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自民党総裁選から組閣に至るこの1カ月ほどで、自民党内で誰が男(あるいは女)を上げたか(あるいは下げたか)を肴に、ベテラン政治記者、自民党中堅秘書と3人で一献傾けながら評定会を開いた。最大の基準は「政治家の言動・出処進退は“鮮やか”でなければいけない」ということで、それに照らすと、上げた方の筆頭は満場一致で野田聖子。あの誰もがうつむいてしまっている沈滞した状況で、敢然と手を挙げて、しかも、官邸ばかりか縁の深い岸田派の幹部までが総がかりで潰そうとする中で、一時は推薦人を19人、「あと1人」というところまで集めたのは立派だった。これで「初の女性総理」にいちばん近いポジションを確保したと言えるだろう。
ウジウジする者は指導者にも参謀役にもなれず、ハキハキした者は伸びる。その明暗がくっきりと分かれたのがこの1カ月だった。▲(日刊ゲンダイ10月15日付から転載)
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<高野孟(たかの・はじめ)プロフィール>
1944 年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレ ター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェ ブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊。2002年に早稲田大学客員教授に就任。05年にイ ンターネットニュースサイト《ざ・こもんず》を開設。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
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上げた方のもう1人は小泉進次郎前復興政務官で、安倍から直接「入閣を」と言われて断って、官邸から「ならば首相秘書官は?」と打診されて、それも断った。政権浮揚の目玉に何としても起用したかった安倍の思惑を百も承知でキッパリと断れる、父親譲りのこの豪胆さが光った。
反対に、下げた方の筆頭はその岸田派を率いる岸田文雄外相。宏池会本来の軽武装・経済重視のリベラル寄り路線を棚上げにして安保法制成立の先頭に立って奮闘し、野田に同調しそうな自派の若手を必死で切り崩して安倍への忠誠心をアピールしたものの、改造前は5人もいた自派の閣僚で残ったのは岸田本人ただ1人。「これでは派に帰って説明ができない。せめてもう1人、宮越光寛(同派事務総長)の初入閣を」と岸田は安倍に泣きついたが、無視された。安保法制への貢献は認めるけれども、野田の立候補を事前に止められなかった派閥領袖の責任は重いという、一種の懲罰人事だろう。
同じくらい男を下げたのは石破茂地方創生相だ。このタイミングで派閥結成に踏み切るからには、来夏参院選後に向けて相当な覚悟を固めたのだろうと思いきや、だらしなく留任して閣内に留まった。どうするつもりかハッキリしないので周りも大迷惑で、かつては40人ほどいると言われた石破系のうち派閥に加入したのは20人、初会合の出席者は何と11人だった。地方創生の仕事も、新設された加藤勝信「1億総活躍」担当相の副大臣といった位置づけになって、ますます出番がない。総裁レースからはほぼ脱落したと言えるのではないか。
ウジウジする者は指導者にも参謀役にもなれず、ハキハキした者は伸びる。その明暗がくっきりと分かれたのがこの1カ月だった。▲(日刊ゲンダイ10月15日付から転載)
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