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ガジェット通信「開発者さんのキモチ」取材班です。

ユーザーの中にある「こんなのあったらいいな」というキモチと、開発者のそれを実現したいというキモチが触れ合ったとき、新しい製品・サービスが生まれることがあります。

この企画では、ユーザーさんのキモチに気づいた開発者さんが、どんなキモチで開発に挑んだのかを探ります。

●どんな人が開発しているのか
●ユーザーのどんなキモチに気づいたのか
●それに応えるため、どんなキモチで開発に挑んだのか

この3点を中心に、開発にまつわるさまざまな話をきいてきました。

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今回お話を聞いた開発者さんは、これからの季節を快適に過ごすために取り入れたい、ベルメゾンの汗取りインナー『サラリスト』を担当する千趣会の服部美紀さん。
※ベルメゾンを運営しているのが千趣会。

汗取り機能付きのインナー『サラリスト』の中でも、特に進化してきたのが“大汗さん”シリーズ。毎年リニューアルしユーザーに支持され続ける、その特徴とは? また、最近は男性の汗マナーやケアの意識も変わってきているみたいですよ!

一番の特徴は汗ジミの防止! 「手にとって汗の悩みを解消してほしい」

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服部さんは、入社後、靴やバッグなどバイヤー経験を経て、9年ほどインナーの開発に携わってきました。今はプランナーとして商品の企画や、どんなターゲットに向け企画を進めるかなど、商品のプランニング全体を手がけています。

これから汗に悩む夏が本格的に訪れますが、「汗が他の人より大量」と感じている“大汗さん”は約4割、さらに汗の困りごととして「におい(83.2%)」に次いで「汗ジミ(67.5%)」をストレスと感じている人が多くいることが分かったのだとか。

『サラリスト』の“大汗さん”シリーズの一番の特徴は、汗ジミ防止に特化していること。不意に手を挙げたり、電車の吊革に捕まるときなど、脇汗のシミ、できていないか気になりますよね……。

今年は特に汗取りパッドの大きさを見直しリニューアル。「もっと手に取ってもらえたら潜在的な汗のお悩みを解決できるのかな、と思っています」と服部さん。

ポイントは防水シート 汗取りパッドを「もっと大きく!」の声に応え続ける

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――現在、夏向けのサラッと快適な着心地のインナーは他社さんでも展開していますが、“大汗さん”の一番の違いはなんですか?

服部:防水シートの染み出さない効果というところが一番の強みだと思います。夏用の冷感インナーなどは他社さんでも展開していますが、あまりシミ対策に特化されているわけではなくて、やっぱり着ている間に快適に過ごせる肌着としての基本機能に注力されていると思います。

弊社の商品も基本的な夏用の肌着の機能は備えてはいるんです。その上でさらに、染み出さないという部分に特化した商品なので、そこが一番の違いですね。

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――三層構造は特徴的ですよね。

服部:一番汗をかく部分にパッドがついているんですが、肌に触れる身生地と外側の身生地の間に防水シート(防水布)を挟んでいます。防水シートは、サニタリーショーツなどについているものをイメージしてください。薄い防水シートを挟んで、完全に防水するわけではないですが、きちんと汗を吸い取って表に出ないような構造になっています。これも元々はお客さんのちょっとしたアイデアから生まれたんです。

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※編集部注:肌に触れる面に水をかけて防水性を検証したところ、ビチャッとコップから水をかけても表には染みていませんでした!

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――ユーザーさんのどんな声に気づいて今回のリニューアルに至ったのでしょう?

服部:元々、汗取りパッド付きの商品は歴史としては90年代くらいからやっています。お客さんの声を聞きながらリニューアルや新たなものを開発したりしてきました。

その中で、「汗をとる範囲を広くしてほしい」とか、「まだまだ汗ジミができちゃう」などお悩みの声があり、そこを解消してあげたいなという気持ちで毎年パッドを大きくしています。

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服部:去年も大きかったのですが、買ってくださったお客さんから「やっぱり染みちゃいました」「もっと大きくしてください」という声がまだまだ多かったので、それならできる限り広くしてみよう、と。下にも広くして胸部分にまでかかるようにしました。キャミソールの場合は飛び出しているパッド部分もできるだけ大きくしています。そこが一番のリニューアルポイントです。

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さらに、背中にも汗をかく人のために、“超大汗さん”は背中部分を全面二重構造にしています。

――汗を吸い取る商品はあっても、シミに特化している商品は珍しいですよね。

服部:お客さんの声で、シミに対するお悩みが強いことやニーズがあることがわかってきた結果です。前々からそういうニーズに対応するためにパッド付き商品を展開していたんですが、お客さんが「絶対にシミたくない!」と強いこだわりをもっていることは把握できていませんでした。そこに今は上手くアプローチできていることにオリジナリティがあるかなと思っています。

