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田中良紹:国民に考える暇を与えないナチス型政治との対決
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田中良紹:国民に考える暇を与えないナチス型政治との対決

2014-11-23 09:35
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衆議院が解散された。解散と同時に選挙戦が始まる。その選挙戦は選挙が公示される12月1日までが本番である。外国と違い日本の公職選挙法は選挙中の運動に様々な縛りをかけており、選挙に入ると自由な活動が出来ない。そのため選挙が始まるまでの運動で当落は決まると言われている。

他の民主主義国では考えられないほど日本の選挙は奇妙な仕組みの中にある。昔、「公職選挙法の珍奇」というブログを書いたので、詳しくはそちらを読んでほしいが、なかでも異常なのは選挙期間の短さである。1年がかりで行われるアメリカ大統領選挙は別格にしても、欧米では選挙期間が短い事を良い事だとは考えない。

国民に判断する時間を与えない事を反民主主義と考える。ところが日本では「選挙にカネがかかる」という理由で選挙期間を短くしてきた。それは現職議員に有利な結果を生みだす。選挙期間が短ければ顔を知られた現職が新人候補より有利になるのは当たり前である。現職議員によって作られた公職選挙法は「政治とカネ」を表向きの理由に世界の民主主義とは逆の方向を向いている。

従って選挙の当落を決めるのは解散から公示までの期間である。それが今度の選挙では11日間に過ぎない。過去最も短い森元総理の「神の国解散」と並んでいる。前回の野田総理の解散では18日間、麻生総理の時は28日間、小泉総理の郵政解散でも22日間の時間があった。しかし安倍総理の解散は国民に考える暇を与えたくない意思を感ずる。

森元総理は「有権者は寝ていてくれれば良い」と発言したが、安倍総理にも同様の考えが読み取れるのである。国民にじっくり考えられると解散の本音を読み取られてしまうと怖れているようだ。安倍総理は今回の解散を「アベノミクス解散」と自ら命名したが、本音を読み取られる前に国民を誘導し、そのままの形で早く選挙を終えたい。それが見えるのである。

何度も書くのは嫌なのだが、解散・総選挙をやらなくとも消費税引き上げ「延期」は法律に従ってやれた。法律に書き込まれているのだから重大な「変更」ではない。もちろん国民に聞く必要もない。にもかかわらず解散に打って出たのには他に理由がある。

一つは「アベノミクス」に先がない事を知っているからである。日銀の追加金融緩和のサプライズで市場を一時的に驚かすことはできた。しかし上がった株価がいつまで持つか実は気が気でない。その前に足場を固めないと、自民党の中からも足を引きずられる恐れがある。

海外は既に「アベノミクス」には先がない事を論じている。日本国債をすべて日銀が買う体制をどこまで続けられるのか、その出口戦略に疑問がある。出口戦略は先に行けば行くほど難しくなるが、どうするつもりなのかが全く見えない。

外国人エコノミストの中には、日銀が国債を買うのではなく同額を国民に配った方がデフレ脱却に効果的だと主張する人もいる。1年以内に使わなければ無効になるカードで国民に配れば、確実に需要が増えてデフレから脱却できるというのである。

またもうけ過ぎの大企業が抱えている200兆円を超える内部留保に課税すれば良いと主張する人もいる。大企業は内部留保を設備投資や賃上げに回す事になり、経済の好循環が生まれるというのである。とにかく「アベノミクス」などやらなくともデフレ脱却の知恵はあるはずだという。

しかし安倍総理には誰かから吹き込まれた「アベノミクス」以外の事を考える能力がない。「この道しかない」と言い募って他の知恵を拒否する。「これしかない」と知恵を持たない者に言われても知恵のある者は困る。無理心中を迫られている気になる。

だが安倍総理が相手にしようとするのは知恵のある者ではない。安倍総理は第二次政権誕生以来、国民から合理的判断能力を奪う事を目的に政治を推し進めてきたように思う。政策課題をめまぐるしく国民に提示してじっくり考えさせることをしない。

