今回は飯田泰之さんのブログ『こら!たまには研究しろ!!』からご寄稿いただきました。
※この記事は2014年06月28日に書かれたものです。
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■消費増税後の消費動向(経済学者 飯田泰之)
株式市場・労働市場が比較的堅調であることから忘れられがちだけど...消費の現場に近い人ほど6月に入って景気に急速に暗雲が立ちこめてきていると言う。今月の家計調査を見るとかなり心配な結果になっているみたい。
そこで、ちょっと前回の増税と今回の増税の違いをまとめてみた。
●まずはデータから
ここでは家計調査の家計消費水準指数を使おう。ニュースなどで見る家計支出額等だと世帯人員数や物価の変化が混在しているので(それでも以下の傾向はほぼまんま維持される)、これらの調整を行った指数値の方が実態を反映していると考えるからだ。
増税の半年前から増税後1年間の消費動向を見ると…
(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
http://getnews.jp/img/archives/2014/07/data01.jpg
となっており、今次の増税の影響は過去の比を見ないものだとわかるだろう。ここまで極端な下振れを想定内だという論理が僕には分からない。
この落ち込みは、昨年前半の消費の急回復によって誇張されているという意見もあるんじゃないだろうか。そこで、あまり見ない方法だけど、一昨年の同月比ともくらべてみるとしよう。
(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
http://getnews.jp/img/archives/2014/07/data02.jpg
結果は変わらない、というか前年比より酷い落ち込み様だということがわかる。
●これまでの消費増税と今回の消費増税は全然違う
なぜこんなにも今次の増税の影響は大きいのだろう。一昨年来、それこそ政権交代前から繰り返してきたとおり、89年増税の際は物品税の廃止や所得・資産課税減税でマクロではむしろ減税が行われている。97年増税も同時に所得・住民税減税が行われ、これに社会保障給付の増大を含めると増税分と減収分はほぼ同じ。
これに対して、今回の増税は純然たる増税! その影響は当然大きく異なる。経済学好き向けに言うと、これまでの消費増税は代替効果だけ。今回はそれに(負の)所得効果が乗っているんだ。増税の影響を前回と同じ程度にとどめるためには、デフレ脱却が達成され、一般世帯の所得上昇が明確になってからでないといけなかったはず…
今年4月の消費増税は現時点でのデータからは失敗だとしか判断できない。7月に消費動向の急激な回復がおきる可能性は否定できないが、その可能性は薄いだろう。
●ではどうしたらよいの?
誤りを正すのに遅すぎると言うことはない。少なくとも経済政策について安倍政権はそれが出来る(出来てきた)政権だと思う。第一次内閣での失敗を生かし、金融政策による景気回復に舵を切ったのは正しい選択だった。これを教訓に、来年9月の増税については見直すのが妥当だろう。
消費増税は既定路線だから、もう変えられないからという場合にも策はなくはない。でも、まず現時点でのファーストベストは10%先送りだと思うので。これについて語るのは秋口以降にしたい。できればその機会が来ないことを祈るばかりだが…
執筆: この記事は飯田泰之さんのブログ『こら!たまには研究しろ!!』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2014年07月03日時点のものです。
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