「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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 今回は、2024年9月24日(火)配信のテキストをお届けします。

 次回は、2024年10月8日(火)20:00の配信です。

 お楽しみに!

2024/09/24配信のハイライト

  • 立憲代表選とアメリカ大統領候補討論の「グダグダ」と「怖いところ」
  • キリル文字廃止とその影響
  • 「マスク対ブラジル」と「製造業は金貸し化する」
  • 視聴者質問「コンシューマーゲーム機の今後」
  • Vision Pro感想と「OpenAI o1と思考過程のコンプライアンス」
  • 「AIと原発」と「光って冷却」

立憲代表選とアメリカ大統領候補討論の「グダグダ」と「怖いところ」

山路:先週というか、9月21日の土曜日に、筑波のほうで『子供の科学完全読本』のイベントをさせていただきました。この番組の視聴者の方も何人か来ていただいて、本当にありがとうございました。

小飼:ありがとうございました。

山路:おかげさまで、イベントで本も売れたとのことで書店や出版社からいろいろいい報告をいただきましたので、ありがとうございます。あと大阪のジュンク堂の大阪本店で、総合の9位まで『子供の科学完全読本』が行ったということなので、大阪の人、どうもありがとうございます。これから弾さんも、しばらく大阪にはもう少しちょっと手心を加えた形でコメントをすることになるんじゃないかなと思うんですけど(笑)。Amazonでも1回、総合80位だったから90位くらいまで行ってましたよね。

小飼:いや、こういう判型の大きな本っていうのは、それだけでちょっと売れにくくなるのかなっていうふうに、ぼやっと思ってたんですけど。いや、児童向けのジャンルの本っていうのは、あんまり判型関係ない。むしろある程度大きくないとダメだみたいなことを担当編集者の柳さんが言ってて。柳さんの勝利でしたね、そこは。確かにさらに上の順位には絵本がいて。確かに絵本というのはものすごいベストセリングのジャンルですし。だからもちろん判型も大きいし。そういう意味で見ればそうだなと。でも、どちらかというと、そうそう、原材料は子供向けの本ではあるけども、じゃあ全体的な内容が子供向けかというふうに見ると。

「子供の科学とても面白かったです」(コメント)

山路:どうもありがとうございます。本当に。こういうフィードバックって、読者の方が思う以上に著者に刺さるというか、嬉しいものなんですよね。いやいや、本当にそういうことを言っていただけると、作ってよかったと改めて思いましたね、どうもありがとうございました。

小飼:ありがとうございます。

山路:では、そういう気持ちのいい話をしたところで、さっそくあんまり気持ちの良くない話からいっときましょうか。

小飼:そういう苦い話題から逃げないように(笑)、当番組の。

山路:立憲民主党の代表選が行われて、野田元首相が代表に選ばれたという。

小飼:いやもう本当に、もうバッカじゃねえのというのか。僕ぐらいのおっさんには、かつての社会党、現社民党の凋落具合というのを彷彿とさせるというのか。

山路:歴史は繰り返すというか、歴史というか、同じメンツが同じことを繰り返しているという感じがしますよね。

小飼:いや、でも、ここまでもろ同じメンツだとは思わなかったよね。だから、よりによって、民主党を下野させた主犯じゃん。

山路:野田元首相。

小飼:立憲民主党を作る時というのか、民主党が二つに割れた時に、立憲民主党のほうを作った時というのは、野田を入れるかどうかというので揉めたじゃないですか。

山路:ああ、なんかありましたね。

小飼:だから結局重鎮だからというので、入れたところがもう間違い。だからこれはもう社会党が社民党になったのと同じような零落の仕方をする。だから、さらにばらけた上で、さらに粉々になる運命しか見えないよね。

山路:野田さんて、野田、公人だから野田と言うべきか、

小飼:別に「さん」つけてもいいんだけども。

山路:野田元首相って消費税を5パーセントから10パーセントに上げた、

小飼:そうです。張本人の一人と言うべきではありますよね。だから、まさにそれで民主党に引導を与えたわけですね。

山路:いやあ、本当に立憲民主党は選挙で勝つつもりがあるのだろうかと心配になるところではありますけれども。

小飼:だから今のところはオウンゴールしかないよね。積極的に立憲民主党を支持している人というのは、積極的に自民党どころか、維新を支持している人よりも少ないだろうね。維新があんなにグダグダになっているので、こう言っちゃなんだけど、ちゃんと千載一遇のチャンスというのをここでつんのめっているんだから、笑いが止まらないよね。だから、自民党から刺客が出ているとか、わからないけど。

山路:野田元首相が代表に選ばれて、自民党議員はガッツポーズをしたという噂も聞きましたけれど(笑)。

小飼:そうだろうね。

山路:一方、自民党のほうも、

小飼:いや、なんだけど、その前にやっていた泉だっけ?

