子育てが終わった熟年夫婦を襲う、離婚の危機。カフェグローブ世代にはまだ早いテーマですが、熟年世代に限らず、お互いが忙しすぎて向き合っていない、というカップルにはこの映画『31年目の夫婦げんか』から学ぶところが多そう。
主人公の妻が、自分たちは「夫婦」ではなく「労働者が2人で生活して、二段ベッドに寝ているようなものだ」と形容するシーンは、ちょっとドキリとしました。
主人公の熟年夫婦、ケイとアーノルドは、何年も前から寝室は別、夫婦の会話はなし、夫の趣味はテレビのゴルフ番組のみ。意を決してベッドに誘ったケイを夫は「そんな気分じゃない」と一蹴。夫婦関係を見直したいと考えたケイは自分の貯金を解約して、著名なカウンセラーが主宰する集中カウンセリングコースを予約、嫌がる夫と参加する。
最初は口を閉ざし、金のムダだとカウンセラーの粗探しばかりしていた夫も、妻の思いつめたようすにショックを受けて、次第に本心を語り始め、与えられた課題にも取り組むようになる......。
この夫婦、昭和の頑固オヤジと控えめな専業主婦という感じの組み合わせで、自分の両親世代を見ているような親近感を覚えました。ただ、カウンセラーに聞かれたセックスに関する赤裸々な質問に、夫が嫌がりながらもちゃんと答えていたのが意外。カウンセリングの文化が浸透しているんですね。日本ではちょっとハードルが高いかも......。
夫婦を演じるのはオスカー女優のメリル・ストリープと、缶コーヒーのCMでおなじみのトミー・リー・ジョーンズ。大御所2人の演技は、さすがの安定感です。コメディアンのイメージが強いスティーヴ・カレルがカウンセラー役、ということで、コメディっぽい作品かなと思いきや、意外にも真面目路線。
夫婦関係を修復できるか、そのまま離婚するか、という岐路に立たされたときに、どうしたらいいのか。そのヒントにできそうな、夫婦仲を修復するハウツー的な内容も描かれていたのが印象的。離婚の危機に直面しているかもしれない観客に向けた、デヴィッド・フランケル監督(『プラダを着た悪魔』など)の愛情を感じました。
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『31年目の夫婦げんか』[公式サイト]監督:デヴィッド・フランケル
出演:メリル・ストリープ、トミー・リー・ジョーンズ、スティーヴ・カレル
原題:Hope Springs
TOHOシネマズ シャンテ、新宿シネマカリテ他、全国順次公開中
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(文/ミヤモトヒロミ)