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  自分から取りに行かなくても入ってくる情報。それがポップ(広告)だ。と口に出してみるも、もうかなりノスタルジックである。勿論、これは原理に近く、今でも通用する構造である(どころか、今、<全部それ>状態に近い)こともわかっているのだけれども、流石に63年と5日も生きていると、僕がこのセリフを心中で誦んじる時、頭に浮かんでいるのは<渋谷PARCOのグランバザールが今季は何月何日から何月何日まで>とか(当然ながら、僕はこれを、テレビから流れてくる音声として「暗記」していた。スケジュール帳すら持たなかったから当然なのである)、ずーーっと後になるが、<今、J-POPチャートを席巻しているのはビーイング、ビーグラムというレーベルのタレントさん=多くはバンド>で<サブカルに当たる「渋谷系」にはフリッパーズギターという、ものすごく若くて顔が可愛い王子様が2人のユニットだ」とか(つまり僕は、21世紀になるまで「フリッパーズギター」のアルバムはガッツリ聴いたことがなかった)、「秋葉原の小劇場みたいなところを拠点にしていたのがAKBで、センター取りのためにファン投票を総選挙と呼んだり、腕相撲?で決めたりしているようだ」とか、そういうやつだ。一瞬、古すぎて目眩がした読者も多かろう。

 

ただ前述、この情報理論は原理ぐらい普遍で、最近だと「アイドルマスター=アイマスのアーケード版ができると、270兆円産業が300兆円産業に膨れ上がった」というのがある。

 

  あまりに疲れていたので、正装のコーディネート以外、何も考えられなかった。しまった。と思ったのは、会場入りしてからだ。

 

 僕を会場でアテンドしてくれたのは、NHK出版のノリ・田中という男で、もちろんこれはあだ名というか、つまり彼はペンギン音楽大学の卒業生なのだが、2メートル近い長身で、全体にボワンとした印象なのだが、デキる奴である(彼は「爆笑問題のニッポンの学問」からの付き合いである。つまり、相当なやり手だ)。

 

 なので、移動しながら、彼に小声で

 

「あのさ、受賞したらスピーチが1分って、ここ、書いてあるんだけど、2分やったら強制退場させられたりする?」と聞くと「いやあ、先生だったら2分ぐらいは、、、、」と言ったので、僕は「そうお?」と確認してから、猛烈なスピードで脳内で草稿を書いて、実際に「受賞作は、、、、、<国宝>」と告げられる一瞬前まで、脳が破裂するのではないかというほど、何度も何度も反復していたのだった。

 

 菅原洋一が亡くなって、そりゃあ故人がシャンソン出身の歌謡歌手として(亡くなるまで現役で、シャンソニエとしてジャンルミュージックに殉じた、生涯バイウエイの歌手だったことは言うまでもないけれども)テレビに毎日のように出演していた頃、それはテレビジョンの黄金期で、僕も毎日のように見狂っていたのでよく覚えているし、紐づけられた記憶がどさーっと山のように引きづり出されるような所はあるのだが、僕は90過ぎた人間というのは、ほとんどが半分は死んでいると思っていて、良くもまあ「人生100年時代」という、楊貴妃不老不死のプロレタリア版みたいな事をメディアは言うよなあと思った。


 

 前にもちょっと書いたが、日本人の平均寿命は、医学の発展&公衆衛生の向上とガッツリ関わっている。戦後の高度成長期に、日本人の平均寿命は50代から80代へと一気にハイジャンプした。少しずつ少しずつと伸びていったのではない。これには「乳幼児の死亡率」という、これぞまさに数のカラクリ、というポイントを抜けば(各自検索)、結核に対する治療法の確立(抗生剤という概念の結実と使用開始)、公害の減衰と一般的な公衆衛生の激的向上(オリンピックに向けて)、更には問答無用の死病とされていたガン治療の発達、等々によって、大ジャンプを果たし、21世紀に入って、全く同じ構造で、60が80へ、そして80が100へ。という形で伸びているのだが、これはつまり、社会風俗、政治経済の預かり知らないところで(国民皆保険の制度化は大きいだろうが、医療法などは後付けであって、何せともかく薬品開発をはじめとした医療テクノロジーの向上が押し上げているのである。



 

 何が言いたいのかというと、我々は環境とテクノロジーによってどんどん長生きさせられているわけで、これは、人間側の要請というか、人間が「誰だって1ヶ月だって長生きしたい」という前提に立たないと実行できない。この件は例の「誰だって反戦であって、好戦者はいない」が前提になるかどうかの話と同一線上にある。社会風俗、政治経済以前に、人間側の多様性と個人の尊厳が失われている。



 

 僕は、もし人間の平均寿命が100になったら、90超えの人々には尊厳死の権利を国が与えるべきだと思う。ゴダールが示したことはこれだ。

 
ビュロ菊だより

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菊地成孔

音楽家/文筆家/音楽講師 ジャズメンとして活動/思想の軸足をジャズミュージックに置きながらも、ジャンル横断的な音楽/著述活動を旺盛に展開し、ラジオ/テレビ番組でのナヴィゲーター、選曲家、批評家、ファッションブランドとのコラボレーター、映画/テレビの音楽監督、プロデューサー、パーティーオーガナイザー等々としても評価が高い。

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