『ローズマリーの赤ちゃん』や『水の中のナイフ』『反撥』『赤い航路』『戦場のピアニスト』など、心の奥にある闇を描いたり、スキャンダラスなテーマを扱う鬼才、ロマン・ポランスキー監督。
未成年にわいせつ行為を働いた容疑で今もアメリカに入国できない、といったエピソードもあるポランスキー監督には、「ちょっとお騒がせな変わり者」というイメージがあると思うのですが、彼の半生を描いたこのドキュメンタリーを観ると、壮絶な人生を送りながら、本人は至極まっとうというのか、とても誠実そう。ちょっと意外でした。
映画にしても文学にしても、作品を理解するうえで、監督の生い立ちを知るべき、とは特に思わないのですが、ポランスキー監督の場合は、人生そのものがドラマ。ポランスキー作品のファンならずとも、十分に内容を理解できるし満足できると思います。
彼の人生は波乱万丈ですが、なかでも、幼いころに経験したユダヤ人としての戦争体験は壮絶です。狭いゲットーに閉じ込められる生活、鉄条網を切って逃げ出している間にゲットーの子どもたちがみな殺されたというエピソードなど。それらの個人的な体験が、カンヌ映画祭のパルムドールを受賞した『戦場のピアニスト』に盛り込まれていることを明かしています。
そして、戦後の壮絶体験としては、妊娠中だった2番目の妻が自宅でカルト教団に惨殺されたこと。事件そのもの以外に、マスコミに勝手な憶測であれこれ書き立てられたショックについても語っています。
世間を騒がせた未成年わいせつ事件について語るシーンも。なぜか本人の口から話を聞くと、これまでマスコミ経由の情報だけで判断してきた彼のイメージとのギャップを感じます。想像ですが、女性たちとの浮名があっても、恨まれてはいないんじゃないか。ポランスキー監督には、そう思わせる誠実さや人の好さが感じられました。
戦争を生き抜き、映画監督として生きてきた彼の貴重な証言です。
さらに、同時上映で彼の代表作品の限定公開も。こちらも貴重なチャンスです。
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『ロマン・ポランスキー 初めての告白』[公式サイト]
原題:ROMAN POLANSKI: A FILM MEMOIR
監督:ロラン・ブーズロー
6月1日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムにて6週間限定ロードショー
同時上映 『ローズマリーの赤ちゃん』ニュープリント版、『水の中のナイフ』、『反撥』、『袋小路』デジタルリマスター版
(c)2011 ANAGRAM FILMS LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.
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(文/ミヤモトヒロミ)