文香さんは自身のバックグラウンドであるコピーライターの経験をもとに企業やブランドを表す言葉を紡ぎ、その言葉を香りで体現しています。そうした「言葉」と「香り」を組み合わせたそのプランニング手法を「文筆調香」と呼び、文筆調香を活用しながら企業やブランドのアイデンティティとなる香り「Scent Identity」を制作・提供しています。
昨今のニッチフレグランス・個人フレグランスブランドの流行や天然香料への関心の高まりとともに、嗅覚自体の関心が企業・個人において高まっているものの「自社がなぜその香りを選ぶのか?」という必然性に疑問が残ることが多くあります。文筆調香は感応評価として良い香りを選ぶことはもちろん、企業やブランドの文脈に沿ったコンセプトを「言葉」で立案し、そのコンセプトをもとに香りを選択することによって、納得度をもって香りを導入することができます。視覚と嗅覚から企業やブランドの目指すべき姿勢やらしさを記憶に残すことのできる手法として確立したことで、視覚と嗅覚へのアプローチをマーケティングやブランディングでの導入検討している事業者のニーズを満たすサービスとして、人気が高まりつつあります。
今回のプロジェクトでは、渋谷の人気ヘアサロン「LECO」で代表の内田聡一郎氏をはじめ、スタッフの方々へインタビューを行いながらLECO「らしさ」を言葉として落とし込んでいったそうです。LECOの皆さんと生み出したコンセプト「LECOは、きっかけです。」を12種類の天然香料をブレンドすることで香りに昇華させ、LECOが持っている「らしさ」を可視化・可嗅化しています。その結果、顧客はもちろんスタッフたちもLECO「らしさ」を視覚と嗅覚で認識できるようになりました。今回製作したオリジナルの香りは「Chapter One(第一章)」と題し、LECOの店舗受付やお手洗いなどで展開されています。
最近のトレンドとして、嗅覚を意識した施策が増えています。ヘアサロンのケア材はもともといろいろな香りも楽しめるものが多いのに、あえてさらにオリジナルフレグランスの体験をプラスオンする試みはどんな相乗効果をもたらすのか興味深いです。ただ単に「良い香り」ということではなく、ヘアサロンの「らしさ」を言語化し、そこからブレンドした香りを製作。顧客だけでなく、スタッフも含めて、言葉と香りでお店のイメージを共有、定着させるというアプローチがおもしろい取り組みとなっています。