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『スレイヤーズ』のファンレターとWEB小説の読者感想欄 〜対談 天酒之瓢×神坂一
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『スレイヤーズ』のファンレターとWEB小説の読者感想欄 〜対談 天酒之瓢×神坂一

2017-02-08 22:30
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    話題作、メディアミックス作品を数多く提供している、小説投稿サイト「小説家になろう」。その「小説家になろう」での連載作品を書籍化した『ナイツ&マジック』が大人気となり、既にアニメ化も決定している天酒之瓢先生が新作を発表します。

    『ナイツ&マジック』後初の新作長編小説となる『ジャンキージャンクガンズ〜鉄想機譚〜』は、四六単行本レーベルカドカワBOOKSより2月10日に発売されます。

    新作では「破天荒な女子主人公が大活躍」することから、『スレイヤーズ』をはじめ、多数の女性主人公作品を手掛けてきた神坂一先生との刊行記念対談が実現!
    WEB小説が存在しなかった時代の貴重なエピソードや、『ナイツ&マジック』の話題から飛び出した二人の意外な共通点など、大いに盛り上がったその内容をお届けします!

    ●WEB小説と横書きの文化

    ──本日はよろしくお願いします。まずは神坂先生にお伺いしたいのですが、ネット上に掲載されている小説、いわゆるWEB小説に対しての印象をお伺いできればと思います。

    神坂一(以下、神坂):その存在や盛り上がりはもちろん知っています。「カクヨム」もですが「小説家になろう」は、名前を知った時にこれはどんなものだろうと調べてみまして、その作品数や分量に驚きました。私は漫画などを衝動買いしては、読むのが追いつかなくなり積んでしまう人間なので、この量からチョイスして読み進めて……と考えると、うん、無理だなと。

    ──では、WEB小説またはWEB小説発の作品は読んだ事はない?

    神坂:しっかり読んだという意味では『ナイツ&マジック』を書籍版6巻までと、WEB版の書籍で7巻目に相当するだろう部分は拝読しました。

    天酒之瓢(以下、天酒):ありがとうございます。

    神坂:それで、書籍版とWEB版で違いがあるのか気になって、書籍の1〜2巻に相当する部分のWEB版も拝読したのですが、あれ、エル君のモノローグがあるなって。

    天酒:実はWEB版の時点から、関西弁は読みにくいと多数のご指摘を頂戴していまして。書籍で世に出す商品ですとなった時に、売り物として見ると厳しいなと。

    神坂:なるほど。他にも書籍版とWEB版で大きく変えた部分ってあります? 例えばキャラクターの追加とか。

    天酒:追加というよりは、キャラクターを含めた全体の整理になるでしょうか。無駄に出しすぎたなというものを1つにまとめたりはしています。僕は増やすよりも減らす方が多い……と思ったのですが、よく考えたら増やしたりもしてますね。後は出番の調整などでしょうか。ただ、WEB版で出番が少なかったキャラクターの出番を増やしたら、それで大変な目にあったなんて事もありました。

    神坂:ああ、それはそうでしょうねえ。

    ──神坂先生は、WEB版を読まれた時に、小説を横書きで読む事に対してはどう思われましたか。

    神坂:一切抵抗がなかったですね。私は小説を書く時に横書きですし。そもそも、小説を書き始めた時に使っていたのはワープロでして、これは横書きなんですね。それに慣れたまま、PCに移行してからもずっと横書きで書いてます。

    天酒:僕も、システムエンジニア出身なので、もともと、文章というと仕様書などの横書きテキストに馴染みがあります。WEB小説を書いている時も、そういうドキュメント的な見方で入っているところがあって、小説としてのフォーマットは意識してなかったかもしれないです。そもそも、小説を書く機会がなかったんですよね。文章といえば学生時代はレポート、社会人になってからは仕様書という風になるので、その感覚が自分の中のデータベースであり、核にもなっていると思います。書いているうちに色々な小説を読み返して、それをフィードバックして修正したりといった事は行うようになりましたが、自分の中でちゃんとした小説の形というものを作り上げるまでは大変でした。

    神坂:私の場合は、自分で書きやすい形が一番良いというのはあって、書きやすくするために、ある区切りまでを声に出してみてみた時に七五調になるというのを意識していますね。これがテンポよく続くように整えるんだけど欠点があって、ゲラで見直した時に重複表現が多いな、うん、変えようとなる(笑)。

