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「天が泣いた!」「神かくしに遭いそう!」感動の嵐が巻き起こる源氏の美しすぎる舞 ~ツッコみたくなる源氏物語の残念な男女~
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「天が泣いた!」「神かくしに遭いそう!」感動の嵐が巻き起こる源氏の美しすぎる舞 ~ツッコみたくなる源氏物語の残念な男女~

2016-09-11 14:30
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    9月になりました。残暑厳しい中、朝夕には秋の気配が混じりつつあります。恋愛だけでなく、源氏は『芸術の秋』でも大活躍。今回も源氏18歳の秋から翌年正月にかけての、同時進行のエピソードです。

    「宮のために」心をこめた源氏の舞への賞賛と嫌味

    末摘花との初夜のあと、頭の中将が持ってきた仕事の相談は、上皇へのお祝いのための行幸(帝の外出)についてでした。源氏は頭の中将と組んで『青海波』を舞うことになり、音楽の担当者を選んだり、準備や練習に忙しかったのです。

    お祝いは上皇御所で行われるので、宮中の女性たちは見られません。桐壺帝はそれを惜しみ、ぜひ藤壺の宮に見せてやりたいと、御前でリハーサルを行わせることに。宮中の皆が大注目です。

    秋の夕日のなか、源氏は心をこめて舞いました。誰よりも宮のために…。通常の青海波とは一線を画す内容に加え、想いが込められた仕草の一つ一つが多くの人の胸を打ちます。桐壺帝は感涙。本番まだですよ!

    多くの人が賞賛する中、源氏の母・桐壺の更衣をいじめ殺した弘徽殿女御は「見事ね。あまりに美しいので、鬼神などに魅入られて、神かくしにでも遭いそう」と嫌味。

    彼女は帝が宮と源氏をひいきにするのが不愉快でたまらない。キツイ一言に、側で聞いていた女房たちも(うわ、こわ~い。縁起でもない)と引きまくりです。

    宮は(あの過ちのことさえなければ、もっと手放しでこの舞を褒められたのに)と思いつつ、さすがに感動を隠しきれず、翌日源氏からの手紙に珍しくレス。妊娠後は一度も源氏とコミュニケーションを取らなかったので、源氏は手紙を拝むほど喜びました。

    本番の行幸も大成功。「あまりの美しさにゾッとした」「途中で時雨が降ったのも、天が感動して泣いているのかと思われた」「この世のものとは思えない」。…なんだか映画の予告編のよう。文章で芸術を表現するのは難しいですね。ちょっと見てみたい気も。

    更に、相方の頭の中将については、“源氏が桜なら、彼は山の木”。十分すぎるほどイケメンなのですが、源氏の引き立て役に回されています。

    ともあれ、この成功で源氏と頭の中将は昇進。関わった役人らも恩恵に与り、源氏に感謝することしきりです。帝は「源氏が本当に神かくしに遭っては大変だ」というので、特別な祈祷などをさせています。また弘徽殿女御はイラッ!あなたが怖いこと言うからじゃないかな…。

    「私の結婚相手はお兄さま?」アンビバレンツな紫の君のお正月

    強奪するような形で二条院に引き取られた紫の君は、源氏になついて何不自由のない暮らし。遊びはもちろんお習字から琴、和歌など、習い事もバッチリです。

    紫の君は頭が良いので、教えたことをどんどん吸収し、めざましく成長していきます。「将来は宮のような女性にしたい」と思う源氏は、父親気分を味わってご満悦。紫の君は、宮の身代わりで、源氏の自己満足の道具です。

    それでも、源氏は生活の面倒も見、亡くなった祖母の尼君の法事も行い、乳母も「思いがけない幸運」と感謝。継母のもとで苦労するより、源氏の庇護下で楽しく、のびのび暮らせる方が良かったのも本当。アンビバレンツ。

    そしてお正月。源氏の「あけましておめでとう、1つ大人になった?」の挨拶に、紫の君は「犬君が『追儺(おにやらい)』をするって、お人形のお家を壊したから直してる」。まるで大事件が起きたかのように話します。

    旧暦なので正月は立春、大晦日は今の節分です。源氏はそれも微笑ましく「犬君はおっちょこちょいだね。すぐ修理を言いつけるよ。せっかくのお正月だから泣かないでね」。引き続きお人形遊びに夢中の紫の君に、乳母の少納言はつい小言が出ます。

