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【第13回】政治家に訊く:中田 宏
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【第13回】政治家に訊く:中田 宏

2009-10-28 17:56
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    ───────【基本情報】───────

    名前:中田 宏(なかだ・ひろし)
    政党:元横浜市長(第20代)
    生年月日:1964年9月20日
    血液型:
    座右の銘:
    趣味:
    好きな食べ物:
    ホームページ:http://www.nakada.net/

    ───────【質問事項】───────

    Q1:なぜ政治家になったのですか?

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    「今の社会に満足していないから!」この一言に尽きます。勿論、世襲ではないし、これからもやりたいことは勿論たくさんある。なによりも僕の原点は、今のままじゃ嫌だから、というところです。社会の不条理を取り除きたい!そうした想いが原点です。

    なんでこんなところにゴミが落ちているんだ?落ちているどころか日本全体がゴミの島になっちゃっている!なんでこんなところに自転車が放置されているんだ?例えばそういう日常の中における素朴なところなんですよ。なんでこんな社会が営まれているんだろう...と考えていたら「政治」に突き当たった、ということです。

    ─生活の中で想いが積み重なっていくものもあった?

    うちの父親の"ぼやき"じゃないでしょうか。前楽天の野村監督じゃないですけれど、朝、新聞見ながらぼやいているんですよ。「まったくなんでこんな税金がこうも不公平なんだ」とかね。勿論、当時は「不公平」なんて言葉の意味なんてわからない。だけど、そういうことが世の中に発生しているんだ、とインプットされていって、父親の"ぼやき"も、今の政治家になる自分の原点に繋がってきたんだろう、と思います。

    Q2:政治家になる前はどのような仕事や活動をしていましたか?

    ゴミの問題、ゴミの研究をやっていました。まさにこれも日常の中からスタートなんですが、横浜市って、とにかくなんでもかんでも一緒くたにして捨てていたんです。一ヶ月に一回の粗大ゴミ以外はなんでも一緒。おかしいでしょう?日本は省資源国とずっと教わってきた筈なのに、なんでもかんでも捨てるのかな、と最初疑問でした。だったらこれをずっぽり研究しようと。日本全国のゴミ処理処分の仕方を見に行って、というより中に入って収集車に乗ったり、清掃工場で実際に仕分けしたり、それを二年くらいやってそれから論文書いたり、地方で講演活動をしたりアドバイザーを始めたり、ゴミ問題に没頭していましたね。

    ─それはどこかの研究機関で?

    松下政経塾の中です。松下政経塾というのは面白いところで、行っている人が圧倒的に少ないから誤解というか、なにか教えて貰う学校と思っていると思うかもしれないけれど、そうではなくて、一年生は確かに教えて貰う機会や時間があるけれど、二年目以降になると、完全に自分自身が研究活動に取り組み始めるんですね。その研究も資料を取り寄せて、とかではなく、全部現場に行って、ずっぽり、どっぷり入って、それでまとめていく、モノを知っていく、仕組みを提案していく、ということになるんです。ですからゴミの問題になると、まさにゴミの現場に行くしかない。ゴミまみれでした。

    Q3:どのような政策にいちばん力を入れていますか?

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    鳩山さんが、25%のCO2削減と意欲的な数字を出しているんですが、僕は環境問題と経済、われわれの暮らしをどういうふうに融合させていくか、が、今後の世界のテーマだし、そこにこそ日本の発展のひとつの大きな分野があると思うんです。環境に対する技術は日本はものすごく開発可能であるし、それからモノを大切する、節約する、日本語で「もったいない」という文化はマータイ(ワンガリ・マータイ、Wangari Muta Maathai)さんに教えられるまでもなく、本来日本人が大切にしてきた精神文化である。

    そういう「もったいない」という気持ちと、しかし一方では、日本人が戦後ずっと謳歌してきた物質文明、さらに乱暴的な整理をすれば、資本主義的、欧米的な思考回路だったものと、一方では「もったいない」という明らかに精神的な意味における東洋文化みたいなね、そのものを融合させていく、そうした文明的な役割が日本にあると思う。それを考えたときに、環境に対するアプローチは...

