世界中で話題になっている、アンジェリーナ・ジョリーが「遺伝性」の乳がん予防のために両乳腺を切除する手術を受けたという告白。彼女のメッセージを受けて、果たして自分はどうなのだろうかと考える女性は多いのではないでしょうか。
独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センターの「がん情報サービス」によると、遺伝性乳がん・卵巣がんは家系内に乳がん、卵巣がんなどが多発する疾患であり、2種類の原因遺伝子(BRCA1、BRCA2)が知られていると書かれています。また下記の特徴があるそうです。
1.40歳未満の若い年齢において乳がんを発症する
2.家系内に複数の乳がん、卵巣がん患者が認められる
3.片方に乳がんを発症後、反対側の乳がんあるいは卵巣がんも発症する場合がある
このような条件を満たす乳がんは、全体の5~10%程度と考えられているそうです。日本人を対象とする研究では、本人が乳がんにかかっていて、本人を含む第2度近親以内(きょうだい、父母から祖父母、おじ、おば、孫までの範囲の血縁者)の親族に40歳未満で乳がんになった人がいる場合、両方の乳房にがんができた人や卵巣がんになった人がいる場合にはBRCA1、BRCA2の遺伝子変異の陽性率(遺伝性のガンである確率)は38~46%。。しかし、遺伝子が父方から受け継がれている場合や女性の血縁者が少ない場合などは家族歴がはっきりしないこともあり、遺伝カウンセリングを受けることを勧めています。
そしておそらくアンジェリーナの告白を受けて、この遺伝カウンセリングの項目に5月15日(水)、追記がされました。
遺伝子検査は、自費診療として一部の施設で行われていますが、十分な遺伝カウンセリングに基づいて提供されるべきものです。また、BRCA1/BCRA2遺伝子変異でも、臨床的な意義が不明(発症リスクとの関連が不明)なものもあり、日本人特有の変異がある可能性や、環境要因などの違いにより実際の発症リスクが異なる可能性も指摘されています。
またアンジェリーナがおこなった手術に関する日本国内での実情についても、同日に下記のような追記がされています。
わが国では、現時点で健康な(未発症の)乳房を切除することについて統一された指針はなく、乳がん発症の予防を目的とする健康な乳房の切除は保険給付の対象とはなっていません。
遺伝子検査を受けるか否か......。不安を取り除きたいけれど、もしかすると病に直面するかもしれない恐怖心を考えると、検査を受ける決断を下すだけで勇気がいるものです。
そこで様々な問題を整理・理解するために、独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センターでは、遺伝カウンセリングの専門家に相談することを勧めています。国内での遺伝相談実施施設についての情報サイトは、「いでんネット」などがあるそうです。
病に対する不安は1人で抱えず、専門家に相談し予防や早期発見を心掛けたいもの。他人事ではなく自分事になったとき、こういった機関があることをどうか頭の片隅においてみて下さい。
[独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター, いでんネット]
photo by Thinkstock/Getty Images
(文/編集部・寺田)