山路:そうですね。泉代表。

小飼:も維新と組むとか、その時点でお前ら滅びていいよ。

山路:本当に与党になれれば何でもいいのかって、

小飼:だから、この様子だと、本当にそこまで俺に共産党に一票を入れさせたいのかという感じだよね。

山路:入れるところのないときの共産党ってやつですよね。

小飼:その通りです。

山路:一方、自民党のほうの総裁選、いろいろ。メディアは小泉氏が議員支持で先行みたいな記事が出てたりしますけれども。今週ですよね、たしか自民党の総裁選。

小飼:そうなの?

山路:だったと思いましたけれども。いやー、なんかね、あんまり希望の持てる感じになるような気は、どうなんだろう、そんなに期待感は私の中では高まってないですけど、弾さんいかがでしょうかと。

小飼:いかがでしょうか。そういえば、公明党も代表代わったよ。

山路:それがなんだと(笑)、

小飼:だからなんだと。

山路:あれほど波風の立たない代表交代はないですよね。

小飼:いや、なんだけども、そもそも連立与党の一角を成してるっていうのが、そうよ、カルトよ。だから、自民党は統一教会で、公明党は創価学会が要はバックなわけやん、票田なわけやん。

山路:宗教団体、本当にどの国でも強いっすねっていう、改めて。

小飼:やっぱり狂信者強いんだよね。

山路:ヒヤヒヤしながら聞いてますけれども(笑)。国際的な文脈のところで、今一番でかい話題になっている話というのに先、行っておきましょうかね。びっくりしたのが、レバノンの遠隔爆弾テロがあったんですけれども、これ驚きませんでしたか?

小飼:まさか、よりはやはり。

山路:やはり?

小飼:ではあるね。まあ率直に言って無差別テロなんですけども。そこの部分というのがやはり、まあこう言っちゃなんだけども、もはやイスラエルがテロリスト国家であるというのは、イスラエル自身ですら否定してないですよね。だからそこは驚かないんだけれども、驚いたというのは、こういった電子的なハイテクな無差別テロというのを、ここでやるかと。

山路:そのタイミングが、ということ?

小飼:タイミングがというのか、そういう能力をじつは持ってますというのと、それをこの場で使うというのと、それほどのターゲットだったのかという。

山路:ヒズボラが?

小飼:いや、でもそもそもレバノンとは戦争してないわけですよね、今は。

山路:国同士の話ではないですよね。

小飼:というのか、もういつもやりたい放題してますけども、イスラエルはレバノンでは。実際そういう能力を持ってるっていうのと、それを実際に使ってしまうというのは別で、そういった意味では今のネタニヤフ政権というのは、出し惜しみしてないという言い方はできますよね。

山路:戦力の逐次投入の真逆をいってる。そういう意味では思い切りがいいやり方なんかもしれないですけども。それにしても、遠隔爆弾の手法について言うと、すごいくないですか。ハンガリーにトンネル会社みたいなのを作って、そこでポケベルに爆弾を仕込んで、あるいは日本製のトランシーバーなんかに関しても、コピー品なのかどうかちょっとよくわからないんですけれども、そういうのをどこかルートの途中で。

小飼:要は毒を仕込んでいたわけですよね。

山路:数千台単位じゃないですか、どれも。

小飼:数千台単位です。

山路:こんなことを、しかもイスラエルがやったろって非難されて、別にそれに関して公式に否定もしてないわけじゃないですか。

小飼:否定もしてない。

山路:っていうことは、普通はやったと思われてもしょうがないですよね、国としてやったと。そういうふうになった時に、イスラエルの企業が関わるようなサプライチェーンとかって、ものすごく疑われることになりませんか。

小飼:もちろん、それは。

山路:それって彼らは覚悟の上なんでしょうか、ちゃんと。

小飼:ね。

山路:先進国の中での商取引とか、モノを売るとか、経済活動の中でハブられるっていうリスクを全く考えてないのかなっていうところ、それもびっくりなんですけど。

小飼:なんでそこに踏み切れてるかって言ったら、

山路:アメリカ?

