今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
※この記事は2014年05月25日に書かれたものです。
■続々・人間の悪魔性とは(メカAG)
従来は、全面否認している被告人でも、検察官立証が概ね終了すれば、「罪証隠滅の恐れがなくなった」として保釈されるのが一般的だった。しかし、今後、保釈の可否の判断に当たって、片山被告が行ったような、「真犯人が別にいる証拠をねつ造する」という罪証隠滅が行われる可能性を想定しなければならないとすれば、犯人性を否認する被告人については、検察官立証がどこまで進んでいようと、判決が出るまでは「罪証隠滅の恐れ」が常に存在することになる。「PC遠隔操作事件を「人質司法」の追い風にしてはならない」 2014年05月23日『BLOGOS』
http://blogos.com/article/86975/
マンガ「デスノート」を思い出してしまった。名前を書いただけ手人を殺せる死神のノート。それを使用した大量殺人に、名探偵Lは悪戦苦闘するのだが、その中にこんなシーンがある。容疑者(夜神月)を監禁して殺人が止まれば、結果的に容疑者が犯人と考えてよいか否か。
実際に容疑者を拘束・監禁したところデスノートによる殺人はピタリと止んだ。登場人物の多くはこれで容疑者が犯人であると断定して問題ないと主張した。読者の多くも共感したことだろう。だがLだけは納得しなかった。これでは証拠とはいえない、と。
案の定、容疑者が事前に仕組んでおいたトリックによって、しばらくすると殺人が再開される。
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遠隔操作ウィルス事件も警察は、容疑者を釈放した途端に新たな事件が起こり、それによって裁判の結果が影響をうけることを懸念していた。まさにそれを理由として容疑者の保釈を拒み続けていた。
ただ新たな事件が起きたとしても、それは保釈された容疑者によって可能であり(だからこそ保釈を拒み続けたわけだし)、理論的には言えば公判前整理手続が終わっている裁判には影響を与えないはず。
警察が心配したのは「理論」ではなく「世論」の方だろう。容疑者が撹乱のために新たな事件を起こしている可能性が高くても、世論はまさにまんまとその撹乱に乗せられてしまうであろう。デスノートでL以外のすべての人間が、夜神月のトリックに踊らされっぱなしだったように。
* * *
遠隔操作ウィルス事件でも警察が懸念したのは、世論(大衆)であろう。もっとも警察の関係者ですら「容疑者を逮捕してからピタリと犯人が使ってたアカウントの使用が停止した(から容疑者が犯人の可能性が高い)」とか言っていたけれど。この警察関係者もデスノートならまんまと夜神月の策略に翻弄されるタイプ。
したがって今回の「新たな証拠の捏造」で問題が生じるとすれば、それはそれに翻弄される世論(大衆)に原因があるのであって、当事者(犯人、警察)や裁判の仕組みとは無関係だと思うのだよね。警察が「絶対ありえない」と思うような方法で、証拠を捏造するのでなければ。
そしてもし警察が思いもつかない方法で犯人による証拠の捏造が行われたのなら、それは逆に警察が事件の全容をまだきちんと解明できてないということだし。デスノートの場合は「死神のノート」という神秘的で既存の常識が及ばないものが殺人に使われたので手こずった。大半の人間が「これで十分だ」と考えたのにLだけは首を縦にふらなかったのも、この段階ではデスノートの仕組みが解明できていなかったからだろう。
大事なのは警察が犯罪の全容をきちんと解明した上で裁判に望むことであって、犯人が新たな証拠を捏造するか否かは、本質的な問題ではないと思う。「この犯人は保釈後証拠を捏造しそうだ、いや大丈夫そうだ」というような犯人の良識(?)に依存してはいけないし、この部分はなにもコンピュータ&ネット犯罪固有のことではないと思うんだよね。しいていうなら警察もマスコミも大衆も、コンピュータ&ネット犯罪にはまだ慣れていないので、過剰に不安に駆られているという点ぐらい。
関連記事:
人間の悪魔性とは(メカAG) 2014年05月26日 『ガジェット通信』
http://getnews.jp/archives/583665
続・人間の悪魔性とは(メカAG) 2014年05月27日 『ガジェット通信』
http://getnews.jp/archives/583853
執筆:この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2014年05月27日時点のものです。
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