東京の服装のままで子供達と庭で遊んだからです。体は素直に寒いと分かっていましたが、「もうちょっと」という心がいけなかったようです。
ソフトブレーン創立20周年の記念行事もあって私は東京 - 札幌 - 大阪 - 上海 - 北京の順で巡回してきました。それぞれの行き先で古い友人と会うのは楽しみですが、お天気だけはなかなか把握する余裕はありません。しかし、着いてからすぐ着替えるという簡単な対策で風邪を引かずに無事に乗り越えました。
家族の待つ北京自宅に戻ってから風邪を引くとは完全なる自分の安心感によるものです。安心して着替えなかったからです。企業では、若い社員が風邪を引くと上司の方がよく「気が緩んだからだ」と叱りますが、フリーターの私は自分で自分を叱るしかありません。
お天気は変えられません。我々個人が着替えることでその変えられない天気に対応するしかありません。しかし、ビジネスとなると多くの人はこの単純な理屈を忘れてしまいます。
景気はいつどうなるか分かりません。誰がリーマンショックを予想できたでしょうか。政治はいつどうなるか分かりません。40年間も棚上げしてきた小さな無人島がなぜ急に経済にショックを与えるのでしょうか。
最初は理不尽と思ったり落ち込んだりしますが、よく考えてみればこの問題が起きなければ別の問題が起きるのです。景気と政治もお天気と同様にいつどうなるかはまったく分かりません。我々個人が唯一できることは素早く着替えることです。
長年、自分の会社を経営しながら経営コンサルタントをやってきましたが、良い企業と良くない企業を見分ける簡単な方法があります。なぜか良い企業ではあまり景気の話をする人がいません。政治の話も話題にしません。逆に業績を景気と絡める会社はだいたい良くない会社ですし、政治について熱く語る経営者はだいたいやる気のない経営者です。
良いビジネスマンは政治や経済に鈍感ではないのです。むしろ敏感だと思います。しかし、彼らはその政治と経済の環境はお天気だと捉え、文句や言い訳をするのではなく、自分が素早く「着替えること」で対応しているのです。人によってはそれをチャンスとして捉え、長期的な戦略に活かす場合も多々あります。
「人は世界を変えるために生きている」とアップル創業者ジョブズ氏が言いましたが、それは奔放な彼の語り口であり、彼流の世界観であり、大いに尊重します。しかし、もしこの言葉がヒトラーの口から出てきた場合、あなたはぞっとするでしょう。
ジョブスが現在のアメリカではなく、中世ヨーロッパや文革期の中国に生れたらとてもそんなことは言えないはずです。
我々ビジネスマンは世界を変えるために居る訳ではありません。我々が世界を変えることはできないし、変える前に自分を変える努力すべきです。個人にとってマーケットは変えられません。政治は変えられません。経済は変えられません。それぞれの個人の思惑と立場と価値観が異なるからです。
結婚している方なら分かると思いますが、我々は一人の異性の性格さえも変えられません。変えようと思ったのは若い頃の無知に由来した妄想です。ましてや部下を変えるなんて妄想中の妄想でしょう。
お天気は変えられませんが、着替えることで対応しましょう。