小飼:その通りです。だからもうはっきり言ってしまうと、アメリカにとってのイスラエルというのは、日本にとっての統一教会みたいなもんです。

山路:(笑)怖い。

小飼:はい。統一教会よりもさらにガッチリ食い込んでるわけですよね。

山路:それこそ一国の軍事だったりとか、諜報戦を動かしてるわけですからね。

小飼:そういうことです。

山路:いやー、なんていうのか、それは安保理でもう何にも進まなくなるわっていう感じが。

小飼:だから安保理が機能しない、明らかな理由の一つというのか、そもそも安保理の仕組み自体がもうなんて言えばいいのかな、機能しない組織の代表例みたいなもので。

山路:まあ、当面のところ落ち着く様子が見えないですけれどもね。ちょっとレバノの話が出て、アメリカの話が出たついでに、アメリカ大統領選のことも触れときましょうか。前回『論弾』をやった同じ日に、確か討論会があったんですよね。そこでいろいろトランプが、わりと出来がひどかったという。

小飼:だから、ハリスが勝ったというよりも、トランプが自滅したというより、自滅するように持ってきましたね。

山路:移民がペットの犬猫をさらって食ってるっていう話はおかしかったですよね(笑)。

小飼:Save the dogs, save the catsってやつね。

山路:マジかっていう、ハリスの顔もなかなか「何言ってんだ、この人は」みたいな顔が、なかなか役者やなと思いましたけれども。これっていうのが単純にSNSで笑いになっているだけじゃなくて、外交的にもネタの対象になっているという。ドイツの外務省が、トランプのそういう討論会での発言に関して、いろいろ間違ったところがあるぞと、ドイツは再生可能エネルギーちゃんとやってうまくいってぞということで反論したんですけど、その手紙の追伸のところに、我々も犬や猫は食べませんというのを、そんな別につける必要もないのに、とりあえずPSでついているという(笑)、公式文書ですからね。すごい世界ですよね。

小飼:いや、でもさ、普通あそこまでグダグダだと、もうそこで勝負あったとなるんだけど、そうでもないというところが。

山路:怖いですよ。それが一番怖い。

小飼:そこが一番怖いところです。

山路:頭のおかしい候補者って、言っちゃあなんですけど、いくらでもいるじゃないですか。

小飼:アタオカは、民主制というのはそういう、アタオカ候補者を防ぎようがないんですよ。

山路:候補に名乗り出ること自体は、もうはっきり言って自由にすべきというのがある意味民主制ではありますもんね。それにしても、アタオカをフィルタリングする機能がアメリカは弱くなっていませんか?

小飼:いや、だからもともとフィルターしてたかどうか。で、じつはアタオカの定義というのも、時代とともに変わってくるわけですよね。だから奴隷制というのも、別にアタオカではなかった時代というのはあったわけですよね。だけども、少なくとも科学的な話題というのは、わりとアタオカかどうかというのが、はっきりわかるところですよね。だから、そもそもポストトゥルースという言葉が出た時点で、もうこれは真っ黒なわけです。100パーセント黒いわけですよ、アタオカ指標としてはね。

山路:ポストトゥルースね。

小飼:ポストトゥルースというのは、はい。

山路:いやー。で、その大統領選に関してローマ教皇がコメントしてるという。これ、けっこう面白いコメントでしたよね。どっちも悪い奴らなんだけども、よりlesser evilのほうを選びましょうやと。「棄権はしないようにね、アメリカ国民」みたいなことを言って。

小飼:それはなぜ、なぜそれがギリギリの線かというふうに言ったら、やはり妊娠中絶というのは肯定はできんわけですよね。

山路:カソリックですもんね。

小飼:そうです。でもそれ以外のものというのは、やっぱりアタオカなわけですよね。

山路:いやー、良心があるものなら誰もがこれについて考えるべしみたいな、lesser evilを選びましょうというのは、なかなか踏み込んだ発言ではありません、つまり、自分自身は投票権もないわけじゃないですか、アメリカ人ではなくて。それでアメリカ人に対して、投票に関して多少なりともそういうことを言うというのは、なかなか最近のローマ教皇は政治的な発言をするなと思いましたけども。

