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オンリー☆ローリー!〈2〉 Vol.15
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オンリー☆ローリー!〈2〉 Vol.15

2014-04-14 18:00
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     それからは特に話が弾むこともなく、料理に集中した。すべてのメニューがきっかり午後六時にテーブルに並ぶと、沙羅も仕事部屋から出てくる。
    「いつもよりちょいと早い夕食だわね」
    「崇城さんをあまり遅くまで引き留めてはいけないしね」
     三人揃って着席。零次はパンッと両手を合わせた。いつもはこんなことはしないのだが、崇城がいるので格好つけてみたかった。
    「いただきます!」
    「……いただきます」
     崇城が酢豚を一口。もくもくと咀嚼し、こくりと飲み込むのを見届ける。すると彼女はほんの少し笑った。
    「どう? 味は」
    「まあ、普通に美味しいわよ」
    「それはよかった! おかわりはあるからどんどん食べて」
    「でもこれなら、私が勝つ自信があるわ」
    「あ、そういう意味で笑ったんだ……」
    「委員長さん、料理が得意なのね。魔法の修行ばかりしてたわけじゃないんだ」
    「充実した食事が戦いを支える……と母から教わったので」
    「そのとおりだね。知り合いのクリエイターで、自炊ができないもんだから毎日レトルトってのがいるけど、体悪そうなんだ。そのうち、仕事どころじゃなくなるよあれは。あたしは零次がいてくれて助かるわホント」
     崇城はもう味のことは何も言わず、淡々と食事を進める。そこで零次は閃いた。
    「勝つ自信があるっていうなら、崇城さんの料理を食べてみたいなあ」
    「お断りよ」
    「どうして?」
    「私が料理を振る舞うのは、仲間に対してだけよ」
    「そっか。じゃあ仲間と認識されるように頑張るよ」
    「何を頑張るっていうの!」
    「だからエターナルガードの使い道を研究するんだって」
     そう、まずはそこから。雪街の指令を遂行しなければならない。
     自身の体に埋め込まれた、あらゆる攻撃を防御する魔法の玉。はたしていかなる応用が利くのだろうか。
     いっそ、この姉に意見を聞くのもいいかもしれない。エターナルガードのことは、崇城を招いた理由とともに最初に説明しておいてある。ゲームクリエイターならではの発想を期待してみたい。そう言うと、沙羅は数度首を捻って、やがて口にした。
    「たとえばさ、ふたりがお手々繋いでたら、委員長さんにもその効果が共有されるってことはあるの?」
    「おお、考えたこともなかった」
     これを口実に手を繋ぐことができる? 甘い想像はすぐに顔に出てしまい、崇城はしかめっ面をした。
    「あくまで深見くんを守るためのものでしょ? そんな都合のいい話はないと思うわ」
    「いや、試してみないことにはわからないよ! 他にも思いつくかぎりのことを試して、雪街さんに報告しないと」
    「むぐぐ……!」
     憧れの上司である雪街の名前を出せば、たいていの場合押さえ込みが利くらしい。この調子だ、と零次はほくそ笑んだ。
     食事は滞りなく済み、デザートのゼリーとコーヒーで締め。崇城はいろいろ思うところがあるだろうが、自分としてはひとまず及第点。零次は三人で囲む食卓が、とても心地よかった。
    「にしても、メルティ先生は本気で零次を守ろうとしてくれてんだね。ありがたい話だわ」
    「どうでしょうね。エターナルガードにだって、弱点はあるかもしれない」
     ツンと唇をとがらせる崇城。今度は味の感想も言ってくれない。
    「でも拳銃だろうと大砲だろうと効かないんでしょ?」
    「あくまで物理的な脅威を防ぐというだけで……あ」
    「どうしたの?」
    「そうよ。エターナルガードの活用法だけじゃなくて、弱点も調べるべきだわ。万が一のことがないように!」
     零次の背筋に寒気が走った。
     崇城の顔に、なんだかいじめっこのような意地悪いものが張り付いている。
    「明日から、いろいろ試しましょうね。思いつくかぎりに深見くんを責め抜いてあげるから。うん、このゼリーはなかなか美味しいわ」
     いかにも機嫌よさそうに、彼女は反撃開始を宣言した。
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