月というと地球の衛星であり、人類が初めて到達した地球以外の天体である。1969年7月20日、アポロ11号が月面に着陸したときには感動した。月はどのような天体だろう?
月には大気や水がほとんど存在しない。表面温度は、赤道付近で最高およそ110℃、極付近で最低およそ-170℃となっており、温度の差が大きい。表面が砂でおおわれた荒涼とした死の世界だ。月の内部も冷たい世界だと思われたが、アポロ計画などで設置された地震計などによって、まだ熱く融けた部分があるのではないかと予想されていた。
今回、国立天文台や中国地質大学などの国際共同研究チームは、月の地下深くに軟らかい層が存在していること、ならびに、その層の中は地球の引力による潮汐力によって熱が効率的に生じていることを発表した。つまり、死んだと思われた月もまだ生きているという。どういうことだろう?
潮汐力が月を温める?
潮汐力とは、潮の干満を起こす力だ。潮の干満は月や太陽の引力による。地球の海洋表面に及ぼす引力が各地点で少しずつ異なるため、海水が移動する。
同様に地球は月に対して引力を及ぼしている。もし月の表面に水のような液体があれば、潮の満ち引きがあるはずである。だが、あいにく水がない。しかし、月の中心には液体があった。地球のマグマのように岩石がドロドロに溶けた液体だ。
これが、潮汐力を受けてかき回される。物体が動けばそれが液体であれ、固体であれ、摩擦力が生じる。摩擦力が熱を発生するのは、寒い冬に手を擦ったりして温めるので体験済みだ。ということで、月の内部は地球の引力のおかげで、まだまだ熱く融けているというわけだ。
また、丸く見える月だが、実は完全な球形からはかけ離れており、地球に面している側とその反対側が高く出っ張ったレモン型をしている。その理由は、太古の月が柔らかかったころ、地球から及ぼされた強力な潮汐力で変形して固まったからだ。
潮汐力というと潮の満ち引きを思い出すが、月内部を融解させる熱も発生させる。一見、死の世界に見える月の表面だが、内部はまだ熱く融けているのは不思議な感じがする。
(Nearside of Moon, Photo by Lunar Reconnaissance Orbiter)
※この記事はガジェ通ウェブライターの「なみたかし」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?