アベノミクスも特定秘密保護法も集団的自衛権も地方創生も女性の輝く社会も、十分な時間をかけて議論が行われたという実感がない。肝心な議論は常に先送りで課題だけが中途半端なまま既成事実化されてきた。私がこれまで経験した事のない政治である。

それがこの解散劇にも適用されている。何のための解散か分からない解散をするところに安倍総理の目的はあるようだ。それは国民から合理的な判断能力を奪う。そして理性を感情に委ねる国民を創りだす。私は片山杜秀慶応大学教授の著作によってヒトラーが民主主義のドイツ国民をファシズムに引き入れる時に使った手法がそれである事を知った。

ならばこの選挙は日本国民がナチス型政治に組み込まれるかどうかの選挙である。それは戦後史に於いて日本国民が経験した事のない選挙である。その重大な岐路に立ち向かっている事を国民は自覚すべきだと私は思う。考える暇を与えない政治と対決するのである。

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■《甲午田中塾》のお知らせ(11月25日 19時〜)

田中良紹塾長が主宰する《甲午田中塾》が、11月25日(火)に開催されることになりました。詳細は下記の通りとなりますので、ぜひご参加下さい!

【日時】
2014年 11月25日(火) 19時〜 (開場18時30分)

【会場】
第1部:スター貸会議室 四谷第1(19時〜21時)
東京都新宿区四谷1-8-6 ホリナカビル 302号室
http://www.kaigishitsu.jp/room_yotsuya.shtml
※第1部終了後、田中良紹塾長も交えて近隣の居酒屋で懇親会を行います。

【参加費】
第1部:1500円
※セミナー形式。19時〜21時まで。

懇親会:4000円程度
※近隣の居酒屋で田中塾長を交えて行います。

【アクセス】
JR中央線・総武線「四谷駅」四谷口 徒歩1分
東京メトロ「四ツ谷駅」徒歩1分

【申し込み方法】
下記URLから必要事項にご記入の上、お申し込み下さい。21時以降の第2部に参加ご希望の方は、お申し込みの際に「第2部参加希望」とお伝え下さい。
http://bit.ly/129Kwbp
(記入に不足がある場合、正しく受け付けることができない場合がありますので、ご注意下さい)

【関連記事】
■田中良紹『国会探検』 過去記事一覧
http://ch.nicovideo.jp/search/国会探検?type=article


<田中良紹(たなか・よしつぐ)プロフィール>
 1945 年宮城県仙台市生まれ。1969年慶應義塾大学経済学部卒業。同 年(株)東京放送(TBS)入社。ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、 警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。1990 年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。

 TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。主な著書に「メディア裏支配─語られざる巨大メディアの暗闘史」(2005/講談社)「裏支配─いま明かされる田中角栄の真実」(2005/講談社)など。
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有権者が寝ていて喜ぶのは「共産党」「公明党」ではないのですか?

No.1 121ヶ月前

別に共産や公明は喜ばないんじゃないの?もともと悪いイメージが付いてるんだから、本来ならそれを払拭するための時間が欲しいのが自民、民主以外の党だと思いますが。
大体が日本の選挙は、それまで政治の内容についてまともな総括をする時間すら与えられないんだから、今現在の自民の政治がだめだと思った時に次に政治を任せる相手をを考える時間なんて無いに等しいじゃない。自民党の55年体制が崩壊した際の街頭インタビューを見ると、民主党に交代したときとまったく同じで、ボクが生まれる前から民衆に考える暇なんて与えられていないのがよくわかる。そして、新たに政権の座に就いた人たちもどういう政治をしていいのかよくわかっていないのもよくわかる。

