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 アリアナの事はそっとしとけよ、もう目にみえてるんだし、来年から休むんだからさ。それより楽しもうぜ、あんなにサーヴィスしてくれてんだから。あの、オーディションに落ちてチェーンソーで審査員を皆ズタズタに切り裂いて、自分も「キャリー」のシシー・スペイセクみたいに血みどろになるやつ、あれはやりすぎで、オレぐらいの歳になると、っていうか、せっかく「スプラッター・ブーム」直撃世代でもあるオレなんだから、アリアナがあんな血みどろになったら興奮しないとダメぐらいなもんでしょ。いやほんと、オレ30代だったらもう大変。卵かけご飯とKFCぐらい有り難く頂いちゃったよね。だってほとんどの世代の人が辟易してんだからさ、アリアナの精神的自己治癒には。え?「お前の好きな、水着きてたら?アリアナだったらほら、エクササイズ・バイク漕いでた時のあるだろ?アレで血みどろだったら?」はっはっはー。そうか笑、そりゃもう普通にご馳走だよ。バッカバカしいなあ。な笑?今からAIで作ろうかな。

 

 でも「hate that I made you love me」の、全身が焼け爛れたアリアナの恋人がダイナーに入ると、接客も調理も、客全員もアリアナで恐ろしくなって逃げ出すっていうシーンあるじゃない、あの、ずらっと並んだアリアナにはハッキリ笑えるし超可愛いよね。外に出たら町中全員がアリアナだったらもっと良かったけど。

 

「オンタイムではそれほど評価されなかったが、長時間経つと、その重要性、革新性が際立ってくる」と書くと、自分の作品についてでも書いている気になりかけるのだが違う。ノリさんのことだ。SNSで、芸能ネタで「この国ももう終わりだ」という人々は昔からいた。「あったりまえじゃん」と思っていると、なんと大衆はどんどん忘れてゆくらしい。本当に恐ろしいことだ。

 

そりゃあ原爆投下の日には「現在の甘ったれた日本人にはモームリなのではないか?」と思われるほど、エグく厳しい番組がオンエアされ続けるわけだ。あれを最低でも63回は見ている。最近では「被曝して100近くまで矍鑠としてる人が多いということは(以下とても書けない)」と思うほどになってしまった。僕だって、僕にできる範囲で、国民に伝える義務がある。

 

安部元首相の暗殺事件を映画化し、その主演(犯人)を菅田将暉がやるらしい、というだけで(サイジングこそ測れないが)反対運動が起きているのを見て「はー」と声を出してしまった。

 

「はっ!」でも「はあ?」でもない。「別にやりたいならやっても(制作しても)かまわないけど、菅田将暉の役者声明が終わるってことは覚悟してるんだろうかね」という、うっとりするような素晴らしいポストを読み、直後の「はー」という奴で、何を思い出したかと言えば、毎度毎度毎度の昭和になるが、「8時だよ!全員集合」というザ・ドリフターズの番組を「教育上、子供に悪影響が出る害悪番組」として番組を終了しろ。という人々がいたのだ。こいつらの言うとおり、番組が終了させられていたら、我が国の子供たちは、今より遥かに爛れ切って未来を失い、数万円のために人を殺すスラムドッグ化していただろう。身も凍る思いである。

 

 木の葉を隠すには森の中。とチェスタートンが言ったとか言わないとか。僕はマイルスとゴダールと筒井先生に関しては大っぴらに話しているし実践もしている(かなり露骨に実践しているのだが、ほとんどの人に指摘されない。チェスタートンの言う通りになっている。逆転的に)。が、何か、飲み食いに関しては「実家が料理店だから」という家系一筋にしておいても誰も不思議がらないので、ずっと伏せていたが、ほとんど全て玉村豊男と嵐山光三郎だ。本当に、ほとんど考え方は一緒じゃないかと思うほど影響を受けている南伸坊と呉智英は、驚くほど食い物の話はしない。中野香織さんも、どんどん服に特化しておられるし。僕がパンチラインにしている「本当に美味いものは<うわあ、なんだこれ、すごい凄い>と思っているうちに食い終わっている」というのは玉村豊男の言葉である。

 

では敵、というか対偶に誰がいるか?ボスが伊丹十三で下っ端が田崎真也なのだが、まあ、なんというか、ため息ばかりが深くなる残暑ですよね。書くだけで。

 
ビュロ菊だより

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菊地成孔

音楽家/文筆家/音楽講師 ジャズメンとして活動/思想の軸足をジャズミュージックに置きながらも、ジャンル横断的な音楽/著述活動を旺盛に展開し、ラジオ/テレビ番組でのナヴィゲーター、選曲家、批評家、ファッションブランドとのコラボレーター、映画/テレビの音楽監督、プロデューサー、パーティーオーガナイザー等々としても評価が高い。

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