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--今日はプロデューサーの山内さんにお話を伺っていきます。

山内:質問される側があんま慣れてないんですけど、よろしくお願いします。

--まず、VISUNAVI Japanのプロデューサーになった経緯を教えてもらえますか?

山内:遡ると、2022年に「#V系って知ってる?」っていうプロジェクトが立ち上がるんですよ。その時に同名のラジオ番組が2022年の10月からスタートするということで、その番組のDJ探しが行われてたらしいんです。皆さんご存知のように「#V系って知ってる?」はDEZERTのSORAさん旗振り進んでいたプロジェクトで。ある関係者から聞いたところによると、その番組のDJの条件が、ヴィジュアル系にある程度詳しい男性で、ラジオパーソナリティ歴のある人だったらしいんですよ。そんな条件に当てはまる人物っていうことで、どこかの会議で僕の名前が挙がっていたそうで、「こういう番組があるんだけど興味ない?」ってSORAさんから直接ご連絡いただきましたね。

--SORAさんとのご関係は?

山内:これはいろいろなところで公言してるんですけど、10年以上前かな?コンビニ夜勤の仲間なんです。2人で一緒に品出ししたりしてました。そんな縁があって、それから10年ぐらい節目節目でDEZERTのライヴを拝見させていただいていたんです。個人的にもDEZERTの曲とか歌詞が大好きで。そんな感じで、彼とは毎年何回かは必ず顔を合わせたり食事に行く関係でしたね。僕が以前やっていたラジオ番組にもSORAさんと千秋さんにはゲストで出ていただいたりと、何かと縁はずっと繋がっていたのかなと感じます。そういう経緯もあり、SORAさんが「#V系って知ってる?」のDJに推薦してくださったんだと思いますよ…多分!

--いきなりヴィジュアル系のジャンルに飛び込むことに不安はなかったんですか?

山内:いや、それで言うと自分の中ではヴィジュアル系のジャンルに飛び込むという感覚はなくて、子役の頃からやってきた芸能の仕事の中で、ヴィジュアル系番組のレギュラーDJという新しい仕事が一つ増えたぐらいの認識でしたね。自分は10歳ぐらいから子役として活動していて、俳優やらラジオDJやらイベントMCやらもともと芸能関係の仕事をしてるんです。

--「#V系って知ってる?」は今年の3月まで続いたわけですが、印象的な回はありますか?

山内:それで言ったら全部なんですけど、やっぱり初回は相当プレッシャーがありましたね。DEZERTのSORAさんとキズの来夢さんが出演した回で、hideさんスペシャルだったんですけど、hideさんっていうレジェンドアーティスト特集することに対するプレッシャーは相当でした。

--すごい反響でしたよね。

山内:あと、これは裏話なんですけど、自分はラジオDJとして番組に呼ばれたと思っていたんですが、なにやら番組を立ち上げる仕事自体も僕がやることになってたんですよ(笑)。どうしてそういう流れになったのかいまだにわからないんですけど。ラジオ番組を立ち上げた経験なんかまったくないのに、なぜか僕がやることになっていて。それこそ番組のSNSアカウントを開設するのか?とか番組のバナー画像は?とか。そもそもバナー画像って何それ?みたいなそんなレベルだったので、あの時は番組が始まったことに対する安堵がでかくて、もう頭がいっぱいでしたね。それで、ここからようやくVISUNAVI Japan(旧びじゅなび)の話になってくるんです。

--どういう流れだったんでしょう?

山内:「#V系って知ってる?」っていうラジオ番組は、どうやら”びじゅなび”っていうメディアの番組らしくて。その番組でDJをやる以上は、びじゅなびの仕事も一緒にやりませんか?ってご提案があったんですよ。当時、僕は前の所属事務所であるサンミュージックを抜けていて、しかもコロナ禍とバッティングして芸能だけじゃ食っていけなかったんです。それこそ警備員のバイトを多い時は週に5回6回してることもありました。

--山内さん、警備員大好きですもんね。

山内:やってみたら、人の安全を守る仕事っていうのが意外とやりがいあったのよ(笑)。なんなら今でも週に1回ぐらいやりたいもん。で、当時のことに話を戻しますね。

--話の腰折ってすみません(笑)。

山内:自分としても芸能で収入源を確保しなきゃいけないっていうところもあり、正直なこと言うと深い考えもなしにびじゅなびの手伝いをします!って答えたんです。それがまさか5日後に始まる番組を立ち上げろみたいなことだと思わなかったんですけど(笑)。今にして思うとぶっ飛んでる。いい経験ですね。

--そこからプロデューサーになった経緯も教えてください。

山内:えーっとね、最初はラジオ番組だけをやっている感じだったんですけども、徐々にメディアとしてのびじゅなびのあり方を考える立場にもなってきて、自然と業務が増えていった感じです。それこそ存続させるために興行をやりだしたりとか。そうやって、このメディアの根本を考えることが増えたことの延長でプロデューサーになった感覚ですね。

--指名された感じですか?