No.2 121ヶ月前

連投すいません

上に書いた通り国民に考える暇を与えない政治というのは、この国ではずっと行われてきたのだと思います。
小泉内閣のときもほとんど同じでした。第二次安倍内閣は安倍首相自身がストレスに弱いようですので、反論を受けないようにした結果、小泉内閣をさらに推し進めて、議会はただ単に決定した内容を発表する場になってしまっており、余計にナチスのやり方を連想しやすくしているのではないかと思いますが、本質は変わっていないと思います。

私的には選挙期間の短さはまた別問題だと思っています。
なぜなら、有権者は現状にノーを突きつけたくとも、その選択を奪われているのではないか、と感じるからです。実際に突きつけた過去はありますが、現状以下の政治に失望をし、そして何も知らない世代が劇場型の政治に身を委ねるも結局ノーを突きつけ、そしてまたもや現状以下に成り下がる政治に失望を感じて興味を失い、そしてまた何も知らない若い世代が…ということの繰り返しが55年体制崩壊以後の日本の政治に感じます。それが繰り返されるのは、一見民主主義的に見える選挙方法に問題があるのではないでしょうか。そして、当面一番の問題は期間の短さだと思うのです。
本来なら、有権者は今回の内閣が行った政治内容を吟味し、その上で自分たちでどの候補者が自分たちの政治を任せるに相応しいかも吟味した上で選択できるべきです。ですが、忙しい日々の中で、こんな選挙期間ではそんな面倒なことを行える人なんて本当に極僅かだと思います。殆どの人は普段の彼らの醜聞くらいしか判断材料はないでしょう。
たまに現状を打破してくれそうな対抗馬をインテリが宣伝してくれますが、選挙期間が短いために碌に政治運営を行うための準備期間がない対抗馬は現状を遥かに下回る政治を行う結果になってばかりです。結局、自分たちで選択した気になっていた有権者に大きな失望を与えるだけで、煽った当のインテリたちも地下に潜ってしまう体たらくです。

田中さんがよく安倍首相と引き合いに出す岸伸介内閣の時代は自民党に政治のやり方や駆け引きを熟知する人物が大勢いたのでしょう。ぼくはまだ生まれていなかったので実感はないですが、55年体制崩壊時くらいまではそれなりにいたのかもしれません。ですが、今の自民党内に政治を熟知している人物なんて数えるくらいしかいないのではないかと感じます。それも党内では冷や飯を食ってる感じですが。
では、民主党は?公明党は?共産党は?維新の会は?その他諸党はどうでしょうか?もしかしたらいるのかもしれませんが、それらの情報は有権者には殆ど伝わってきません。
また、別に政治が初めてでも、準備期間がそれなりにあればいいのですが、せっかくの政党政治だというのに選挙期間が短すぎて適当に候補者個人をアピールするくらいしか時間がありません。間違って通ってしまっても、何をすればいいのかわからないまま霞ヶ関に登庁するしかありません。税金の無駄遣いと言われても、準備する期間なんてないに等しいのだから仕方がありません。
日本の政治の大問題は官僚の力が強すぎることだとインテリは言いますが、政治のセの字も知らない、議論のギの字も知らない、交渉のコの字も知らない政治家に政治を任せられるわけもありません。結局、誰を選んでも同じ、いや選ばないほうがマシではないかとすら思えるほどです。
そうして、この国の有権者は政治に関心を失っていくのだと感じます。

選挙期間の短さが有権者にも立候補者にもマイナスでしかないのではないか、民主主義の根幹を揺るがしているのではないと感じるのです。

田中さんはアメリカほどの選挙期間はさすがに長すぎると書いていらっしゃいますが、私的にはいっそのこと一年位議論する時間を与える位じゃないと、政治に対する関心は戻らないんじゃないかと思います。ただ議論するだけじゃ息が詰まるので、お祭り騒ぎもする位でちょうど良いのではないでしょうか。
また、その方が逆に今回みたいなどうでもいい解散総選挙なんて軽々に行えないのではないでしょうか。お金がかかりすぎるので。
けれど、そのためには結局議会で選挙期間を変えねばならず…とても険しい道のりです。

No.3 121ヶ月前
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