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高野孟(インサイダー編集長)
─民主党が与党になって二度目の選挙。初めての選挙は2010年の参院選で大負けした
当時は菅直人元首相に問題がありました。参議院選挙の直前に突然、消費税増税を言い出しました。菅さん本人も増税の中身を本当に理解して言ったかどうか疑問です。いきさつ不明の消費増税が突然出てきて、参議院選挙を迎えてしまったことが大きな敗因でした。
突然のTPP発言を見てもわかるとおり、菅政権は議論もなく、スローガンを持ち出す傾向がありました。そして、今回の野田政権も同じで、より一層ひどい状態になっています。
─12月16日の選挙では、原発、TPP、消費増税などが争点にあがってます。
消費増税について、そもそも「税と社会保障の一体改革」といわれていたが、日本の将来の問題として誰もが安心できる高度福祉社会をどうやって実現するかというビジョンがまず必要です。その後に達成期間はどれぐらいかなどの設計図を用意しなければなりません。
誰だって税金を上げられるのは嫌だが、この財政状況で将来のことを考えたら上げざるをえないとみんな思うかもしれない。しかし、野田首相は議論を煮詰めないうちに解散のカードを切っちゃった。
原発問題についても同様で、中身の議論がないままに「脱原発」というキャッチフレーズが使われています。当面は再稼動でもしょうがないですよねというだけで、「さあ、選挙で選べ」と言われたって判断材料がない。大事な問題の全部中身が生煮えのままに14、5もの政党ができて、みんな勝手なことを言っている。何をどう選んだら良いのかさっぱりわかりません。
今見えているのは、野田首相が国会の最後に一発周り蹴りをして安倍自民党総裁をやっつけた、安倍さんはタジタジになったじゃないか、というプロレスの試合みたいなことです。そんなことで投票所に足を運ぶ人がいるのか、中身は何にもない、選びようがない妙な総選挙です。
─近著『民主党の原点』で野田政権を「自民党野田派」とも言われています。民主党結党に関わってきた高野さんは、現在の民主党をどのように見てますか。
今の民主党は、旧民主党とあまりにかけ離れてしまいましたね。某大物議員の秘書から電話があって、「高野さん、新党『旧民主党』ってのをつくりましょうか」と冗談のような話をしたほどです。
旧民主党というのは96年9月に結成されますが、新党協議は1年半前から始まりました。その背景には、94年12月小沢一郎の「新進党」立ちあげがありました。マスコミは「保守二大政党制時代幕開く」という、はしゃぎようでした。私たちはそれに対して、新・旧保守のどちらかしか選択肢がないのはおかしい、そんな二大政党制があるかと疑問を訴えていました。
もちろん、米国をみても民主も共和も基本的には保守であって、独自二大政党制みたいなものですけれども、それにしても保守対リベラルっていう軸を立て直さないと、本当の二大政党制の時代はこないと思っていました。
そして民主党がはっきりとしたリベラル軸を立てて存在し始めれば、新進党のような疑似二大政党の一翼は自ずと崩壊してくるという見通しを立てていました。
─実際にそうなった。
新進党は完全になくなり、小沢さんは最後は自由党にたてこもったけど、それもなくなっちゃいました。そして、小沢さん自身が民主党に合流してくるというかっこうになります。それはちゃんとしたリベラル軸が立てば、そこが二大政党制の一極を担うことになるという見通しが正しかったことを示したということです。
<無料ダイジェスト>インタビュー高野孟に訊く「旧民主党の目指したものとは」
─当時の「リベラル」とは?
端的にいえば、対外政策は「常時駐留なき安保」であり、まずは沖縄を中心にして集まっている米軍基地の現状を解決すること。その先に「東アジア共同体」を見据えてる大きな軸がありました。
国内的には中央集権国家をやめて、地域主権国家に転換する。明治以来100年の体制転換が大きな柱でした。私は今でもこの考えに変わりありません。
いざ政権交代してみるとどうなったか。
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