小飼:というのか、実のところかなり政治的な団体ではある。

山路:あー、バチカンというのがそもそもっていうことね。昔から確かに、何が遺憾であるとか、そういうみたいなことで圧力をかけていたりはしてましたしね。

小飼:昔から。僕にとっては統一教会も、正統教会、英語で言うとCatholicも、どちらもカルトなんですけどね。

山路:(笑)弾さんにとってカルトの定義とは? 科学的合理性に基づいてないみたいな感じ?

小飼:いや、だから物証を否定する皆さん。

山路:エビデンスベースではないという。

小飼:はい。

山路:お気持ちで。

小飼:エビデンスベースではないというよりも、要するに証拠を認めない連中。もっと具体例が欲しければ、ドーキンスの本を読んでください、『God Delusion』という本があるので。

キリル文字廃止とその影響

山路:じゃあ、ちょっと国際ニュースの文脈でこれも取り上げていこうかなと思ったのが、旧ソ連諸国でキリル文字の廃止の動きというニュース。ホンマかいなと思ったんですよ。これ、報道しているのが『モスクワタイムズ』という報道機関で、もともとはロシア在住のオランダ人の方が創刊した雑誌らしいんですけど。最近、ロシア政府に目をつけられて、危険な報道機関みたいなふうに、ちょっと冷や飯を食ってるみたいな立場にあるらしいんですけど。カザフスタンとかキルギスタンとか、そういうふうなところがどんどんキリル文字を廃止して、トルコで使われているアルファベット、

小飼:トルコって文字を切り替えた先駆けですからね。もともとアラビア文字を使っていたのを近代化というよりも、アタチュルクの革命による一環としてラテン文字に切り替えたわけですね。でも、ラテン文字だけだと、発音の表現とかできなかったので、どういうふうにアクセントをつけるとかっていうのも一緒にやって、じつはそれがトゥルク系のトルコ語以外の、

山路:共通文字みたいな。

小飼:そうそう、言葉でも使われるようになって。なんですけど、その一方で旧ソ連の共和国、現在は独立国だったというところは、旧ソ連だっただけあって、キリル文字を使っていたわけですよね。だからその意味では一種の文化革命ですよね。

山路:これが旧ソ連のほうがキリル文字を手放して、トルコのほうのアルファベットに切り替えようとしているというのは、やっぱりトルコの影響力が文化的にも強くなってきているということは、それが言える?

小飼:だからそれはロシアの影響力が弱くなってきているというふうに言えるわけですよね。

山路:なるほど。ロシアって自分たちが思っているよりも、はるかに旧ソ連の国から嫌われていませんか?

小飼:それはそうよ。ウクライナとはもろ戦争をしていますけれども、戦争にはなっていなくても。でもやっぱりそれで決定的に大きくなったの、なんと言えばいいのかな、見放すきっかけになったというのはアゼルバイジャンとアルメニアの戦争でしょうね。これで、もうはっきり、ロシアはアルメニア側についていたわけですよね。なんですけど、もうほとんど手も足も出なかったという。

山路:実力としてぜんぜんダメダメだったという。

小飼:ぜんぜんダメダメだったと。ぜんぜんちゃんと助けてくれなかったと。

山路:来年だったか、ロシア、軍事費もGDPの3分の1になるんじゃないかというふうなことまで言われていますよね。

小飼:そこまで継ぎ込んでも、こう言うのもなんだけど、あの程度しか勝てないと。なんだけれども、それでもやめないというのは独裁政権のまさに弊害だよね。いや、旧ソ連というのも党独裁ではあったけども、個人独裁ではなかったわけですよ。

山路:そうか、いちおう、なんか権力争いというブレーキが効いたところはあったんだけど。

小飼:その通りです。だから、それで形だけの選挙はやってるけれども、独裁度というのは上がってるわけですよね。だから、もう被害額で見れば、明らかにアフガニスタン侵攻を上回ってるわけですよね。アフガニスタン侵攻の時には、ソ連軍の人的被害、戦死者というのは2万人程度だと言われています。

山路:今回、60万人とかでした?

