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私は鷹だ。
少年世一の叔父の初夢のなかに颯爽と登場し、中空の一角を占めて飛びながら、生命の原義は何か、と世に問う鷹だ。今は醜類と交わりを絶ち、ほとんど俗用にかかずらわずに逼塞して暮らす男を、私は執拗に威圧する。そして彼は、私をひたすら怖れる。宿怨を晴らしたがっている者が姿を変えてとうとう現われたのかと思い、蛙のように大地にひれ伏し、ただただ夜が明け離れるのを待つ。
それでも私は、耳を覆うばかりの迅雷と共に、電界に蓄えられた殺傷の稲妻と共に、一気に彼を襲う。私は彼の背で躍る緋鯉にがっちりと爪を立てる。すると、私を通して雷が彼の胸のうちへと暴れこみ、刺々しい光をぶちまけるのだ。ついで私は、彼がこれまでに犯した罪、証跡が見つからなくて法の裁きを受けずにすんだ罪をも含めた一切の罪に対して、理詰めの談判をする。
私は言う。あの殺人はやむを得ない事由による行為などではなかった、と。また、義気から出た行為でもなかった、と。断じて容認できない、残忍な犯罪だ、と。それから私は、五十年を生きたその体に流れる冷たい血を自らの手で塞きとめ、失敗した半生に決着をつけよ、と言う。男は態度をがらりと一変させ、私がつかんだ緋鯉をひったくって奪い返し、胸につかえた雷鳴を吐き出しながら、世一のためにも生きてやるとわめき、自分の声で飛び起き、窓をいっぱいに開けて私を追い出す。
(1・2・火)
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