バイオマスが含まれるなどの環境配慮型容器は、脱プラスチックという視点では環境に良い反面リサイクルができず、使用済み容器は廃棄するしかない現状があります。そこで相模原市では、循環型社会に向けての取り組みとして、さがみはらSDGsパートナー企業と連携し、上記のような素材とは異なる植物素材由来の容器を回収、堆肥化し、その堆肥で育った農産物を使ってお弁当をつくるといったプロジェクトによるリサイクルループを完成させています。
実証実験から商品化へは4つのステップを経ています。まずは、2022年5月、Ecoinino Japan株式会社が提供する、プラスチックコーディングやラミネート加工がいっさいない100%植物由来素材の容器を使ったSDGs弁当を相模原市職員生協やサイクルイベントの会場で販売し、原料となる容器の回収を行いました。次に、回収した容器は、造園業のかたわら剪定枝などの堆肥化事業を展開している株式会社ワコーグリーンに堆肥化を依頼。2ヶ月半程度で容器は跡形もなくなり、成分も通常の堆肥と変わらないものができました。そうして完成した堆肥は、市内の生産農家「相模原大ちゃん野菜」の畑に散布。2023年年3月に畑にじゃがいもを作付けし、6月から7月にかけて収穫されました。収穫されたじゃがいもは最初の株式会社セラム・グループに渡り、SDGs弁当の具材に生まれ変わります。弁当の容器はその後同じようにリサイクルの旅へと出発していきます。こうして、堆肥で育ったジャガイモを使ったお弁当(じゃがいもづくしSDGs弁当2種:各800円・限定50食)の販売がされ、弁当の容器は回収されたのちに、ふたたび循環していく予定です。今は回収スキームの構築など、本格的な社会実装に向けてまだまだ課題がありますが、相模原市ではさまざまなパートナーシップにより脱プラスチックや循環型社会の実現を目指すとしています。
容器包装リサイクル法の成立後、一般廃棄物全体のリサイクル率は、増加の一途をたどっていますが、家庭から捨てられる一般廃棄物の排出量は高止まりしている現状があります(※1)。リサイクルのみならず容器包装廃棄物の排出の抑制(リデュース)をいっそう推進する必要があるなか、リサイクルしづらい環境配慮型容器の欠点を見事にカバーし、じゃがいも生産に役立てるというリサイクルループを完成させた相模原市。地元農家との連携で、衰退しがちな農業も支援するという側面からも秀逸な取り組みです。
・※1参照元:環境再生・資源循環「容器包装リサイクル法とは」(環境省)