    「今年は11歳、もうお人形遊びは卒業しませんと。姫様にはご夫君がおありなんですよ」。紫の君はキョトン。「私のお婿さんて、お兄さまのこと?」

    乳母や女房たちの夫はみんなオジサンでみっともないのに、私の結婚相手はあんなにカッコいいんだ。彼女にとって、初めて源氏をパートナーとして認識されたお正月。でも、まだその程度で、源氏をお父さんかお兄さんのように慕っているだけでした。

    「言いたいことが言えない」ますます開く正妻との距離

    同時期、正妻の葵の上はますますご機嫌斜めでした。源氏は出産のため、再び里帰りした宮を追いかけ、左大臣家にご無沙汰。そこに「二条院にお気に入りの女性を囲っているらしい」という情報をキャッチ!

    (自宅の二条院で大事にする女性なら、そのうち正妻にということね)。相手が10歳の女のことも知らず、新たな正妻候補が現れたことに危機感を感じています。

    父は左大臣、母は桐壺帝の妹の皇女。高貴な血を引く一人娘、葵の上の自負とプライドは大変なものでした。血筋では源氏に負けないという気持ちから、「私が一番、大事にされないのは許せない」

    更に、結婚当初からずっと「自分が4歳年上であることが恥ずかしい」。源氏は年上好き。7歳上の六条、5歳上の宮など年上の相手が居並ぶ中、4歳上の葵の上の年齢については気にしてないのですが…。

    思いを言葉にするのは大変ですが、葵の上はことさら、それができない人。かと言って、素知らぬふうで穏やかに接することもできない。溜めこんだ気持ちで場の空気がいつも重苦しくなります。

    源氏は(一言「二条院の方ってどんな方?」と聞いてくれたら話すのに)。自分で思い込んで不愉快そうな彼女が嫌で、いらない浮気をし、ますます不快がらせてしまう。我ながらどうしたもんかと思っています。

    葵の上同様、源氏も父帝から愛され、周りにチヤホヤされて育ち「自分は何をしても許される」思い上がりがあります。彼女が不快そうでも、下手に出てご機嫌取りをしたり、浮気をやめようとは思いません。

    それでも葵の上は一番最初に結婚した人。あちこち浮気しても、奥さんは別格です。心のなかではそう思っていても、一緒にいたくない。

    最初からギクシャクしていましたが、ここへきてまた距離が開く2人。でも、意外と「夫にだから」「妻にだから」こそ言えないことってあるのかな、とも思います。

    着替えを手伝い、お年玉まで…甲斐甲斐しすぎる義父・左大臣

    ここへ来て切ないのが、葵の上の父・左大臣です。彼も二条院の女性の件を聞いて、いい気分ではありませんが、いざ源氏が来てくれると嬉しくて大歓迎します。

    お正月、左大臣は源氏の着替えを手伝い、くつまで履かせかねないほど甲斐甲斐しくお世話。更に男性の正装には欠かせない石帯(飾石をつけた革製のベルト)のお年玉。

    源氏が「これは素敵ですね。宮中のパーティーの際に使いますね」とお礼を言うと「いえいえいえ!これはちょっと珍しいだけですから、その時はもっと良いものを」。ベルトを早速着けてあげます。お義父さん、甲斐甲斐しすぎ!

    左大臣は源氏のお世話が生き甲斐で、ごくたまにしか来なくても、源氏のような優秀な婿がうちに出入りするだけで嬉しいように見えた、とあります。お義父さん、左大臣なのに。超エライ人なのに。生き甲斐って。

    自分の娘はほったらかしで、他の女に走るような婿のどこがそんなに可愛いのか、と思いますけど、それもこれも、娘夫婦がうまくいってほしいという切なる願い。

    でも、葵の上は「あんなことまでしなくても」と苦々しく思っていたのでは。なんというか、世の中うまくいかないものですね…。

    簡単なあらすじや相関図はこちらのサイトが参考になります。

    3分で読む源氏物語 http://genji.choice8989.info/index.html
    源氏物語の世界 再編集版 http://www.genji-monogatari.net/

    (画像は筆者作成)

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    (執筆者: 相澤マイコ) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか

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