菊地成孔さん のコメント
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<1月15日(月)>
「まだ多い」というお声を頂戴した。「多すぎるなら、好きなだけ読んで、あとはホカしておけば良いものを」とも思うのだが、退行し切った世界では、満足している者は黙って与えられたものを貪り、不満な者が声を上げる。要するにおむつが濡れているのであるが、まあまあそれは仕方がない。退行は人間の進化かもしれないのである。
ただ、おむつがどう濡れているのかが、そういえばずっと僕の謎であった。お菓子は山盛りなのに。
1)読んでも内容がわからない(わかる奴がいると思うと要らぬ劣等意識に苛まれる)
2)読みきれない(速度が。とかもあるが、そもそも文章が入ってこない。これも「スイスイ読み切ってしまう奴がいると思うと要らぬ劣等感に苛まれる」)
3)読めるし、面白いが胃もたれてしまう(「一回につき、トピック一個でお願いします」という、具体的なリクエストもあったりして笑。
この 3 つあたりが、僕の足りない脳で考えて、移入できる範囲である。僕が読者だったら、こういう反応は示さない。けれども、市場が僕基準で動いているはずがない笑。なので、フロイドの技法を使って、強く意識的に移入するに。という手法で、だが。劣等感は、 SNS の定着とジャパンクールのリスクとして、昭和の1万倍化している。お若い方には気の毒に、としか言えない。
あとなんか理由がある方は、別に陰性感情ないので、コメ欄に書き込んでほしい。いつだって驚くべき行為に、驚くべき根拠が裏に張り付いていることはある。いずれにせよもっと短くする。3000書いて(一気に書くと大体そのぐらい)それを1000にするのは、何かとても、新しい行為だ。
今、ちょうど黒澤の「椿三十郎」を見終えて、続きが見たいと思うようにできているわけだが、黒沢は作らなかった。理由は「大量の出血を、欧州の客に残酷だと責められたから」である。おそらくこれは真相だ。口あんぐりである。欧州にも、黒澤にもだ。
僕もそう思いますよ。長いだけならゆっくり読めばいいので。でもそれ言ったら、完全なホスピタリティは「全員がよくわかることだけを書く」ことになって笑、僕それ無理です笑。っていうか、誰がそれをできるの?笑 音楽の話が全くわからない人もいっぱいいますよ笑。料理店の話がどうでも良い人もいっぱいいると思います。僕から、何を聞きたいですか?笑
あと、「読み飛ばし」は、<意味がわかるのに、上っ面を読んで飛ばすこと>で、「意味がわからない」ことに「読み飛ばし」もへったくれもないですよね笑。僕だってフロイドドイツ語で読んだら、読み飛ばすこともできません笑。
「わかりにくいことがわかりやすい」と「わかりやすいことがわかりにくい」の待遇というより、僕がずっとしてきたことは「わからなくても面白い」と思える感覚の啓蒙で、これがないと現実社会は生きていけません。わかることだけでできてるのはお菓子の家であって、呼び起こすのは去勢不安ですよね笑。ヘンゼルとグレーテルというか。
今、僕の活動虚しく笑、「わかりにくいと、あらゆる負の感情が起こる(怒りや、劣等感や、焦り)」というギスギスした時代になりまして、歌舞伎も見れないわ、あらゆるアカデミズムの原著に(翻訳であれ)当たれません。ルールのわからないスポーツも見れない。もう僕一人ではどうしようもないので、放っておくしかないんですが笑、いつか「わからないことも面白い」という感覚が生じてくるかも知れません。言語の半分は、わからないためにあるのであって、言語が全てわかると信じている狂った世界がSNSです。
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