小飼:60万人はさすがに行ってないけど、10万人超えるというのは確かでしょうね。戦傷者だと、それくらいいくかもしれないな。

山路:いやあ、怖い話ですよね。

小飼:文字を変えるというのは、他の国の歴史でも見られるところで、日本に近いところだと、

山路:韓国?

小飼:そうです。韓国、朝鮮とこの場合はあえて言いますけども、が、ハングルに切り替えて。

山路:韓国ができる前ですもんね、ハングルが作られたの。

小飼:その通りです。なんですけど、ハングルができた当初というのは、あくまでも正しい文字というのは漢字であって、二級市民だったんですよね、血筋は。

山路:今はもう、公文書もハングルで。

小飼:というのか、若い世代というのは、漢字がわからないんじゃないかな。

「言語は変えないまま文字を変えると人間の思考に影響するんだろうか」(コメント)

小飼:あり得るな、それは。どういうふうになるのかというほどの知見は持ってないんですけれども。

山路:言語って音声と文字と両輪である意味、機能しているところがあるじゃないですか。

小飼:あくまでも音声のほうが先というのか、主なんですけども、仮に音声がダメでも、生まれつきの聾唖者しかいないコミュニティでは手話が発明されるというのがわかってますからね。

山路:あと、文字と音声ということでいうと、日本語ってめちゃめちゃ同音異義語が多いですけど、ある意味、文字で読んで知っている識字率の高さによって、それが補われているようなところもあるのかなとは思いますし。

小飼:そうなんですよね。かな漢字混じりのおかげで、正気が保てているというところはすごいありますよね。

山路:ただ、本当に言語って文字も音声も固定されているものじゃないから、たとえば、仮にキリル文字を使っていた旧ソ連諸国がトルコのアルファベットに変えたところで、最初のうちは不都合とか、それでうまく表現できないみたいなこととかもおそらく出てくると思うんだけど。それって世代を重ねれば、ある程度、修正されていくというか。だから、たぶんそれで不都合は、数十年単位で見たら、なくなっていくんじゃないかなと、個人的には思いますけれどもね。

小飼:あと、もう一つあった。イスラエルがヘブライ文字を復活させています。ヘブライ語そのものも復活させています。

山路:現代ヘブライ語。すごいですよね。読み方がわからない言語を、現代に蘇らせて、それをみんなで使うようにしようって。いきなりエスペラント語をみんなに覚えさせるみたいなノリじゃないですか、言ってしまえば。

小飼:まだエスペラント語のほうというのは、スペイン語とかイタリア語とかポルトガル語とか、あの辺が原流として強いので。もし知っているとある程度、エスペラントでいいかなと。

山路:大変だろうな。切り替えた当時のイスラエル人、大変だったろうなという気がしますけどね(笑)。

「漢字なくなったら日本人の思考は変わるだろうな」(コメント)

小飼:いやでも、戦後直後、そうなりかけたんだよね。

山路:ローマ字運動みたいな。

小飼:というのか、漢字廃止というのか。川端康成もそうしろとか言ってなかったっけ?

山路:でも、仮にそれをめちゃめちゃ強要されたとしたら、アルファベットだけになったとしたら、新しいアルファベットで同音異義語とか区別できるような仕組みというのがおそらく生み出されるとは思うんですよね。

小飼:だからそれがトルコ語ではよく使われている、アクセント記号だとか、セディーユだったっけ? たとえば、Cの下にピリオドみたいなやつをつけるやつ。

山路:しかも、今だったらスマホ時代なわけだから、絵文字とかが普通に補助的な記号として使われるようになるかもしれないですね(笑)。

小飼:あれはなんと言えばいいのかな? 漢字2.0と言えば、そうだよね、表意文字というのもやはり再発明されてしまうんですよね。

山路:ああ、確かにね。

小飼:表音文字のほうが綴り方は覚えやすいんですけれども、でもたぶん人類がどっちを先に使い始めたかって言ったら、明らかに表意文字というのか、象形文字なので、ちゃんとアルファベットも象形文字が元になっているっていうのはちゃんとわかっているんですよね。ちゃんとフェニキアからこういうふうに変わっていっているという歴史はほぼ確定している。

山路:Aが牛の頭とか、そういうのがありましたよね。言語、面白い話ではありますね。

小飼:極めて政治的な話でもある。

山路:確かに言語を変えることによって人の思考をある意味誘導するとか、そういうのはオーウェルの『1984』でも出てきた話ではありますけどね。あれは言葉でしたけど、文字じゃなくて。

小飼:ニュースピークってやつね。

スタッフ:すいません、宗教改革、革命どっちか忘れちゃったけど、あれもラテン語とか関係ありましたよね?