あと、パッドを前に大きくしているところも独特ですね。

――たしかに、そのパッドの形もあまり他では見られない部分ですよね。

服部:腕を上げた時に脇は前に向くので、汗も前に広がるんだろうと思うんです。だから「前にパッドを大きくして欲しい」、「もっと前にお願いします」という要望が毎年多くて、前方に大きく広げました。

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――キャミソールのパッドは立体的ですね。

服部:そうですね、そこもだいぶ研究した部分です。あまりパッド部分だけを大きく広げてもペタッと倒れてしまうので、立体的に脇に沿うように意識して作っています。

昔はここまで大きくできなくて、少しだけついている感じでした。「脇に沿わせて欲しい」という声が本当に多かったんですが、どうしても飛び出すパッドだと倒れてしまう。でも、ストラップに縫い付ける方法を思いついてから進化しました。思いついたときはめちゃくちゃテンション上がりましたね! 「パッドをストラップにしがみつかせてください! そしたら倒れないんですよ!」ってメーカーさんに電話したのをよく覚えています(笑)。

キャミソールで脇汗パッドがちゃんと起きているっていうのは、昔からしたら考えられないことだったので、改良ポイントとしてはすごく大きかったと思っています。
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少し価格が高くても汗ジミ対策機能は強く求められていた!

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――パッド面積が広くなったり、防水シートが入ったことによって以前よりコストもかかってくるのでは?

服部:簡単な仕様のものよりは、圧倒的に縫製の部分でのコストはかかっています。資材代というより、製作工程が複雑でめちゃくちゃ難しくて、どこの工場でも縫えるようなものではないんです。ずっと作ってくださっているメーカーさんと一緒に成長してきました。だから、複雑でとても工程数は多いものになっています。価格も防水シートが入っていないものよりは300円くらい上げています。

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――それでも作り続けているということは、ユーザーさんからどんな反響があったからでしょうか。

服部:もっと面積は小さかったんですけど、初めて防水シート入りを発売したのが2010年になります。こんなに売れると思っていなかったので、ちょっとしたアイデア商品みたいな感じで、試してみようって出したんです。そうしたら、今までのパッド付き商品より、防水シート入りの方が売れたんですよ。

――その時も価格は少し高かったんですよね?

服部:そうです。当時、防水シートなしの普通のものがキャミソールだと1200円くらいで、防水シート入りのものは1400円くらい。ちょっとしたアイデア商品くらいの気持ちだったのに、そっちの方が売れてみんなで驚きました。やっぱり“染み出さない”というところに強いニーズがあるんだと気付いた瞬間でした。前々からわかってはいたんですけど、こんなに求められてたんだと。

――他にも汗というと、ニオイも気になるところだと思うのですが、ニオイ対策にも対応しているのでしょうか?

服部:シリーズ商品の素材がすべて一緒ではないのですが、それぞれ消臭機能はつけています。消臭の糸を使っていたり、消臭加工をした生地を使用していたり、必ずニオイケアの機能はつけています。

夏の汗にまつわるお悩みはすべて解消できるようにしているので、機能レベルとしては高いと思います。

男性も気にしてる? 若い世代ほど汗マナーに敏感!

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――男性用も反響はあるんですか? 

服部:男性用も今年問い合わせが多くて。メンズでも防水シート入りのパッドが付いているものは2015年に採用しました。それまでは簡単なパッドで、汗のケアはしてくれるけど染み出さないというほどでもない、簡易な機能のものしか作っていなかったんです。

レディースで防水シート入りのタイプが非常に人気があったので、もしかしたらメンズでもニーズがあるのかなと思ってはいました。その頃、同じインナーの開発チームの女性社員が「旦那さんの汗ジミがひどいからレディースの“大汗さん”インナーを着せている」と言ったんです(笑)。それを聞いて、じゃあメンズでも防水シート入りのものをやりましょう、ってなりました。

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服部:やはり、メンズでもよく売れて。簡単なパッドのものよりも防水シート入りのタイプの方が売れていますね。

「高校生の息子に買ってます」、「旦那に買ってます」、「もっと作ってください」など反響があったので継続して展開しています。

――ああ、学生だと制服の汗ジミとか毎日のものなので大変ですもんね。

服部:あと、「思春期だから脇汗シミていたら何か言われるんじゃないかと思って」とか。

――でも高校生って、シャツの下に着るのってためらいそうですけど……汗ジミの方が嫌ですもんね(笑)。

服部:だから「これを着だしてからそういった人の目を気にしなくてよくなったので喜んでいる」という声もありますね。男性本人からのレビューだと、「他にないから嬉しい」、「こんな商品あったんですね」など驚きの声もあります。