    天酒:僕の癖としては、基礎が技術的なドキュメントなので、前提条件や仕様などを詳しく書こうとする傾向がある気がします。

    ──WEB小説作品は比較的柔らかい文体の作品が多い傾向がありますが、天酒先生の作品は硬めな印象があるので、なるほどと思いました。

    天酒:そうかもしれないですね。

    神坂:でも個人的に、ロボ開発会議は大変素晴らしかったです。

    天酒:ありがとうございます。読者からの評判も良かった部分ですね。ロボ開発というより、団体協議がですかね。僕は学生時代に漫画研究会で部誌を作っていた事がありまして。制作も最後の方になると部室にみんなが集まって、椅子を並べてひたすらに原稿を書きながら、ちょっと1ページ手伝ってとか、消しゴムで消しては書きを繰り返したりとか、とにかく大変だったけどもの凄く楽しかったんですよね。その経験がスライドして書かれているところはありつつ、三雲岳斗さんの『ランブルフィッシュ』の影響もあって。直接的な下敷きになっていると言っていいと思います。

    ●ロボット好きと、もう一つの共通点

    ──具体的な作品名が出ましたが、小説を書くにあたって、影響を受けた作品について聞かせて頂けますか。

    天酒:大学後半から社会人になる過程でかなり多忙となり、読書から一時的に離れてしまった時期がありまして、一番多く本を読んだのは10代の頃でしょうか。その中でも『ランブルフィッシュ』と『聖刻群龍伝』は僕の中での直系と呼んでいいかもしれません。ロボット同士を戦わせる競技がある、そのパイロットを育成する、ロボットそのものを作る、そういう要素ですね。好きで読んでいたとなると、電撃文庫の初期作品が多いでしょうか。『ゴクドーくん漫遊記外伝』や『デュアン・サーク』などですね。ゴクドーくんは外伝を先に読んでからスニーカー文庫の本編を読んだりと、少し変わっているというか、マニアックなところがあったかも。『聖刻群龍伝』も外伝に近いですし。

    ──漫画はいかがですか。

    天酒:漫画に関しては、これはロボットがバーンと出てくるものにしか興味が出ないという感じでした。

    神坂:当時のロボット漫画というと……。

    天酒:『BREAK-AGE』に『ガンドライバー』あたりですね。

    神坂:私も好きなジャンルだけど、確かに濃い(笑)。

    天酒:有名作では『ファイブスター物語』も好きです。後は『機神幻想ルーンマスカー』とか。

    神坂:『機神幻想ルーンマスカー』は、『ドラゴンマガジン』の作品ですね。当時の編集者さんたちの顔が思い浮かぶなあ、懐かしい。私の場合は、子供の頃はライトノベルというジャンルそのものがありませんでしたから。雛形というか、スペースオペラなどはありましたけどね。ですから『クラッシャージョウ』あたりですかね。漫画はけっこうあったかな。

    ──アニメの方はいかがですか。

    神坂:『宇宙戦艦ヤマト』に『機動戦士ガンダム』に……。そういえば、『ナイツ&マジック』で、エル君が前世で『ああ、俺の押入れにあるプラモの積みが……』っていうシーン。

    天酒:何かを残していく心残りがそこかよという。あのシーンは共感して頂くというか、わかる、という感想を多く頂けました。

    神坂:実際にプラモデルやる人?

    天酒:実を言えば、本より立体物の方で部屋の空間を圧迫している環境でして。

    神坂:そういう事なら、その道でも私は先達かな(笑)。一つ重要なアドバイスをしましょう。やがて強大な敵が現れますよ。

    天酒:なんでしょう?

    神坂:そいつの名前は……老眼! です(笑)。

    天酒:なるほど(笑)。目もですが、手先もかなり要求される世界ですよね。年々不器用になっていってる気がしています。実は最近は、完成品を買い求める事も増えてしまいました。

    神坂:作れる気になって買っちゃうんだけど、積んじゃうんだよね。

    天酒:買っても作る時間が……というのもありますね。

    神坂:かなり凝るほう?

    天酒:いや、素組派です。なんですが、最近はモデル自体がかなり複雑な構造になっていて、一つ作るのにかかる時間がどうしても増えてしまっていますよね。

    神坂:私もなんちゃって組み立て派なんだけど、素組にちょっとだけ手を加える事をやってたなあ。ガンダム系を作る時は、セピア色の絵の具を仕入れて、これを水でぺしゃぺしゃに薄める。それでパーツ全体にべったべたに塗りこむ。これをティッシュなんかで軽く拭いながら組み立てると、モールドに焦げ茶色が入って、油汚れ風味になるわけですよ。手を抜きつつ、それっぽくは仕上げるスタイル。

