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昭和の列車
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昭和の列車

2014-01-06 14:00
    昭和の列車

    今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

    ■昭和の列車


    昭和のころは「指定席だろうがグリーン車だろうが座っちゃえばいいんだ。車掌に言われてから席をたてばオッケー」みたいなおじさんが普通にたくさんいました。「われがちに」「ごり押し」「ルールは適当で」が昭和の風景。わたしはそういうのは嫌いでしたが。
    http://twitter.com/sasakitoshinao/status/419357346184179712

    例の政治家の娘のグリーン車発言で、まさに俺が思ったのはこれなんだよね。昭和…というか1970年代ぐらいは、良くも悪くもいい加減というか、個人がそれぞれ柔軟に対応してたと思うんだよね。俺なんか子供の頃から根が生真面目だったから(笑)、「え?そんなことしたら、怒られちゃうよ」と心配でしょうがなかったけど。

    未成年の飲酒とかだって、お正月とかの親戚に集まりでは、「おまえ、もういけるか?」とかいって飲ませてたような。しょせん周りはみんな親族なわけだし。

    賞味期限とかだって、そんなもん書いてなくて、書いてあるのは製造年月日。食べても大丈夫かどうかは各自が自分で判断していた。だから食べてお腹を壊してもそれは自分の責任。

       *   *   *

    それがいつの頃からか(たぶん1980年代)、ルールを決めて、みんなそれに従いましょうということになってきた。それまで現場が柔軟に対応してきたのが、「それは不公平だ」「不平等だ」「統一したルールを作れ」「公式な見解を述べろ」と。

    ある意味、思考停止だよね。そして一旦決まったルールや公式見解は、その意味も背景も考えず、杓子定規に「守れ」ということになった。法律ですら量刑は裁判官がさまざまな背景を考慮して決めるのに、社会のルールは判で押したように、「とにかくこう決まったんだから」と。

    そして一旦そうなると今度は、単純なルールだと現実に対処できないから、どんどんルールを複雑化させていく。指定席やグリーン車なんていい例だ。現場の判断の権限を奪っておいて、問題が起きると柔軟に対処しろと文句をいう。そしてもし柔軟に対処したら、今度は対応が統一されてないから、統一したルールを作れと文句をいうだろう。

       *   *   *

    とにかく誰かに許可してもらわなければならない。自分で判断して行動するのはダメ。それは自分勝手と思われてしまうから。その裏返しが企業や行政に対する「柔軟に対処しろ」という文句となるのだろう。柔軟性に伴う責任を自分が負うのは嫌なので、他に押し付けてるわけだ。

    以前「サマーウォーズ」のエントリでこんなことを書いたことがある。日本人は良いことをするのにも許可をもらわないとできない。世界を救うのにも個人の独断ではなく許可がいるのだろう。

    サマーウォーズの主人公たちは多くの人々を救ってるんだよね。でもなんかネットの感想を見ると、公的な組織でもないただの一家族が、勝手にそんなこをして、うまく言ったからいいようなものの、もし失敗したらどう責任をとるのか?みたいなことを言ってた人たちが多かった。サマーウォーズという作品は、そういう妙な風潮を批判した作品だと俺は思う。許可がないと何にもしない現代日本人に対する皮肉。

       *   *   *

    どうなんですかねぇ。見方によっては社会のシステム化が進んで、結構なことかもしれない。個人の裁量や独断を社会から極力排除し、全体的に一貫性のあるシステムとして社会を構築し直す。

    でもねぇ、そうすると社会の柔軟性がどんどん失われていく。全体性を維持した意思決定には時間が掛かるわけで。社会が不統一で、いろんなスタイルが乱立していればこそ、その中で適切なものが生き残っていく。

    柔軟性と統一性は社会では両立しないということがわからない人が多いんだよね。だから日本の社会は柔軟性に欠ける、だから世界の競争でも負けてしまうんだと主張する人が、同時に各社がバラバラなのはけしからん、ちゃんと公的なルールを作り、一貫性を維持しろと主張したりする。その矛盾に気づきもしない。

       *   *   *

    「自己責任」という言葉も、なんか最近は変質してるよね。普通自己責任というのは、「自分の責任において自由にやれ」という意味だと思うのだけど、なんか現代の日本では「勝手なことをやって迷惑かけるな」って意味で使われてるよね。以前中東の国に行って活動していた日本人がゲリラに捕まって、日本政府が対応に苦慮していた時とか、最近ではヨットで太平洋横断にチャレンジしたら遭難しちゃった時とか。

    「自業自得なんだから見捨てる」というならまだわかる。それなら自己責任の本来の意味。ところがなぜか現代の日本では、そういう場合でも政府が救助したりしなければならないんだから、そういうことはやるな、という意味になっている。そしてなにかと「税金の無駄だ」とかなんとか。

    そうやって「勝手なことをやるな」と互いを縛り合うことを美徳としている人たちが、一方で日本人はチャレンジ精神が足りないとかいうんだから、笑っちゃうね。

    参考サイト:

    「佐々木俊尚さんsasakitoshinaoの「ルールや法律に過度に頼るのではなく、その場その場のコミュニケーションによる臨機応変でいいじゃんと思うんだけどな。」」 『Togetter』

    http://togetter.com/li/612562

    執筆:この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

    寄稿いただいた記事は2014年01月06日時点のものです。

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