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(INTERVIEW:山内秀一、LIVE PHOTO:A.Kawasaki)




--最近よく会いますねぇ。

滅多刺しひろくん:そうですね。まみれたとの2マンツアーの浦和ぶりです。

--なかなかに異様な2マンでしたね。OAの第Ø地下室も含めて。

滅多刺しひろくん:そうっすね。

--鮮血A子ちゃんとしても相変わらず狂気しかないなかにも、ライヴがブラッシュアップされてる気がしたんですよね。

滅多刺しひろくん:ありがとうございます。でもそんな風に感じる余裕は全然なかったです。色々含めて。今回捕食されたのは自分です。完全に飲み込まれた。関係ないですけど横浜行く時ツイキャスで死ねって叩いてきた人、道案内してくれた人、ホームレスのおっちゃん色々ありがとうございました。すみません、えーっと何の話でしたっけ。

--ツアーはどうでした?

滅多刺しひろくん:もちろん学びや課題といった収穫はありました。でも大袈裟な話。電車移動する事に命を賭けるみたいなのが自分は多くて。せっかく意義のある2マンなのに、自分の事で精一杯でした。あとメンバー間での喧嘩。まぁ毎度の事ですけど。

--バックステージでも、ひろくんがいつになくよそよそしくて(笑)。わかりやすいなぁ~と思って見てましたよ。喧嘩の理由は?

滅多刺しひろくん:察してください。あとで山内さんには教えます(笑)。まぁでもとにかく「ステージでダセぇことしてるんじゃねえよ」ってメンバーに喝を入れられました。

--ひろくんがキレてる側じゃないんだ。

滅多刺しひろくん:いやあたしも逆ギレします。だからメンバーもある意味であたしよりもあたしっぽくなってたっすね。超えてきた。でも、それがいい方向にいくわけじゃなくて…全部駄目になっちゃうんですよ。自分のせいなのかもしれないんですけど、どうしてそうなるのかわかんない。仲良くやりたいです、みんなと。バンドが解散するんじゃないかとか、誰かが脱退するんじゃないかっていう危機に直面して、毎回泣いてたし、毎回怒ってたし、毎回イライラしてたし、毎日消えたかった。でも、メンバー、楽屋に居た全ての人に感謝です。

--最初の3本は険悪だったって話だけど、ファイナルは空気が違った?

ひろくん:最終日だけ、まみれたのアンコールに乱入したんですよ。

--そもそも、まみれた自体がよほどのことがないとアンコールに出てこないですよね。

滅多刺しひろくん:自分たちの本編で、「教えて」っていう、まみれたで今一番好きな曲のカヴァーをしたんですよ。その流れもあってか、伐さんがアンコールの「終日終わり」のときに「ひろくん、おいで」ってステージに上げてくれたんです。それで“道を開けろ!”ってフロアを割って。あたしはてっきり伐さんがフロアでブレイクダンスするのかなと思ってたら、自分のために開けてくれてて、あれはウエディングロードでしたね。あたしも暴れて、伐さんもダイヴしてきて。そのあとに「ひろくんの好きな曲やっていいよ」って「死因:被害妄想」まで歌わせてくれたんです。歌ったというか叫びまくって、脳内がトランスしまくりました。

--「死因:被害妄想」はひろくんのフェイバリットですもんね。

滅多刺しひろくん:ステージでもずっと泣いてて。伐さんが「ひろくんはこういう人間だから。でも、それでいいんだよ」って。

--とりわけ狂った2バンドが集まって、ハートフルな空気になっちゃうあたりが興味深いです。

滅多刺しひろくん:普段は誰かれ構わずぶっ殺してやるって気持ちでやってるんです。だけど、初めて誰かとツアーを回ることや会話することの意味を感じましたね。

--尊敬するまみれたとだからでしょうね。

滅多刺しひろくん:そうですね。他のバンドとそうなることはないですから。全員敵だと思ってるんで。自分がまさかこんな感情になるのかって知れたのがツアーの収穫ですね。成長って言っていいと思います。

--ちなみに、ひろくんにとっての“敵”って?

滅多刺しひろくん:有象無象の通行人っすね。だって、渋谷とか新宿歩いてて、別にわざわざ誰かに絡んだりしないじゃないですか。でも、味方じゃない。それと同じ感覚です。

--バンド内では普段から、どんな話し合いしてるんですか?A子ちゃんの場合って。

滅多刺しひろくん:これ本音で言っていいんですよね?

--もちろん。

滅多刺しひろくん:他のダサいバンドの悪口とか、全く音楽に関係ないアニメ、エロゲーの話とかゲーム、ギャンブルの話だとかをしてます。そういう会話に収集をつけてくれるのは、あさひなんですけど。想像できますよね?

--まぁ(笑)。

滅多刺しひろくん:すっげー、DMに殺害予告とか来るんですよね。それに対しての悪口も言ってます。メンバーからは「ひろくんも同じことやってるから、言い返す資格ねえぞ」って言われますけど。そういうのでまた口論になる。で、まみれたとの話に戻るんですけど、一緒にツアーを回ったことで思ってのは、マジでバンドって生半可にやっちゃいけないんだなってことですね。音楽って絶対だなって思いました。



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--改めてそう感じた、と。

滅多刺しひろくん:毎日、普通に死にたくなりますし、つらいです。今だって正直逃げ出したい。自分が、何言ってるのかわからないし。正直今も泣きそうです。でも、表に立つ人間っていうのはそういう何もかもを犠牲にして生きなくちゃいけないんだってことは身に沁みました。それがたとえフェイクでもリアルでも、自分の本質を絶対に全部出さなきゃいけない。それを学びました。

--OAの第Ø地下室は、ひろくんの目にはどう映りました?