    ■技術
    ■社会システム
    ■価値転換

    この3つだと思います。

    日本だからこそ開発出来る技術、日本だからこそ作れる社会システム、そして心の持ちよう。これからの世界のために、日本はおおいにここを伸ばしていくべきだと思うし、そのことに向けてわたしは行動していきたい。横浜でゴミを思いっきり減らした、これも市民の皆さんが本当にゴミを分けてくれることに協力してくれたんです。今まで、僕が原点でお話したように、全く分別していなかったんです。それが「15」に分けてる。
    これは本当に市民の皆さんが協力し意識高くやってくれた、でも自分がやるからまた学びになったと思うんです、もしそれが行政の下請けかなんかがやっていたら、それでは学びにならないんです。どこかで誰かがやっている、ということだったら、学びにならないでしょう、そういう意味では社会システムを作って、参加出来るようにすれば、日本国民は自分達があたためている気持ち、「もったいない」「大切にしなくちゃな」とか、そういった気持ちを具体的にあらわしていくんだと思うんです。

    ─こういう日本にしたい、というのは環境を通じて?

    環境を含めて「自立」ってことだと思います。日本全体が自立ということをより価値として共有をする社会にしなければならない、ということだと思います。どういうことかというと、国の自立、地方も自立、個人も自立、ということをもっと意識する必要がある。昨今の物言いをみていると、社会のせいにする、しくみのせいにする、そういうことが非常に多い。日本がこれまで近代国家として、そして現代に至るまで発展してきた、その時、福沢諭吉が、「自立」そのためにはそれぞれが学ぶ、だから『学問のすゝめ』となっていたように自立が大きなテーマだと思うんですよ。

    だから、国の自立ということになれば、軍事力をどんどんどんどん持って、それで世界に合していこうなんていう考えでは整理がつかないのであって、どうやって外交力を高めるか、さらには経済もきちっと営みをもって、結果としてね、その経済力を活かして問題解決をしていく自立というのが必要になる。一国で安全保障体制をすべてハリネズミのようにめぐらせるようなことはムリなんだから、それは日米安全保障体制というような、やはり世界の中での安全保障を考える、これも自立だと思うんですね。

    それから地方の自立。これはもうメディアなんかで取り上げられておりますが、地方分権ですよね。やはりそれぞれに自分達が政策を決定し、それに対する責任を持つ、という風にしないと、国から補助金貰う、そのために陳情する、国の基準をやっているんだからこれのサービスで仕方がない、という思考回路をヤメにしないと、お金のない時代ですから、そのお金を有効に使うためには自分の頭で考える、ということをしなければダメで、分権というのは自立の在り方ですよね。

    個人においてもそうで、行政のせいだとか、そういうことにしていてはいけないし、たとえば福祉ひとつとってみても、ずーっと働く意思がないような福祉にしてはいけないですね。障害がある人、そういう人たちに対する福祉、ハンディキャップのある人に対するセイフティーネット、これは絶対必要。しかし一方では、じゅうぶん働く能力があるのに、働く意欲がなくなるような福祉の在り方ではいけないし、また医療ひとつとってみても、病気になってからお医者さんにかかる、駆け込むという医療制度ではなくて、日頃から健康を維持して、そっちのほうにお医者さんが関わるという医療展開していくことも僕は自立だと思うし、そういう意味では僕のキーワードとして、価値提示は「自立をする」、自立をするからこそ人にも優しくなれるし、お互いの尊重がし合える、というのがあります。

    ─民主党のマニフェストにも自立という言葉はかなり出ていて、
    補助金をやめます、ただセイフティーネットは設定しておいて、それぞれが活動をするNPOには支援する税制だったり改革をするという形になっていますが、実際、ヨコハマと違い、地方は自立出来ると思いますか?

