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今日はおでかけ日和、山本勝さんはカレンダーに花まるをつけて楽しみにしてきた。
血圧、体温異常なし、入居している施設の外出許可も出ている。夕べは興奮気味でいつもより睡眠不足だが、今朝の気分はすこぶるいい。久しぶりの外出に子供のようにワクワクしていた。
施設内のケアは、いつものヘルパーがしてくれるから何不自由はない。しかし、部屋から外にでてからは、トラベルヘルパーが介護する約束になっている。
出迎えの際にトラベルヘルパーが、まず行うのは山本さんの様子を伺うこと。その日の体調は、施設の担当者から引継ぎを受ける。
日帰りおでかけのような小さな旅は、時間の無駄ができないので、出発前の準備は周到でなければならない。車いすの点検は移乗させる前に行う。タイヤの空気圧やねじのゆるみがないかをチェックし、ブレーキの利きや車いす用クッションも確認する。介護施設などタイルや木製の床では気づかない振動が、路上では身体にダメージを与えるほど大きいことがある。バリアフリー環境が整っている場所では気づかないことが、街に出るといくつも気になる。
計画は本人、施設の担当者と確認しながら、服装、持ち物もチェックする。水と帽子、万一の為の雨具もあったほうがいい。車いす用の合羽なら寒くなったときは暖もとれるので応用が利く。桜の季節といっても急に冷え込むことがある。予報士が悪いわけではないが、異常気象で天気予報もあてにできない。暑くなる分には、羽織っているものを脱げばいいが、出先で冷えこんだら大変だ。外出時の服装には十分な備えが必要となる。そして、常用している薬も確認する。
さらにトイレプランと公共交通を乗り継ぐなら乗換時間もゆとりが必要となる。ここまで確認して、いざ出発となる。
最近、まち歩きができない観光地は人気がない。住んでいる人が歩かないような町は、訪れる人にとっても魅力に欠けるのだろう。そこで、まち歩きの楽しさを取り戻そうという試みがある。まちの駅やシニアカーを貸出すタウンモビリティ活動など、自治会や商店街が積極的に取り組む地域も増えてきた。
コミュニティカフェもその一つで、介護にかかわる人が気軽に訪ねることができるケアラーズカフェも都内にはずいぶん増えてきた。これからは認知症の人が気軽に行けるカフェも整備されるという。高齢社会が進む今、介護に関して語れる場が増えていくのは、本人にとっても家族にとっても大事なことだと思う。地域のささえあい活動は、行政だけでは解決できない地域の課題だろう。
都心ならデパ地下めぐりも楽しいし、郊外ならショッピングモールは、雨の心配がなくていい。バリアフリーのトイレや救護室も備えたところもある。高齢な人が休まず歩ける距離の平均は50mというからベンチも多くて安心だ。
ただ、車いすで行けるところへ出かけるのでなく、行きたいところへ杖や車いすを使っても行けるようにしなければいけない。トラベルヘルパーは体を移動させることではなく、心の旅を大事にしている。(月刊介護保険 連載)
【篠塚恭一(しのづか・きょういち )プロフィール】
1961年、千葉市生れ。91年(株)SPI設立[代表取締役]観光を中心としたホスピタリティ人材の育成・派遣に携わる。95年に超高齢者時代のサービス人材としてトラベルヘルパーの育成をはじめ、介護旅行の「あ・える倶楽部」として全国普及に取り組む。06年、内閣府認証NPO法人日本トラベルヘルパー(外出支援専門員)協会設立[理事長]。行動に不自由のある人への外出支援ノウハウを公開し、都市高齢者と地方の健康資源を結ぶ、超高齢社会のサービス事業創造に奮闘の日々。現在は、温泉・食など地域資源の活用による認知症予防から市民後見人養成支援など福祉人材の多能工化と社会的起業家支援をおこなう。
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