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菊地成孔さん のコメント

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菊地成孔
>>1

 今、僕や田畑さんも含めて、結構な人々をグルングルンに振り回している「憐れみの3章」ですけど笑、僕の経験値としては「ものすげえ興奮して人に話しても、あまりわかってもらえない」という笑、もので、だからこそこんなに興奮するんだ。と思っていますし、田畑さんの興奮が非常によく伝わったきます。御説は非常に緻密な論考で、一概視しては失礼とは思うのですが、全てその通りだと思います。

 ご質問、並びに、ご指摘外の話だけすると、何がすごいって、前作と並行して制作していたという事実ですね笑。前作は、まあまあ普通に、というか、神が可視化するネヴァーランドの、つまりハリウッド映画ド直球だったと思うんです。多くの鑑賞者が普通に欲情していました笑。

 スピード制作、そして、神の可視から透明化、という離れ業を可能にしたのは、ランティモスはかなり積極的なAI使用肯定派で、前作ではエンドクレジットにも音楽にも(音楽側=ミア・レヴィ側は否定していますが笑、絶対に使っています笑)使用、本作は例のダンスにも間違いなく使われていますし、生成AI特に動画の生成の、正体不明の属性として、欲情を制圧的に去勢し(「AI動画にはリビドーがない」という風説を、そっくりそのままトレースしていると思いますね)、愛をはじめとする森羅万象が、「今、生成された」という感に対して、全く臆していない。その「臆さない」感が、クセナキスからマリア・カラスを繋ぐ(ここを繋ぐ人いないですけど笑)、ギリシャ線だとしか思えない。のですが、何せギリシャ文明に関して、実のところ考現学というか、現代的な解釈というのは無きに等しいので、どうやってアプローチしたら良いのかがわからない。その圧倒的な達成感がランティモスの恐ろしいところだと思います。

 Hymnに関しては、これは僕の仕事だと思いますので笑、かなり調べてみましたが、正直まだ調査中で、反復になりますが、コロスも含め、「古代ギリシャ音楽」に対するアプローチは、考古学ガチ勢(楽器の複製、空間の複製、演奏者、歌手の複製、を追求し抜く閥)と、巨大駄菓子化(いわゆる「エリザベステーラーのクレオパトラ」に代表される、エキゾチックOST)の2派しかなく、どちらも帯に短し何とやらで、本作の「ピアノ=思いっきり平均律」と合唱、というスタイルがどんだけ斬新か、については、もう日本人の評は予め諦めるしかなく笑、海外の映画系ブロガーの中でも、音楽に関してガチだなあと思うものを見ても、書いてあること田畑さんと一緒で笑、「コロスだということはわかるが、それ以外何もわからない、古代ギリシャごか現代ギリシャ語かどうかすらわからない」とあって笑、要するにこれは、ある映画が提示したアポリオに対し、世界文化が平等に壁に当たっている状況なので笑、ランティモスって発狂しているのではないかと思いますね笑。

 OSTから音列を採っても結局、さほどのクラスタリングはなく(そこは逆クセナキス的ですが)、平均律内で採れてしまうので、最低でも18世紀以降の=後期バロック以降の古代ギリシャ音楽、と、こう書いていても神託が降りてくるばかり、と言った感じなのですが笑、御説の通り、ジェースキンフェンドリクス(ケンブリッジには音楽専攻どうやらあります。学閥が現場に存在するほどいたかどうかは分かりませんが、履歴に書いてある音楽家やエンジニアが散見されるので)のスコアは、驚くべき直線性を保っていて、80年代を席巻した、ニューシンプリシティの発展的な継承だと言えます。これは、エビデンスありませんが、フェンドリクス×ランティモスの幸福な合意である気がします。前作で「音楽にもっと色々言いたい」と思った節があるので。

 ただ、一回しか見ていないので、流通OST版と、映画作品内における整音のセンスと技術は判断できません(記憶力の限界で)。今、AIによってどれぐらいコレが生成できるかラーニングのアプローチを変えてトライアウト中です(ピアノと歌ぐらいは平然と生成するんで=最新界のラジオデイズ参照)。

 「夢度数」ですが、やはり本作は20世紀映画的な夢度数はゼロに近く笑、かといって21世紀の夢感、とも言えず、これはあまりに物語が盤石なせいもあるんですが、新・現実主義というか笑、アビチャッポンのメモリアを睡眠時と覚醒時に2分割して、覚醒時を煎じ詰めた様な感覚がしますね。

 いずれにせよ、20世紀の清算速度が、AIを媒介に高速で進むことは間違いなく、いささか日記との符合に強権布帛だとはいえ、「刑事コロンボ研究」はキーで入力して書き上げるつもりですが、20世紀の生産を20世紀の話法と記述法で行うわけで(通路はあるのですが、それはまだ企業秘密というか笑)、あらゆる20世紀的な批評基軸を外して行けるか、今、脳が爆発しそうな状態です笑。
No.8
1ヶ月前
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 3年越しで「天使乃恥部」を完成させ、久しぶりでいつもの街中華に行ったら、なーんと、客が僕しかいなかった。この店は外から中が見えるタイプで、昨日まではいつものように客でパンパンだったのであった。    「えー。どうしたのかな」僕はそんなに不安が強い方ではない(精神分析を受けてからは特に)たいていのことはどうにかなるだろと思う方だが、いつでも客でいっぱいの店がさ、行ったのは夜の9時とかよ。まるで人類が滅亡したかのようだ。日曜の夜とはいえ。だ。    まあまあ、そのうち客も入ってくるだろう。それで結局、だらだら11時まで居た。エビスの中瓶1本、茄子の唐揚げ、エビ蒸し餃子、豆苗炒めと、クォーターポーションの北京ダック、サンラータンの刀削麺。いよいよ明日から、「コロンボ研究」の前書きから執筆に入る。膨大な資料とメモをまとめていると、「 M/D 」よりも厚いかも?と思えてくる。    とうとう僕が会計を済ますまで、客は1人も入ってこなかった。えー、なにこれ気持ちわるー。またコロナでも流行ったのかしら。    雨がそぼ降っていて、僕は、ラディカルな意志のスタイルズのパーカーを着ていて、フードを被り、歩いて帰ることにした。  
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