菊地成孔さん のコメント
このコメントは以下の記事についています
3月23日(土)
ぺぺトルメントアスカラールのレコーディング疲れが抜けきれないまま週末まで仕事と宿題に対応していたのだが、今日、中国のドキュメンタリー作家、王兵(ワン・ビン)の最新作「青春」という作品を観た。
毎度お馴染み細かいことは書けないのだが、「素晴らしいのは分かっているのだが、どうも王兵は、重いし長いので苦手、、、、」という方々にもオススメの作品である。
何せ、ドキュメント映画に標準装備されている(&特にいつもの王兵マナーである=中国は常にシリアスな問題を抱えているので)「社会的な問題」に対する、重厚な対峙、が、かなり穏やかにスライドし、タイトルにある通り、撮影対象は長河沿岸にあるデルタ地帯の、子供服を製造する町工場で働く、年若い労働者。なので、見応えとして看板に偽り無し、甘酸っぱいぐらいの青春の煌めき。が力強く爽やか、そして何と尺が、たったの3時間!! 革命的に軽い(何せ王兵は、9時間越えする作品がザラではない。というスーパー長尺監督なので)!!笑。
先日「オッペンハイマー」に関して書いた通り、インターネットカルチャーがどんどんショートコンテンツ化しているという状況の前で、地上波のテレビと映画界が、「3時間平均」化している。
「オッペンハイマー」は前述のとおりだが、エマ・ストーンが文字通り体当たり演技で(臨月のまま自殺を試み、失敗した女性が、科学者によって、胎児の脳を移植されて、、、という、原作ありの長大な成長物語)、オスカー受賞おめでとうございます!の「哀れなるものたち」もほぼ3時間だ。
主人公は、<幼児的性欲を、大人の身体のまま貪れる>が故に、パリで娼館の売春婦となり、、、、という流れで、エマ・ストーンが昭和のピンク映画よりボカシが少ない、ハードなセックスシーンを熱演しまくる映画だ(=「体当たり」の所以)。
その後、売春婦仲間にクレオールの共産主義者がいて、売春婦から共産主義者に転向して、幼児的制欲が昇華され、、、という流れは、かなりのベタだと思うけれども、まあまあ、「今風」と申しましょうか、十全にフェミニスティックであり、ハードなセックスシーンが、一応、作り手の狙い通り、とするが(どんなことでも人が欲情を来す可能性はあるので)、エロくはないし、また痛々しくもない。
と、こうした流れの中、王兵が、「自分的には短めで軽い」というベクトルで3時間強、でシーンに合流したのは、いわゆる「逆コース」になるけれども笑。
パスって笑
Post