山路:宗教改革のとき?

スタッフ:ルターでしたっけ?

小飼:いや、の時は文字は変えてないけれども、マスプロデュースできるようになったわけです。ルターの聖書っていうのは、刷られたんですよ、活字で、活版印刷で。

山路:それまでは教会に行って言葉で聞くしかなかったのを、それをみんなが自分で聖書の内容を確かめられるようになった。

小飼:もちろん修道院で写本はしてましたよ。でも要するに、読み書きというのが当時のヨーロッパではプロのお仕事だったんですよね。修道士たちという。だから一般の人にもアクセシブルになったという。あと宗教と言語というのではやっぱりイスラム教のやり方というのも、これも特筆すべきだと思いますよ。おそらくキリスト教の聖典、The Bibleというのは世界で一番多くの言葉に翻訳された書物だと思われるのですけれども、逆にクルアーンというのはアラビア語のみなんですよね。翻訳というのはあり得ないんですよね。翻訳というのは、強いて言えば単なる解説であって、だから言語を固定してしまったと。

山路:しかしすごい勢いで広がったじゃないですか。

小飼:そうなんですよね。

山路:ただそれでアラビア語話者ってめっちゃ増えたかというと、そうでもないような。

小飼:そうでもない。

山路:だって使われている話者の数で言ったら、べつにアラビア語というか、上位ではないですよね、決して。

小飼:まあ2億くらいだね。国連の公用語にはなりましたけれども。

山路:これって結局ちゃんとクルアーンを読んでいる人はそんなに多くないということでもあるんでしょうかと(笑)。

小飼:どうなんでしょうね、そこは。

山路:みんな結局のところ、人づてで聞いているとか、翻訳したのを読んでいるというのは。

小飼:いや、でもこの番組でも何度か言いましたけれども、イスラム教を知っているけれども、信仰はしていないという状態をイスラム教は許さないんです。だから入信していない人たちというのは、知らない人たちと断言していいんですよね。

スタッフ:じゃあここまでの話を聞いている限り、こちらのニュースは後々の歴史に残るようなことになるという。

山路:キリル文字の経過、

小飼:キリル文字を廃止するという。

山路:世代をまたがってそれが進んで、そういうふうに変わったということがあったら、たぶん言語史的にも、世界の歴史的にも、おそらく世界史の教科書には載ることになって、受験生が覚えることが一つ増えますなと(笑)。

小飼:仮にロシアが再占領してキリル文字を復活させたら、それはそれでやっぱりニュースになる。

山路:うんうん。

小飼:でも、セルビア・クロアチア語みたいに両方の表記の形式がある言語というのもありますからね。クロアチア語といった場合にはラテン文字なんですよ。セルビア語といった場合にはキリル文字なんです。

山路:へええ。

小飼:でもどっちもほぼ同じ言語だと。

山路:あの辺のスラブ系の言語、影響を受けてたりとかそういうこともあって、変えやすいというのはあるんでしょうけどもね。語彙は同じで、表記法とかもかなり近いものにしてあるというのはあるかもしれないですけど。

小飼:いちおう、どちらもルーツはギリシャ文字なので。

山路:じゃあもう一つ、ちょっと国際絡みで今度は、

「仲悪いからです」(コメント)

小飼:その通りです。だからちゃんと仲の悪さをスクリプトでも分けているというね、文字でも分けているというね。ブラジル対イーロン・マスク。はい。

「マスク対ブラジル」と「製造業は金貸し化する」

山路:いかがですか、これ。これっていうのは珍しくイーロン・マスクが折れた話。

小飼:ヘタレ。

山路:ヘタレって(笑)、

小飼:いや、もうはっきり言ってヘタレだよ。