滅多刺しひろくん:歌うめえ、やべえってみんな言ってました。俺ら勝てねえって。

--ひろくん的には珍しく好きになる存在なんですね。

滅多刺しひろくん:そうですね。好きな人しか好きじゃないんですけど、第Ø地下室は好きです。

--好きになるものとそうでないものの違いってなんなんでしょう。

滅多刺しひろくん:うーん、理由はいらないと思います。CDをジャケ買いするのに理由がないように、感覚なんじゃないですかね。ビビッと来る感覚。まみれたもそうです。内臓に逆回転をかけた存在がまみれただっただけ。


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KHIMAIRA vol.9 2025.06.15  EDGE IKEBUKURO


--なるほど。ここからは滅多刺しひろくんの半生を伺っていきたいと思います。

滅多刺しひろくん:有料級の話しかしません。

--お気を遣わず(笑)。では、まずは家族構成から聞いてもいいですか?

滅多刺しひろくん:えっと、オトンとおかん。妹とあたしの4人家族です。

--ご出身は?

滅多刺しひろくん:おかん曰く生まれは徳島県らしいんですよ。でも、保育園のときにはもう松戸でしたね。それで、小学校に上がるときにいろいろ問題が起きるんです。と言うのも、入学に際してIQテストみたいなのがあるんですけど、その結果で自分に障がいがあることがわかるんです。それで、教頭先生に普通の小学校じゃなくて、知的障がいがある人が集まる学校への入学を勧められました。

--普通の公立小学校に進むのにIQテストがあったんですか?

滅多刺しひろくん:そうですね。全員ありました。積み木をどうこうして知能を計るみたいなやつだったと思います。そのあたりはもう記憶がぐちゃぐちゃで、積み木だったのかどうかも正直あやふやなんですけど、そんなことがあった気がするんですよね。

--それ、本当に全員そのテストを受けたんですかね。

滅多刺しひろくん:あぁ……なるほど。もしかしたらそう言われてただけで、はじめからターゲットにされてたのかも知れないですね。その視点は今までなかったっす。選別は始まってたのかな。でも、今思えばなんですけど、その教頭先生すげえなと思います。その時から見抜いてたんだって。

--小学生時代はどんな子でした?

滅多刺しひろくん:これが今から想像もつかないタイプの人間だったんです。

--どんな風に?

滅多刺しひろくん:ものすごく優秀でした。勉強はできなかったんですけど、水泳もなんかしらの大会で結構いいとこまでいったし、サッカーでも市の選抜に選ばれたりしてました。

--たしかに意外です。ポジションどこでした?

滅多刺しひろくん:ゴールキーパーです。キーパーもやれたし、ボランチもやれましたし、なんならフォワードもやれます。サッカーは万能でした。

--水泳とサッカーはクラブとかに入って習ってたんですか?

滅多刺しひろくん:チームに入ってたとかじゃなくて、学校の中でうまいから選抜されたみたいです。単純に休み時間にサッカーやってたら、上手いなって思われたみたいで。大会に出るときはキーパーだけど、他校との練習試合では顧問から言われてフォワードをやることもありました。球蹴って、ネットに入れるだけなんで簡単ですよ、あんなもん。

--じゃあ小学校はなにもなく過ごせたんですね。

滅多刺しひろくん:いや、それでも奇行があったと思います。のちに中学校に入って医者から正式診断されるんですけど、多動症なんですよ。でも、多動症が功を奏して、フォワードのときは誰にもパスを出さない代わりにめちゃめちゃ点を決めてました。ADHDの人はみんなサッカーやった方がいいと思いますよ。

--友達は多い方だったんですか?

滅多刺しひろくん:いや、自分が友達だと思ってただけかもしれないです。なんか後から知った情報だと、自分のことをすげえ殺したかったっていう話も聞いたことあるし。みんな多分俺のこと殺したかったんだと思います。

--じゃあいまだに連絡取る友達とか1人もいないんですか?

滅多刺しひろくん:小学校ではいないですね。中学校だったら自分と同じような精神病みたいなヤツが何人かいますけど。サッカーのときなんて、なんでかわからないですけど、先輩にスパイクの裏でバコって殴られたりしてましたもん。

--えぇ!?

滅多刺しひろくん:「お前、鼻くそほじってんじゃねーぞ」ってなんかリンチされました。サッカーのスパイクの裏ってめちゃくちゃ危ないじゃないですか。でも、そんなことおかまいなしで。

--今日はツラいことも聞くことになってしまうと思うんだけど、それって理由は思い当たります?

滅多刺しひろくん:自分がなんか有名なブラジルの選手と同じスパイクを履いていたみたいで、それが生意気だった思われたらしいです。はっきり言っていじめられてましたね。

--年下なのにサッカーが上手いのが目の敵にされたのか…。

滅多刺しひろくん:あ、いや、違うと思います。人間性とか性格に難ありだったし、シンプルに見ててウザいって思ってたんじゃないですか?多分みんなそうだと思うんですけど、いじめられてる人って、なんで自分がいじめられてるかって解らないんじゃないかな。あたしも今もわかんないです。

--ご両親的にはなんとかご子息が普通の学校に入ったわけですけど、学校生活についてはどんな感じで関わってました?

滅多刺しひろくん:自分がちょっとアレな子って言われたからか、そんなに厳しいことは言われなかったです。女の子を殴るなとか、授業中に発狂して席を立ち上がるなとかそんな感じ。発狂して席を立ち上がるなは守れなかったんですけど。勉強をやれとかそういうのはなかったですね。犯罪さえ犯さなきゃいいよって思ってたんだと思います。


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