    天酒:なるほど。

    神坂:ただ、段々と面倒くさくなって、塗らなくてもいいかなと思いはじめてくる(笑)。

    天酒:最近のプラモデルはもの凄く出来が良いというのもありますよね。手をかけずとも組むだけで格好良くなるから、どんどん手抜きを覚えてしまいます。

    神坂:精度が高いのは素晴らしいけど、1/144でコアファイターを変形させようとか、もうやめて! ってなる(笑)。

    天酒:パーツサイズが指先みたいになっていって。

    神坂:バリかパーツかわかんねえよ! みたいな。

    天酒:うっかり切り飛ばしちゃうんですよね(笑)。

    神坂:プラモデルの積みはでも、大きすぎて積む場所がないとか出てきません?

    天酒:ガンダムだと「デンドロビウム」とか。

    神坂:衝動買いで『宇宙戦艦ヤマト』の「ドメラーズIII世」をアマゾンで注文してしまった事があるんだけど、あまりにも巨大でもうどうしようもなかった。

    天酒:箱がとにかくスペースを食うんですよねえ。

    神坂:しかもアマゾン注文だから、人間でも入ってるのかってダンボールが届いてしまった。速攻で開封して組み立てるしかなかったです(苦笑)。ガンダムだと、マスターグレード(MG)の「ZZガンダム」かな。

    天酒:あれも箱、大きいですよね。

    神坂:説明書を見ながらひたすら作業して、変形機構の仕組みとかこうなってるんだ、へえって楽しさはあるんだけど、左足が出来て次は右足か……となった時に、ふと思い至るわけです。これが賽の河原で石を積んでいる気分か、と。

    天酒:わかります。もの凄くわかります。

    神坂:MGだと、内部構造とか再現してるから、アッガイだったかな、組み終えて完成だ! って思ったらパーツが1セット余ってた事があって。やっちまったって、慌てて説明書を確認したら、内部の動力パイプのパーツだった。うん、別にこれはいいやって(笑)。

    ──お話の盛り上がりから、手間ひまのかかる大人の趣味ということが伝わってきまして、「社会人の主人公が死ぬ間際に積みプラモのことを思い出す」というエピソードのリアリティが実感できた気がします。少し話を戻しますと、やはりガンダムやそれ以外のロボットアニメからは、かなり影響を受けている感じでしょうか。

    天酒:『スーパーロボット大戦』で知識はあるけど、原作を全話視聴したものはあまり多くないというところです。システムエンジニア出身だと言いましたが、時間的余裕のない事が多かったので。昔のロボットアニメは1年分、今でいう4クールものが多いですから、なかなかに難しいところが。勇者シリーズは凄く好きでずっと見ていました。「勇者王ガオガイガー」とか。それぐらいでしょうか。

    神坂:あの頃の作品は、話数を埋める為に入れた消化エピソードとかも多いからね。一気に見るのはしんどいところもある。

    天酒:遊びの要素は必要だとは思いますけどね。1クールや2クールものでも、遊びがあればなあと思う作品も多いです。

    ●読者との交流と、神坂一伝説

    ──小説を書こうと思ったきっかけをお伺いしたいと思います。

    天酒:ある時、書こうと思って書き始めたというのが率直なところです。今の環境って、何かをしようと思った時に、まず目の前にPCがあるじゃないですか。テキストエディタを開けば書ける。

    ──WEB小説を選んだ理由はあったのでしょうか。

    天酒:『ナイツ&マジック』を書き始める前に、一年ほど「小説家になろう」を読みふけっていたんですよ。ランキングの作品なども、今日はこの作品まで読んだから、次はこの順位のあたりまで読むぞって感じで。積ん読の本を一山ずつ崩していくぞという感覚に近かったかな。それで、自分もやってみたいなって思ったんですよね。みんなが小説を書いて、それに対してみんなが感想を書くというやりとりが楽しそうで、僕もそこで一緒にやりたいと思ったわけです。

    神坂:楽しいのは大事ですよね。子供の頃に怪談が好きで、自作などもしたような記憶もありますが、中学生の時に『宇宙戦艦ヤマト』がはじまって、宇宙戦艦が出てきてどうのこうな小説を自分でも書いて、同級生たちと交換して読んだり読まれたりするのが楽しかったわけです。それで、小説家とか漫画家になれたらいいなあって語り合っていた。アホの中学生のお気軽なノリですよ。でもまあ、なれちゃったんですけど(笑)。

