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篠塚恭一:「高齢者大国の前線から」(7)── 未来都市東京を世界に示そう
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篠塚恭一:「高齢者大国の前線から」(7)── 未来都市東京を世界に示そう

2013-12-09 08:35
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    2020年、夏の五輪開催が東京に決定した。

    各界から祝福メッセージが寄せられる中、元陸上代表の為末大さんが記した言葉が印象に残った。

    オリンピック開催へのコメントが多い中、彼はパラリンピック開催に期待を寄せている。高度経済成長期にあった先の東京五輪では、開催決定により首都高速道や東海道新幹線など、後に多くの国民生活が向上したインフラ整備が加速され、その恩恵は半世紀たつ今も続いている。五輪開催は、あと7年という近い話でなく、50年単位で日本の未来を考えるきっかけになるという。

    これから50年、日本は少子高齢化が続く。総務省によれば2020年(平成32年)の総人口は1億2411万人、高齢者人口が3456万人と予測され、総人口が今から300万人ほど減るのに対して、65歳以上の高齢者はおよそ500万人増える。さらに、2030年以降は、総人口が毎年100万人ずつ減少し、2050年には9,700万人、2060年には8,700万人となり、高齢化率は40%を越えているのが未来日本の姿となる。

    だから、パラリンピックが開催されることは、単に競技場を造るということでなく、50年先の未来都市としての提案をこの五輪開催を通して実現すべきとの持論だ。

    近著で「走る哲学」を出版した為末さん。他にも7年後には、アスリートを助ける技術の進化としてマラソの選手のサングラスに自身のラップタイムがわかる機能搭載されることや、義足づくりの進歩でパラリンピアンにオリンピック記録を抜かれている可能性が高いことから、男子100メートル走は混合レースになる可能性もあると指摘するなど、楽しみな未来予測も多い。

    「パラリンピックの選手は適応の達人だと思う。何かを失ったり、1つの機能がつかえなくなったりした状態に適応した上で、スポーツをするための技術を開発していくことに可能性を感じている」と述べていたが、一流のアスリートとしの視点と思考には学ぶことが多くあった。

    五輪開催の決定で、産業界はにわかに活気づいている。観光産業もしかりだ。半年後に迫った冬季五輪はロシアのソチ、2016年の夏はブラジルのリオデジャネイロで開催され、南アメリカ大陸初の夏季オリピックとなるが、いずれもパラリンピックとの併催になっている。

    東京五輪では、ようやくオリンピックとパラリンピックが文科省管轄に一本化されることになったが、選手強化費などが統一されることで、外国並みに処遇改善されることを期待したい。

    ホスト国になったことから大会運営の関係者は、視察や下見ツアーですぐに忙しくなるだろう。経済は大衆の心理がどこへ向かうかによるところが大きいから、明るい話題は産業に歓迎されている。

    一方でこの夏、竜巻や大型台風など予期せぬ自然災害に見舞われた観光地が多かった。人口や気候変動というのは、確実に変化しいるにもかかわらず、動きがゆっくりだから対応が遅れがちになり、結果として数十年単位の大変化についていけないでいるという意見もある。高齢社会の進展にともない法整備が進み、交通面でもハードの整備は各段にすすんだ。しかしながら、オペレーションやソフト面ではまだお粗末な出来事にあたることも少なくない。防災面でも不安が残る。

    そうした面でも、選手村ができるお台場から、銀座あたりを通り、国立競技場へと向かう送迎ルートは、未来都市東京を世界に示すまちづくりのショーケースとなることを期待している。



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    【篠塚恭一(しのづか・きょういち )プロフィール】

    1961年、千葉市生れ。91年(株)SPI設立[代表取締役]観光を中心としたホスピタリティ人材の育成・派遣に携わる。95年に超高齢者時代のサービス人材としてトラベルヘルパーの育成をはじめ、介護旅行の「あ・える倶楽部」として全国普及に取り組む。06年、内閣府認証NPO法人日本トラベルヘルパー(外出支援専門員)協会設立[理事長]。行動に不自由のある人への外出支援ノウハウを公開し、都市高齢者と地方の健康資源を結ぶ、超高齢社会のサービス事業創造に奮闘の日々。現在は、温泉・食など地域資源の活用による認知症予防から市民後見人養成支援など福祉人材の多能工化と社会的起業家支援をおこなう。



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