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Kindle store オープンで考えたこと (上) Amazonの目的は日本の出版業界の破壊なのか
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Kindle store オープンで考えたこと (上) Amazonの目的は日本の出版業界の破壊なのか

2012-11-21 16:30
    Kindle store オープンで考えたこと (上) Amazonの目的は日本の出版業界の破壊なのか

    今回はnabokov-VIIさんのブログ『nabokov7; rehash』からご寄稿いただきました。

    ■Kindle store オープンで考えたこと (上) Amazonの目的は日本の出版業界の破壊なのか

    Kindle store が日本でも始まったので、もう、本のサイズを気にして買うのを躊躇したり*1しなくてよくなるのだな。

    *1:「引っ越しのために本やCDを全部デジタル化して本体を捨てた」 2012年11月9日 『nabokov7; rehash』
    http://blog.livedoor.jp/nabokov7/archives/1523059.html

    僕自身 Amazonで働きながら、いつになったら日本でKindleで本が買えるようになるんだろうと思ってずっと待っていたのだけど、結局自分がいる間にはオープンしなかった。

    日経が何度か Kindle いよいよ日本に上陸か!とスクープしては外してたけど、実はそれらのタイミングは、社内でそういった噂を耳にした時期や内容と一致していた。

    ちなみにアマゾンは秘密主義で、社員でも他部署の情報はほとんど伝わってこない。でもやはり、あれはそれなりに情報をおさえた上でのスクープ記事だったんだろうな。ただ、Kindleストアのようなサービスともなればその性質上、さまざまな事情で土壇場の延期が重なるのは不思議じゃない。

    そもそもアマゾンの業務は一般のweb業界ほどスピード感に溢れているわけではない。巨大さと秘密主義ゆえに組織は細かく区画化されている。チームのマネージャがリソース管理をしているけれど、それはチームメンバーが確実に17時に帰って確実に長期休暇をとれるような方向にも働くので、対外的な都合だけでなく、他チームのリソース待ちなどによっても仕事が一週間、二週間の単位で延期されていくのは日常茶飯事だ。

    しかし、それぞれのチームの最終的な原動力や方向付けになっているのは、明確で徹底したメトリクス(指標)だ。とてもゆっくりだけど、確実に目標に向かって進むブルドーザーのような組織だと思う。

    何に向かって進んでいるかって?

    意外に聞こえるかもしれないが、アマゾンの社是の最初の行は「顧客第一 (customer obsession)」だ。 これらはただの標語ではなくて,毎期の360度評価の指標になっていて、けっこう日常的に意識させられる。

    ほかに「倹約 (frugality)」というのもあって、それのおかげでオフィスの机がドア板だったり、飛行機に乗る時は尻が平らになるかと思うようなせまいエコノミー席に押し込まれたりするのだけど、それはまた別の話。

    ちなみに社是 (leadership principles) は全部で14*1。ちょっと多いぞ。

    *1:「Amazon Leadership Principles」 『amazon』
    http://www.amazon.com/Values-Careers-Homepage/b?ie=UTF8&node=239365011

    なんか提灯記事みたいになってきたけど、これは見方によってはおそろしい話ではないかと思う。

    あれだけ巨大な企業が、「お客様が第一です」と唱えながら脇目も振らず直進してくる。たまたま行く手を遮る「お客様」でないものは、たぶん目に入ってすらいない。

    アマゾンは黒船とは違う。どう違うかというと、まず日本は数ある寄港地のひとつに過ぎない。そして、いちいち「開国してクダサーイ」とか言わない。(ええ、開国してクダサーイなんて言うのはもちろんコメディの中の黒船だけですけどね...)

    海から上がったその足で幕府の役人を踏みつぶしちゃったことに気づきもせず、「あ、ここ広くていいですね。じゃここにしますか」と言って港にでかいショッピングセンターを建てるのだ。

    「アマゾンが日本の出版業界を潰そうとしている」というような言い方を聞く時に一番違和感を覚えるのは、その点だ。いや、つぶすとかつぶさないとかそういうんじゃなくて、ただ単に眼中にないだけだと思うんだよね..(実際は出版社も「お客様」に含まれるので、話はもうちょっと複雑だけど。)

    蟻はゾウが自分達を踏みつぶしに来たと思って憤慨しているけど、ゾウはただ単にそこを通りたかっただけなのだ。

    そして、蟻たちが全力でゾウの足に噛み付けば、ゾウは「なんかこの道、蟻が多くてめんどうだなぁ」という顔をして方向を変えるだろう。

    つまり「出版業界を潰す」のは別にアマゾンの目標ではないので、アマゾンの進出でなんらかの不利益を被る人達が全力で抵抗すれば、それはたぶんうまくいく。日本市場の開拓がやたら面倒だったら、さらっと他に国に転進するだけだ。スペインやインドでさえ、つい最近オープンしたばかりなのだ。アマゾン出店を待つ「お客様」は日本以外にもたくさんいる。

    それで束の間の猶予を得る人達もいるだろう。

    で、日本国内のユーザだけが、一人負けの状態で取り残されるわけだ。

    執筆: この記事はnabokov-VIIさんのブログ『nabokov7; rehash』からご寄稿いただきました。

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