    天酒:そうですね。僕にとっても、小説という存在がみんなと一緒に楽しい遊びをするための道具だったんだと思います。

    神坂:書いてみたらキャラが動き出したり、良い台詞を思いついたり、書き進めないと浮かばないものがあって、その感覚が面白くなってくる。私の時代は娯楽の選択肢が少なくて、通学中に持ち運べる娯楽といえば本しかなかった。それだけに移動中にあれこれと考えて、思いつきをお話としてまとめる。それが楽しかった。

    ──実際に読者から感想が書き込まれた時はいかがでしたか。

    天酒:感想って本当に貰えるんだって驚きました。もちろん嬉しかったです。WEB小説では感想欄との付き合い方もそれぞれで、全てに対して個別で返す人、ある程度まとめて返す人、返さない人などがいて、いわゆる全レス派の作家さんはこれは凄い事だなと。

    神坂:私の時はファンレターですね、ハガキが多いわけですが、年賀状という形で返信させて頂いたりしています。個別に一言コメントを添えてということを行っていた時期もあるのですが、ある程度の件数を超えてから、これは物理的に無理だなとなりました(苦笑)。

    天酒:『スレイヤーズ』のファンレターとなると、これはもう規模がちょっと……。

    神坂:当時の私は何を考えていたのか、あとがきで人気投票やりま〜す! なんて企画をしてしまった時期がありまして。……うん、今年用意する年賀状は一万枚か、ということになりました。

    天酒:一万枚……。

    神坂:部屋一つがハガキで埋まりましたね。実家から妹に来てもらって、最終的には妹が半ギレになり、馬鹿なことやらなきゃよかった、調子乗ったなあと思いながらひたすら集計をしていました。

    ──ご自身で集計を?

    神坂:私が勝手にはじめた事で、編集部からの提案ではなかったですからね。それで編集部にご迷惑をかけるわけにはいかない。だから私としては、ネット環境の今ですね、うかつに全員に返信しますとか、それは大ヒットとかしてしまったら待っているのは地獄ですよと(笑)。

    天酒:当時のファンレターを今のネット環境で換算したら3倍では効かないのでは……。いや、そもそもそこまでのヒットが出来るのかという問題が。

    神坂:それでもハガキや手紙はタイムラグがありますから、どこかで冷静になれたりする余裕もあるんです。ネットになると、すぐにレスをしなきゃと思ってしまい、それにまたすぐレスが付き……という話も耳にします。

    天酒:それはありますね。

    神坂:返事があるというのは、それは誰だって嬉しいものですからね。

    天酒:それにしても、部屋が埋まる量のハガキというのは、ちょっと想像が出来ないです。

    神坂:物量って恐ろしい(笑)。

    ●『スレイヤーズ』と『ジャンキージャンクガンズ』。女主人公を描く理由

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    ──天酒先生の最新作である『ジャンキージャンクガンズ』は、ウェスタンな世界観で女主人公アレクサンドラが破天荒に活躍する、ロボットバトル作品になります。主人公を女性にした理由はあるのでしょうか。

    天酒:ヒロインが書きたくないからです。主人公が女性ならヒロインを書く必要がないじゃないですか。

    一同:(笑)。

    天酒:『ナイツ&マジック』が、一応男主人公でしたので、単純に女性主人公を書いてみたいと思ったというのもありますけど。

    『ジャンキージャンクガンズ』担当編集K(以下:編集K):相手役というか、バディ的な存在の男性は登場します。

    天酒:ただ、ロマンスはないですね。そういった部分はフューチャーしていないです。女性ではあるけれど、物語の構造としては目の前に敵がいる。よし、ぶっ潰そう。理詰めの相棒の男はいるけど、これも理屈で相手をぶっ倒す。凄くシンプルですよ。

    編集K:主人公のアレクサンドラは荒野でトラブルを避ける為に男装をしていて、相棒役も当初は男だと思っていたというキャラクターになります。ただ、女性的なシーンも皆無ではないです。お風呂好きみたいなエピソードもあります。

    天酒:性格として女子っぽいところがないという感じですね。目的に対してストレート。そもそも正しい女性なんてものは描けないという割り切りもあります。作品自体がアクションであると、そういう意味ではいつもの僕の作品なのかもしれないですね。

    神坂:私も、女性の気持ちはさっぱりわからないです。

    一同:(笑)

    ──神坂先生は、どういった理由でリナ・インバースという女性を主人公に描こうと思ったのでしょうか。

    神坂:私の時代は、そもそも新人作家ってどうやってデビューするんだというところからだったので。今みたいに多数のレーベルが新人賞やっていますというのもなかった。そんな中で、ファンタジア小説大賞というものを見つけ出して応募しようかと思い、書き始めてみたわけです。最初は一人称でも女主人公でもなかったのですが、途中で見事に詰まりまして。このまま進めても上手く書けない、もっと自分にとっての書きやすさを優先してみよう、そう考えて選んだのが一人称だったんです。その流れで、女主人公でいいかなとなっていった。