山内:そうそう。山内さんがプロデューサーやった方がいいんじゃない?みたいに。

--プロデューサーとしてはどんなことを考えてるんですか?

山内:現代においてポータルサイトの必要性の有無っていうのも問われている気がしていて。ただその中でびじゅなびっていうものは、分け隔てなく様々なヴィジュアル系バンド応援してきた存在として今後も残っていくべきだし、生き残っていかなきゃいけない。そこで厳しい現実を直視すればするほど、ただのポータルサイトではなく未来のために何をしたらいいんだろうっていうことが命題になってくるんですよ。どうやって生き残っていくかっていうのを考えてる。

--具体的にはどういう方法がありました?

山内:まずはとにかくこのシーン全体が盛り上がることを一生懸命考えることが根本にあるんですけどね。具体的に言うと、インタビューやライヴレポートの実施、ライヴイベントで半永続的に続く組織を目指していくのが第一の課題。これはまだプロデューサーになる前ですけど、2023年には主催ライヴを合計3本やったのかな。4月に池袋EDGE、8月に恵比寿リキッドルーム。そして11月にまた池袋EDGE。このブッキングもいつしか僕がやるようになっていったんです。特に2023年11月に開催した「Visual Rock is not “DEAD”003」に関しては、僕が初めてゼロからブッキングしたイベントで。その時出演したバンドもnuriéこそキャリアはありましたけど、ほかは当時ほとんどライヴ経験がない色々な十字架、始動から1年も経たないCHAQLA.、MAMA.、孔雀座っていう正直なところ数字も全く見込めない感じだったんです。


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--めちゃくちゃカッコいいバンドいるから観に来いって誘ってくれましたよね。

山内:そうだったかも。音楽やライヴに光るものがあって、何の確証もないながらにいけるんじゃないかって信じれたんだよね。そしたらそのイベントは想定よりもはるかに多くのお客さんが来てくれて、あの日がきっかけでこのシーンの未来に手応え感じたかな。そこからさまざまなバンドさんと関わりながら、メディアとして将来のビジョンを提言していくことが増えていって、気がついたらプロデューサーになったという感じですね。2024年の2月ですかね。のあか先生(ex.CHAQLA.)と喫茶店にいたときにプロデューサーになったのを覚えてる。そのタイミングで“びじゅなび”から“VISUNAVI Japan”に屋号も改めました。

--プロデューサーって具体的にどんなお仕事をしてるんですか?

山内:先ほども言ったように、VISUNAVI Japanというメディアが長く続いていくようにしていかなきゃいけないっていうのがまず第一ですよね。みんなが大好きなこのシーンをもっと広げていく。ポータルサイトの形式もある程度守りながら、メディアとしてちゃんと独立していくこと考えてますね。そのために独自記事や独自コンテンツをより拡張させていっている最中です。「Visunavi Magazine」やポッドキャスト「Inventions」もですし、2024年4月から立ち上げた対バンライヴ「KHIMAIRA」しかり。

--「KHIMAIRA」も盛り上がってますよね。

山内:イベントはただお金稼ぎをするのではなくて、バンドやお客さん、シーンに寄与できるものは何かというところまで見ていかないと、二手三手先で手詰まりになると思ってたんです。そういう意味で、カロリーは高いけど、毎回のようにスペシャルゲストバンドが登場して、はるかに下の世代と対バンするという構図を成立させる必要があったんだよね。目先のことではなく、将来的に意味のあるイベント作りもメディア主催として始める第一のことだった。もちろん広告収入とかだけでガッポガッポ儲かれば言うことはないんですけど。そんな甘い世界じゃないんで。

--マネタイズは順調ですか?

山内:いやー、こればっかりは答えづらいですね(笑)。順調と言えば順調だし、大変といえばスーパー大変っていうところです。おかげさまでメディアに変貌していくびじゅなびが少しずつ認知され出している体感はあって、2年前と比べると売り上げはもう比べ物にならないレベルまでにはなっているんですが、さっきも言ったようにバンドとお客さん、シーンに寄与するための組織として頑張っていくにはまだまだ全然頑張り足りないなっていうのが正直なところです。まさにこのニコニコチャンネルもそういった力になっていて、会員登録してくれてる皆様のおかげで活動のやりがいになる気持ちと力を与えていただいてます。もっと頑張ります。

--プロデューサーになって印象的だったことを3つ教えてください。

山内:3つ?…難しいなぁ。ちょっと時間ちょうだい。

--楽しいことの方が多いですか?

