼:え、何の話をしてる?

スタッフ:そういうユニクロの半額ワゴンを買うっていうのが抵抗っていうのに関してですね。企業的に抵抗っていうか、そういうのを買わないほうがいいかな。

山路:それは普通に不買運動って言えばいいんじゃないですか。

スタッフ:そうです。買わないっていうのが一番かなって。

山路:抵抗したいんだったら不買運動っていうことなんじゃないの。

小飼:これもじつはちょっと単純な問題じゃなくて、作りすぎたキャベツというのを畑にすき込んじゃうのは、見た目は悪いんだけども、じつはそれが一番エコなんだよっていう話に通じるところはありますね。

山路:農家は嫌ですけどね。牛乳捨てたりとかね。

小飼:だけれども、競争主義で商売する場合っていうのは、過剰在庫の問題というのは避けられないんですよ。政府に売られるまでもなく、過剰に作っちゃったものというのは捨てたいと。あのETのゲームとか(笑)。

山路:ATARIショックの(笑)。

小飼:はい。

山路:あれは過剰在庫(笑)、

小飼:まさに過剰在庫なんです。

山路:そりゃそうですよね。

小飼:本当になかったことにできたらどんなにいいか。次善の策なんですよ。捨ててしまう、燃やしてしまう、埋めてしまうというのは。

「アメリカ大統領選の変化」と「政策ごとの投票」

山路:オバマの話が出たからというわけでもないんですけど、今まさに大統領選挙真っ最中。前々回ぐらいでトランプ銃撃の話を取り上げましたけど、またそれから本当に潮目変わりましたよね。

小飼:何と言えばいいのかな、実に見事なタイミングで身を引きましたよね。

山路:共和党の候補が固定されてから、確定してから。

小飼:そうそうそう。トランプがやーいやーい、ジジイジジイって言ってたら、自分が言われるほうの立場になってしまったというね。スルッとすり替わったというのか。

山路:前回の『論弾』で取り上げたとき、ハリスが大統領候補になりそうだよねっていうところだったと思うんですけども、大統領候補として確定して、副大統領候補もウォルズ氏という、どこの知事でしたっけ?

小飼:ウィスコンシン。

山路:ウィスコンシンの知事に確定して。これウォルズっていう人、そんなに。

「株の含み益にも課税するって本当ですか?」(コメント)

小飼:っていうの、あのね、これはもし仮に本当だとしても、議会で流れちゃう。

山路:まあ、そりゃそうだろうなという。これ、ウォルズ氏ってそんなに知られた人ではなかったように思ったんだけど。

小飼:僕もあんまり知らなかったけど、実績はバッチシあったんだよね。ウィスコンシンの人たちというのは、もう圧倒的に支持してたわけだよ。

山路:ウィスコンシンってただ、もともと民主党のブルーな州ではなかったでした?

小飼:うん。あのスイングステイツの一つだったんだけど、おかげでかなりブルーイッシュになったという。で、一つびっくりなのは、あんなおっとりしたおじさん面なのに、AOC並みか、それ以上に左寄りの政策をバッチし通してるのね。