    編集K:『ジャンキージャンクガンズ』の企画段階での打ち合わせで、破天荒な女主人公で行くならば、ガウリィ役は欲しいというやりとりがありました。

    神坂:彼に関しては、この男前剣士を何も知らない子にしてしまえば、それを理由に色々な事を説明できるじゃないかと。そういうところもあったんですが、シリーズとして書かせて頂ける事になって、進めば進むほど、『症状』が進行してしまいました(笑)。誕生自体は成り行きで、10代の女主人公、剣と魔法の世界、これは男前の剣士が出てくるだろうという軽いノリ。ただ、それまでの良いとされているファンタジーへの疑問というか、本当にそれでいいのかという考えも持っていて、つっこみを入れるというのかな、そういうところはありましたね。

    ──『ジャンキージャンクガンズ』の執筆にあたって、『スレイヤーズ』からの影響を受けたと感じる部分はありますか。

    天酒:『スレイヤーズ』はもちろん読んでいましたが、実は一番好きな作品は『日帰りクエスト』でして。あの作品も女性が主人公ですね。今思えば、現代から異世界にトリップするファンタジー作品なんですよね。

    神坂:あの作品は、何か書いてくれと言われたけどノープランで、タイトルだけぽんと浮かんだのだったかな。このタイトルは面白そうだと感じて、そこから物語を組み上げていった形ですね。

    天酒:敵側であるギオラムが印象に残っています。段々と敵側の事情が増えていって、ギオラム戦記など、当時は面白いなあと読んでいたのですが、自分が小説を書く側になった時に、敵側の事情って長くなるよね、あれもこれも書きたくなるよねって(笑)。

    神坂:敵側の事情って、書いていて面白くなっていくんだよね。

    天酒:本当に、それは実感します。

    神坂:思う事はですね、『スレイヤーズ』にしろ『日帰りクエスト』にしろ、主人公があの性格で男だったら、これはもう憎いだけだろうと。

    天酒:アレクサンドラも可愛げはないですね。ただ、イラストは予想以上に可愛くなっていました(笑)。

    ──最後に『ジャンキージャンクガンズ』の宣伝をお願いします。

    天酒:「カクヨム」という媒体での連載というお話を頂いて、自分の特色をしっかり出しながらも、新しい事をやりたいという思いはありました。ロボットものは大前提になるとして、そこに色々と特殊な要素を入れていったのですが、ちょっと特殊になりすぎたみたいです(笑)。

    神坂:そういうの、素晴らしいです。

    編集K:1冊の中に、通常の文庫作品で換算すると3巻分ぐらいの分量が詰め込まれています。カドカワBOOKS創刊以来の分厚さの本になりました。ロボットもばんばん出てきますし、内容の密度の濃さも保証します。

    天酒:そんなにばんばん出てきましたっけ、9体ぐらいじゃなかったかな。

    編集K:普通は1巻でそんなに出ないです(笑)。

    ──本日はありがとうございました!

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    【作品概要】
     悪漢を倒せば財布を抜く! 移動手段に困ればゴロツキのロボを奪う! 破天荒なまでに金に汚い少女魔術師にしてロボ遣い――その名はアレクサンドラ。
     22歳のエース賞金稼ぎ・ヴィンセントは超巨大ヒュドラ狩りのパートナーに彼女を選んだのが運の尽き。強さは間違いないが型破り過ぎる彼女に振り回されまくる! けれど、ただ荒稼ぎしたいだけではないようで……。
    「私の全財産をかけて、お前を殺す」
     最強最凶女魔術師の非常識な冒険がはじまる!

    【書籍情報】
    『ジャンキージャンクガンズ〜鉄想機譚〜』
四六単行本(カドカワBOOKS)著:天酒之瓢 イラスト:谷裕司
定価:1200円+税 2017年2月10日発売
    『ジャンキージャンクガンズ〜鉄想機譚〜』作品情報
 http://www.kadokawa.co.jp/product/321610000561/

    『スレイヤーズ』
文庫判(ファンタジア文庫)著:神坂一 イラスト:あらいずみるい

    『スレイヤーズ』特集ページ
http://www.fujimishobo.co.jp/sp/slayers/

    ※記事中の「小説家になろう」は株式会社ヒナプロジェクトの登録商標です。

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