Design Lions
「ADLAM – An Alphabet to Preserve a Culture」(Microsoft)
西アフリカ全体に居住するフラニ族は、世界最大級の遊牧民族として知られています。彼らが母国語とするプラール語はその独特な文化を後世へと伝える唯一の言語ですが、つい最近まで文字が存在せず、あくまでも口頭で伝達するための手段としてのみ使用されてきました。このままでは文化そのものがいつかは消滅してしまうという危機感を抱いたフラニ族の兄弟、Ibrahima BarryとAbdoulaye Barryは独自にプラール語の文字を開発。教育現場や日頃のコミュニケーションの中で広く普及させることには成功したものの、あくまでも手書き文字としてしか存在していないという課題が残っていました。
そこでマイクロソフトはBarry兄弟と連携し、プラール語専用のフォントを開発。タイポグラフィのプロフェッショナルの力をフル活用することで世界中のPCで使用可能なフォントが完成し、西アフリカでも進むデジタル化の波に対応させることに成功しました。「フォント」というデザイン性の強いものを通じて文化を支えた実績が評価され、グランプリ受賞にいたったようです。
Digital Craft Lions
「Never Done Playing」(NIKE)
Congratulations to AKQA in Sao Paulo, Portland and Melbourne | Grand Prix winners in the Digital Craft Lions for ‘Never Done Evolving’.
Explore all winning and shortlisted work, exclusively on The Work here: https://t.co/7LVO9ntdnm#CannesLions70 | #CannesLions2023 pic.twitter.com/b1CQEdjJ4H— LIONS | The Home of Creativity (@Cannes_Lions) June 20, 2023
圧倒的な実績と一切衰えることのない華麗なプレーで、世界最高のテニスプレイヤーとの呼び声が高いセリーナ・ウィリアムズ。そんな彼女の進化を最新技術で描いたNIKEの事例が見事グランプリを獲得しました。施策の内容としては、1999年にはじめてグランドスラムを達成した17歳時点のセリーナと、2017年に23回目のグランドスラムを達成した35歳のセリーナをシミュレーションし、直接対決させるという前代未聞のもの。
最新のAI技術とシミュレーションを通じて、セリーナが過去に戦ってきた130,000試合分の映像を分析し、17歳のセリーナと35歳のセリーナがそれぞれどのような局面でどのような動きをし、そのパワーとスピードはどう違うのか、そして今と昔だとどちらの方がどういう理由で強いのかを描きました。結果的に1999年当時のセリーナが勝利を収め、NIKEが掲げる「Never Done Playing(生涯現役)」というキャッチコピーを打ち出すことで、いつまでもスポーツと向き合うブランドであるというメッセージをインパクト抜群にアピールしました。
Film Craft Lions
「We Cry Together」(pgLang)
※上記映像には性的な表現やセンティブな単語が含まれています
世界的なラッパーとして知られるケンドリック・ラマーが共同代表を務めるエンターテイメントレーベルpgLangが制作したショートフィルム「We Cry Together(悲しいときも)」の繊細かつ大胆な映像美が評価され、見事にグランプリを獲得しました。暗めのライティングがダークな雰囲気を演出している動画では、終始一定したメロディーの上からケンドリック・ラマーのメッセージの強いラップが乗り独特な世界観が描かれています。ワンカットで撮影された動画内に散りばめられたエモーショナルな表現と、その純粋な映像美が評価され受賞にいたったようです。
Industry Craft Lions
「My Japan Railway」(JRグループ)
Congratulations to Dentsu Inc., Tokyo | Grand Prix winners in the Industry Craft Lions for ‘My Japan Railway’.
Explore all winning and shortlisted work, exclusively on The Work here: https://t.co/7LVO9ntLcU#CannesLions70 | #CannesLions2023 pic.twitter.com/E0IHIWx5LO— LIONS | The Home of Creativity (@Cannes_Lions) June 20, 2023
Industry Craft Lionsにおいては、日本を代表する鉄道会社JRグループがグランプリを獲得。日常生活と深い関係がある電車という存在の起源や、それぞれの駅が持つ文化的な意味を伝えるために同社が開発したのはレトロなデザインが特徴的なスタンプラリー。 歴史的背景について深く考える機会が少ない鉄道という切り口において、手軽にたのしめるエンタメに昇華させたことが評価に繋がったようです。