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木野龍逸のメールマガジン ニッポン・リークス
サンプル号
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こんにちは、木野龍逸です。突然ですが、メルマガを始めることにしました。「どうして急に?」という方もおられましょうが、ひとことで言ってしまえば、取材活動を継続するための資金確保が目的です。はっきりしすぎていて、すみません。これまで3年間、「キノリュウイチ支援の会」への寄付金に支えられてきましたが、さすがに事故から3年が経つと情勢は厳しく、生活もままならなくなってきました。
そこで一念発起といいますか、2年ほど前から「メルマガをやらないのか」と複数の友人から聞かれていたことを、ようやく実行に移すことにしました。今までは、支援の会もあるし、なんとか無料で情報を出し続けられればと思っていたのですが、会見で得られる情報が限られてきたこと、オフサイトの問題が拡大の一途をたどっていることなどから福島に行く機会が増え、体制を立て直す必要に迫られました。
またツイッター等でもメルマガを要望する声が以前からあり、ぼくの情報を必要としている人たちに向けて定期的に発信する方法としてはいいのかもしれないと考えることにしました。有料にはなってしまいますが、自分にもタガをはめる効果があると思っています。当初は月に3回、毎月10日、20日、30日にメルマガをお届けしていこうと思います。加えて、突発的な事態があれば、臨時便を発行する予定です。何卒よろしくお願いいたします。
メルマガのコンテンツは、以下のようなものを予定しています。
(1)東電原発事故のトピック
福島第一原発のオンサイトの情報を中心に、原発事故に関わるさまざまな問題を掘り下げていきます。オフサイトに関しては、避難、賠償、健康診査、東電の枠組みなどについて追いかけていきたいと思っています。
(2)原発ニュースにひと言
原発関連の報道について、気になること、報道が伝えていないこと、報道の裏側にある疑問点などを、簡単に解説していきます。自著「検証 福島原発事故・記者会見」でも時々書いていますが、会見で説明される内容と記事の内容にズレがあることがあります。ぼくなりの視点で、報道から見えるものをひとことコメントで紹介していきます。
(3)原発事故Q&A
みなさんからの質問に、できるだけわかりやすく回答していきたいと思います。こんなニュースがあったけどどういう意味なのか、こんなことが気になる、会見には何人くらいの記者がきているのか、毎日なにを食べているのか等々、質問、おまちしています!
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「発刊によせて」
事故から3年が経ちましたが、状況は一向に改善していません。にもかかわらず、東電が会見で出す情報は少なくなり、質問に対しては「現場に負担がかかる」という言葉で回答を拒否することも増えてきました。
一方で原発事故は、被害の全容がつかみにくいほど、大きな影響を及ぼしています。先日、ある大学の教授に、学生の関心はどうなっているかを聞いたところ、「関心は低下しているが、それより、何が問題なのかがわからなくなっている」と言っていました。この言葉は刺さりました。
実は原発を取材しているジャーナリストの共通認識が、これです。いま現在、何が問題になっているのかが、非常に見えにくくなっています。理由は簡単で、影響の範囲が広すぎることです。
オンサイトでいえば汚染水の問題があり、作業員の被曝問題があり、それに伴う人員確保の課題があり、はたまたロードマップの実現性の疑問があります。東電については、組織を維持するための枠組みがいまのままでいいのかどうか、社員のモチベーション、質に問題はないのか、人は足りているのか、資金はどう使われているのかなど、今後の事故収束活動に関わることで情報が出ないものが山のようにあります。そもそも私企業という今の形で事故収束作業ができるのかどうか。
政府については、福島第一原発の事故調査が中途半端になってしまっていること、調査に関する情報開示ができていないこと、事故収束作業への関わり方が中途半端で責任の所在が不明になっていることなどが浮かびます。
そしてオフサイトの問題では、避難の問題、放射能と健康の問題、除染、賠償など、どれをとっても政府、東電、地元自治体、被害者の状況が絡んだ複雑な背景があり、問題点を説明するのは容易ではありません。
まさに3Dで問題の糸が絡み合っているなか、ひとつのテーマに特化した取材からしか本質を暴き出せないものはあります。けれども、それと同時に、今後は被害の全体像を明らかにしていく作業が必要になっていきそうです。いったいこの原発事故は何をもたらしたのか、これから何が起きるのか−−−。
日々の報道を見ているだけではつかみにくい、全体の動きをフォローし続けることが、原発事故の本質を見失わないためのポイントだと思います。
こうした被害の全容を、できるだけわかりやすく伝えていくことが、このメルマガの狙いです。奥の奥まで暴くとなると、ぼくの力の及ぶところではありませんが、あまり専門的にならず、わかりやすい解説を心がけたいと思います。疑問質問がありましたら、どんどんお寄せください。ご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
2014年6月吉日
木野龍逸