世間的に、男性のケアの意識が高まっていて、メンズの汗対策商品も増えているし、売れていると聞きます。インナーを着る男性も最近増えたと思います。前は「シャツ1枚の方がイケてる」みたいな人が多かったように思いますが、最近は20代の男性とか若い方のほうが着ていますね。

――そういった意識の変化があるんですね。

服部:若い人のほうが、汗ジミやニオイなど出してはいけないというような、女性と近い感覚が強いなと思います。実際に驚いたのが、弊社はカジュアルウェアなので夏場にポロシャツの若い男性社員がいたんですけど、下にインナーを着ていたんです。だからスーツでワイシャツとかじゃなくても、インナーを着たりするんだな、って思って。そういう時代になったんだなって驚きました。

「インナーを着たほうがが涼しい」は本当?

――夏場だと重ね着すると暑いかな、という先入観がどうしてもあると思うのですが……。

服部:そういった着心地にもとてもこだわっています。本当にお客さんが快適と感じるものを提供したいという、千趣会の昔からの肌着の文化があって。だから汗ジミ対策はしているんですけど、生地はすごく薄く仕上げていますし、着ていて肌に張り付かないようにしています。あまりストレッチ性は入れていないんですね。やっぱりストレッチが効いていて肌にピタッとフィットすると、体感としては暑く感じる。そのため、ポリウレタンを入れずに、ヒラヒラっとした生地で柔らかいレーヨン混の仕上げにしています。体感としてはむしろ着ている方が涼しく感じるのではないかな、と思います。

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――暑い時期もインナーを着ている方が涼しく感じるという話はよく耳にしますが、やはり着ている方が汗を吸ったりするので涼しく感じるんですか?

服部:実際に体温が下がったりはしないんですけど、蒸れ感があるとベタベタして暑く感じるというのもあるし、不快感もある。すぐに汗を吸収して肌表面を乾かしてくれると、ずっとじわじわ汗をかいていてもあまりベタつきや蒸れ感など不快感を感じずに過ごしていられるのは大きいと思います。体温ではなく感覚的な意味では、着ている方が快適だと感じますね。私は今はもう、インナーを着ないで外に出るのをためらってしまうくらいです。

暑そうって思うかもしれないですけど、一枚薄いインナーを着ておくことで、ずっと吸収してくれるので肌に汗が残らない状態でいられるんです。

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――水を吸うと布は濡れますよね。汗を吸ったものがすぐ乾くイメージがないのですが、そこについては機能としてどうなっているんでしょうか?

服部:例えば綿100%の生地だと、水分を吸う機能は高いですがなかなか乾かない。蒸れ感はないんだけど、速乾性はないのでずっとベタベタ、冷たい感じはする、汗冷えしちゃうということがあります。

でも『サラリスト』の素材はポリエステルを含んでいて、ポリエステルが吸水速乾に優れている機能的な糸なので、すぐ水分を吸って拡散してくれます。インナーとして着ていると湿気が逃げていってくれるので、肌の上の水分を外に出している感覚を体感できると思います。着ているとずっとサラサラしているのは感じますね。

――では、湿度が高い時期はとても良いですね。

服部:日本の夏をイメージすると、そういった機能が必須なんだと考えています。カラッとした南国であればこんなインナーいらないと思うんですよ。日本の夏は湿度があるので、じめじめベタベタするのを解消するにはこういった素材が一番いいのかな、と思います。

それでも重ね着が苦手な人へ!

脇と背中部分をカバーする『汗取りインナー・さっと脱げる ハーフタイプ(大汗さん)』。
http://www.bellemaison.jp/ep/srvlt/EPFB00/EPFB0005/dProdDtlShow?BELN_SHOP_KBN=100&KAT_BTGO=C97073_123_2017_B&SHNCRTTKKRO_KBN=CT[リンク]

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脇と背中部分だけがカバーされており、フロントのストラップのホックを外すことで服を脱がすに簡単に首元から抜き取ることができるアイテム! 通勤中に着用してオフィスについたらサッと抜き取ると、着替えたようにリフレッシュできます。一番汗をかく通勤中の汗を吸わせて出勤後に外してしまえば、快適に業務につける!

他にも、同じく三層構造の汗取り機能がついて、インナーとしてではなく1枚でそのまま着ることのできるタイプも展開中。

みなさんは汗マナー気をつけていますか? この夏の汗対策の参考にしてみてください!

ベルメゾン『サラリスト』特集ページ:
http://www.bellemaison.jp/cpg/category/inner/asetori.html

(ガジェット通信「開発者さんのキモチ」研究室 写真:オサダコウジ 取材:non)

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