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    机上の論だと思うんです。横浜は人口がでかいから財政規模が大きいだけなんです。裏を返せば一人当たりの税のリターンは横浜市の方が少ない。小さい町の方がよほど税のリターンは大きいわけで、そういう意味では単純にこういう比較をしても仕方がない。
    ただ、小さい1000人の村、2000人の町、というのがあるとすれば、そういうところが制度設計からなにから全部自分のところで考えて、そして大きなプラントを持つとか、中核的な機関都市をつなぐような道路を作るというのは無理ですよ。だからそういうところは広域で解決をしていかなければいけないと思うんです。

    広域的とは何か、道州制だと思うんです。今、各都道府県があるけれども、もっとそれを広域にする必要がある。なぜならば、たとえば鳥取県の人口は70万いかないくらいだと思うんです。そうすると民主党が言うように人口30万人位の市にまとめます、というと、2つになっちゃう。で、それで自立しなさいというのも無理だと思うし、また鳥取だけの自立というのも難しいわけであって、じゃあ中国地方、例えば広島とか岡山とかが入ってくる、これを中国地方とする、そういうのが道州制ですね。そうなるとひとつの道州というより広域的なところで政策の立案をし、産業もあり、インフラもあり、そういうところをまかなっていく、一方では国民に市民、町民、村民に基本的なサービスというのは、それぞれの基礎自治体がやっていく、という住み分けをしていくことが必要だと思うんです。

    今はどんな小さな県もフルセットで全部求めるんです。産業も誘致しなければならない、空港も作らなければならない、港も欲しい、その結果が日本の国際競争力をどんどん落としているという状況にもなっている。広域化するところと一方では政府が基礎自治体をもってして再編する、ということが必要だと思いますね。

    Q4:今回の「政権交代」をどう感じていますか?

    民主党に対する大賛成「Yes」ということでは多分ない、と思います。むしろ自民党に対する「No」が大きかった、という風に思いますね。じゃぁ自民党に対するNoって何だったの?となると、僕の分析だと、先送り、骨抜き、微調整という自民党の得意芸が、有権者からしたら「これじゃ変わらないなぁ」と最終的に判断されたと思うんです。先送り、骨抜き、微調整ということは、いろんなところで言われてきていて、表面化して現象として出てきていた、年金制度はかねてから若い人が少なくなるんだからもたないよと言って来たわけですから、受給年齢を引き上げるだとか、税の投入を増やすとかこういう議論しか出来ない。抜本的な見直しをしないから、大丈夫なの?と不安が募るだけなわけです。もっと整理するならば「役人政治」ということでしょう。先送り、骨抜き、微調整は、本来、役人がやる手口なわけです。それを自民党は今まで肯定してきてしまった。結局、冷戦構造が終わった後に、自民党は自分達がどんな社会を創るという
    価値提示が出来ないまま、既得権の擁護政党となってしまったわけです。


    民主党はそれに対して、お金の流れを見直す、透明度を高くする、政策設定を見直しそのプロセスをわかるようにするという「政治主導」。これは政策決定のプロセスを変更するということですよね。そういう意味では民主党は自民党の政治に対するいくつかのアンチテーゼというのが形になっている、そこに対する期待があると思います。ただし民主党自身にもやはり、どういう国をつくっていくのか、目指していくのかという大方針が見えてきていない、これからの民主党政治にとっての懸念材料になっていると僕は思います。

    Q5:自民党の再生のポイントと、民主党が政権を維持するポイントは?

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    民主党はなによりも、今国民の皆さんと約束したことが出来るのか、お手並み拝見だと思います。今までは「自分たちが政権とればやる!」と約束してきたわけで、政権とれば無駄遣いを減らせる、そこで予算は作れると言って来た。そのことを立証というのができるか否かがポイントでしょう。今まで約束してきたことがどんどん目に見えて、実感できるようになればとりあえず、維持できるでしょう。国の大方針はさておいてもね。でもそれができなければ、たちどころにすべて厳しくなる。

    自民党の再生ということになれば、僕は国をどういう風にしていくか、というのは自民党のほうが民主党よりよほど出しやすいと思いますよ。寄せ集めと違いわかりやすく言えば「保守政党」なんだから、冷戦構造が終わったあとなんら日本の国の方向性について打ち出せなかった、そこを打ち出していく必要があります。

    グローバリゼーションが進んでいる、このことは止めようがないんですよ、インターネットを日本が遮断するわけにいかないワケです。グローバリゼーションが進むというのは、なにも我々が英語が出来る国際人になるということではなく、なによりもわが国日本人としての矜持(きょうじ)をしっかり持ち、日本とは何かを学び、そこに自分たちのアイデンティティーを持ち、それを伸ばす産業、それが世界に役立つ戦略、こういうことをしっかりと打ち立てるからグローバリゼーションの中で生きていける。どの国もそういうことだと思いますし、自民党はここを出せるかどうか、だと思います。

    いずれにしても僭越(せんえつ)なことを言っていますよね(笑)「お前に言われる筋合いがない!」と怒られそうですけど。

    Q6:企業献金廃止に反対ですか?賛成ですか?

