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田原総一朗:オイシックスの社長の話から日本の「食の安全」について考える
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田原総一朗:オイシックスの社長の話から日本の「食の安全」について考える

2014-08-29 09:00
    中国の上海にある食品加工会社が使用期限の過ぎた鶏肉を出荷していたことが発覚した。その告発内容が、ビデオ映像として流れたのだ。

    期限が切れているのはあたり前、床に落ちてもそのまま使う、カビた鶏肉も平気で混ぜる……。それだけでも十分に衝撃的なニュースだが、この会社が大手飲食チェーン店の仕入れ先であったことも、日本の消費者にとっていっそう衝撃的だった。

    「食の安全」の問題は、生産者と消費者との間に、「流通」「加工」という、いくつもの段階があることから、起きているといっていい。「食の安全」を真剣に考えるなら、なるべく加工品を食べないという努力も必要だろう。

    以前、食物の流れはもっと単純だった。近所の畑で採れた野菜や、近海で水揚げされた魚を食べていた。このようなサイクルでは、食の問題も起こりようがなかったわけだ。もちろん僕も傷んだものを食べて、腹をこわしたりしたこともあった。だが、それはあくまでも食べた側の責任だった。

    そして、流通技術が発達し、加工食品が次々と開発されている現在、日本の食卓には実に多様なものが並ぶようになったが、しかし、その多様さと「豊かさ」とは別物なのかもしれない。食品が「工業品」と化し、生産地から食卓までの距離が、離れすぎてしまったのだ。

    いま、生産者と消費者の距離を縮めようとしている人物がいる。オイシックスの社長、高島宏平さんだ。先日、高島さんと会って、僕はいろいろな話を聞いた。

    高島さんは、安全でおいしいものを、消費者に届ける事業を展開している。「作った人が自分も食べ、選んだ人が自分の子どもにも安心して食べさせることができる、『責任のある』食材」を厳選していると高島さんはいう。そして作り手の名前はもちろん、メッセージも添えて、消費者のもとへ届けるのだ。まるで田舎の親元や農家の親戚から、送られてくるかのようである。

    高島さんは、生産者と消費者が直接繋がることで、コミュニケーションが生まれるシステムを作りあげたのだ。高島さんはいう。「食料ではなく、『食卓』を届けるのだ」

    高島さんの発想はとてもおもしろい。そして、日本の「食」を見直し、再生させる可能性を秘めている、と僕は感じたのだ。


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    〈田原総一朗(たはら・そういちろう )プロフィール〉
    1934年、滋賀県生まれ。60年、岩波映画製作所入社、64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。現在、早稲田大学特命教授として大学院で講義をするほか、「大隈塾」塾頭も務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。また、『日本の戦争』(小学
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