山内:なんだろう…色々ありすぎて思い出せないです。ただ主催ライヴ「KHIMAIRA」に関して言うと、育っていったイベントが昨年12月にはSpotify O-WESTまでたどり着いたんですけど、目指してたソールドアウトには至らなくて悔しかったな。とは言え、2023年の時点と比べてもお客さんはすごい増えたし、いざライヴが始まってみると、各バンドが凄まじい気力のライヴをしてくださって感動した。


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最後、ステージ上でのアクシデントで救急車が来る事態になってライヴが中断するって終わり方になってしまったので、そこが一番悔いとして残ってるかなぁ。血まみれになったステージと、バックステージでの慌しさ。でもステージでは演奏が続いてるという状態の中で、何をどう判断をするのかっていうのはイベントの責任者である俺に全部問われてるわけじゃないですか。あの状況でライヴを中断して、演者をいち早く救急車で搬送するという当たり前のジャッジをできたことは良かったなと思いますけど。

--そのリベンジをやるんですよね?

山内:そう。今年の12月6日に同じO-WESTであるので、あの悔いを忘れさせる1日にしたいと思ってます。アクシデントで悲しい想いをしたMAMA.とMAMA.のお客さんにとってもね。あの日、色々な十字架もnuriéもCHAQLA.もまみれたも「#没」も「また来年もう1回やろう」って全員一致で伝えてくれて、一年越しにやり返せるのは楽しみですね。出演順も去年とまったく一緒だし。


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--アツいですね!-

山内:あ、あと印象深いこと、ほかにもあった!

--なんでしょう?

山内:立場上、解散が決まったバンドや脱退が決まったメンバーさんからの連絡ってやっぱりいち早くいただくことが多いんですよ。そういえば最近会ってないな、何してるかな?連絡しようかなって思ってる時に限って変な時間にLINE電話が鳴ってくると、もう嫌な予感しかしないんですよね。あ~出たくねーなって思うんですけど、出ると電話口が暗い声で、ああやっぱりかみたいなそういう経験が何度もあって、その度にツラい気持ちにはなります。バンドは取引相手でもあるけど、人と人として信頼して付き合ってるんで、そういう話を聞くと自分の内臓抉りとられたようなとてつもない喪失感に襲われるんですよね。メディアとして本当に力になり切れたのかなとか、その度に自問自答して苦しい思いをしますし、本当に言葉にならずに寝れない日々が続いたりとかする。

--誰にも言えないですもんね。

山内:そうそう。綺麗ごとだけじゃないのもわかってるし、メディアができることの限界も理解しているつもりだから、ツライ気持ちも乗り越えて糧にすることが仕事なのかなと思いますけど。なかなか割り切れないな。

--「KHIMAIRA」についても訊かせてください。自分は「KHIMAIRA」を2回観に行かさせていただいたことがあるんですけど、正直ヴィジュアル系ってこんなかっこいいんだって人生でも感じたことがないくらい興奮したんですよ。

山内:いつ来てくれたんだっけ?

--この前の3DAYSの初日と去年のO-WESTです。

山内:あー。「メリーやばすぎかっこよすぎ!」ってLINEくれたもんね(笑)。

--「KHIMAIRA」成功の秘訣ってなんなんですか?

山内:いや主催者の立場だと、そもそも成功とか失敗って言えないんだよね、正直なところ。それを決めるのはお客さんとバンドだから…っていう模範解答だとたぶんつまんないから、もうちょっと突っ込んだことをここから話しますね。

--お願いします。

山内:どう考えても、池袋EDGEに出るはずのないスペシャルゲストの存在だよね。それがセンセーショナルだったから、「KHIMAIRAに出るととんでもないバンドと対バンできるぞ」っていうブランディングが最初の方から確立できたというのがでかい。イベントに出てくれてる全バンドがカッコいいことは、ブッキングしてる身からすると信じてるんだけど、それが広がっていくかどうかっていうのは運にもかかってたんですよ。だからそういう意味で言うと、これぶっちゃけて言うんだけど、俺にとって「KHIMAIRA」に力を与えてくれたきっかけはやっぱRoyzなんですよ。



・「KHIMAIRA」歴代ゲストのすごさとブッキングの裏話
・大晦日の「RIZIN」
・プロデューサー業と俳優業の関係
・「かっこよければ残っていける時代にしたい」
・ファンに恥を欠かせたくない
・今気になる3バンド…インタビューは会員ページへ続く