    基本的には廃止した方がいい。企業献金にも善良なるものがある、けれどそれを確かめる術がない。問題なのは、個人献金が根づかないという日本の風土があると思う。賛否両論が山ほど出ると思うけれど、システムを作らないとダメだと思う。例えば、納税の額にいくらか上乗せして、その上乗せした政治資金という分は有権者が任意で選ぶ。そういうシステムを作らないと、どんどんアングラにもぐりこむことになると思う。

    政治に金がかかる、と言うじゃないですか。ヘンな言い方だけどこれは本当だし嘘だと思う。嘘から言うと...特別にかかるわけじゃない、いまどき金を配るとか、一部やっている人もいるかもしれないけれども、今はほとんどいないと思いますよ。毎晩10万くらい食事したり飲みに行ったりする人はいないし、それは誤解であり嘘である。

    本当だというのは...活動すればお金がかかる、電話やファックスを使い、事務所を借り、車で移動する。そうすると家賃を払い、自動車を買い、ガソリン代を払い、電話料金を払い、保険料を払っているということなんです。これはビジネスなら、売り上げの中からコストとして回収できるわけです。スーパーだってチラシを撒くのは、あれは売り上げがあるからチラシを入れる。そのチラシを見た人が買ってくれるからチラシを入れるんです。でも政治家のチラシは見ても売り上げはないですよね、だからその部分をどうやって賄うか、だけなんですよ。だからその意味では資金は必要、お金はかかる。

    賄い方を個人ベースにするのは僕は大賛成なんだけれども、この賄う仕組みを作らないとアングラマネー(帳簿に載せない金、個人献金を装った事実上の企業献金)に流れると思う。

    Q7:国民・支持者にいまいちばん言いたいひと言を!

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    目を覚ませ!ということでしょうね。表面のうわついた議論だけをやっていると、どんどん日本は危うくなると思う。高速道路が千円になったというのも、(民主党は無料化を言っているので横におかせてもらいますが)ガソリン税その他、今まで道路にかけてたもの、別途ソリューションが考えてやるのがポイントだと思うけれど、少なくとも今の千円は穴埋めしているんです。公金から我々が支出しているわけで、喜んでいる場合じゃないと思う。政策の各論が、マスメディアで取り上げて、それに関して関心を寄せて、これが終われば次の話題と流れる風潮、これはとても危ういと思う。

    自民党の再生、民主党の懸念で述べたように、僕は日本という国はどういう風な国を目指していくか、僕は「自立」と価値提示をしたけど、しっかり国民に訴え、だからこっちのコストは削る、こっちは値上げをする、これは続ける、これは休みにする、というような、ひとつひとつの判断をしていくことがないまま、マスメディアの風潮に流されるようではいい国をつくる、には繋がらないと思う。

    僕は今回、「よい国運動」というのを、国民みんなで意識をし、やって行こう!と立ち上げて、といっても僕は下働きなんですが、どうやってこの運動を多くの人に知って貰い、日本の現実を見るか、というようにしないと、政治は変わらないと思うんです。借金は国民の金融資産だから大丈夫、そんなレベルじゃないんです。税収の二割は金利の支払いだけに使われているような国で、どんどん財政の自由度が減り、借金を返す割合ばかり増えている国なっています。借金を国民の金融資産だからと悠長にかまえている時代じゃない。経済大国二位、これも来年は三位に転落する。何らかのきっかけでトリガーがひかれたら、大暴落を始めるワケですから、こういうことを考えて行動しなければならない。それなのに政治家は手当てをつけます、無料にします、耳に優しいことを言っている。横浜の時もそうですが、真面目にやっている知事や市長達は口に苦いことを言い、耳に痛いことを言う、だから嫌われもする、誹謗中傷にも遭う、それでもやらないと社会はよくならない。最後に国民がそこに目を覚まさないと政治は変わらない、そう思います。

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