「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
今回は、3月20日(月)に配信した、VRエバンジェリストGOROmanさんとの対談テキスト(全3回)をお届けします。
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次回のニコ生配信は、6月5日(月)20:00の「小飼弾のニコ論壇時評」。旬のニュースをズバズバ斬っていきます(21:00頃からは、通常の「小飼弾の論弾」になります)。
お楽しみに!
2017/03/20配信のハイライト(その1)
- VRエバンジェリスト GOROmanっていったい何者?
- 元祖ファミコンで、バーチャルリアリティ体験
- 初音ミクは恐れ多くて、エロコンテンツにできない
- VRで盛り上がる中国のアーケード市場
- 投資家が群がるシリコンバレーのVRイベント
- 『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナルスケール-』はどうだった?
- VRやARが生活の一部になるために超えなければいけない壁は?
- Google Glassはなぜ失敗した?
- 服もVR/ARでいいんじゃない?
VRエバンジェリスト GOROmanっていったい何者?
山路:今日はゲストに、VRエバンジェリストのGOROmanこと、近藤義仁さんをお迎えしております。
GOROman:はい、よろしくお願いします。
山路:VRエバンジェリストっていうのは、かなり謎な肩書きなんですが。GOROmanさんは、VRのへッドマウントディスプレイ(HMD)を開発するOculusが日本に上陸してくる時に、Oculus Japanの立ち上げに関われたんですね。
GOROman:事の発端は2013年です。Kickstarterというクラウドファンディングで、Oculus Riftの最初の開発キットDK1を手にした瞬間、ついに欲しかったやつが来た!と思ったんです。それから勝手にエバンジェリストを名乗り、二宮金次郎みたいに常に(VR用機材を)背負って、飲み屋でも何でも、偉い人でもなんでもHMDを被らせるようになりました。
山路:Facebookが買収したOculusにジョインした時点で、GOROmanさんはすでにご自分の会社を作られていたんですよね。
GOROman:僕は2010年からXVIという会社をやっているんですが、Facebookに入る条件が自分の会社には行くなということでした。
山路:社長なのに(笑)。
GOROman:自分の会社から報酬をもらわないという契約で、正社員としてFacebookに入ったんですね。それで、Oculusのジャパンチームもできたという感じなんですけど。
山路:Oculusに関われてから、初音ミクをバーチャル・リアリティー上に再現する「Mikulus」などを作られています。それらは、Facebook社員としての活動だったんですか。
GOROman:まったく関係なくて、趣味です。Facebookでは、会社行ってネット見ていただけですね。ほとんど。
一同:(笑)
GOROman:エバンジェリストもやりたかったんですけど、その活動はあまりできず、どちらかというと技術サポートみたいな感じの仕事をしていましたね。とにかく外部に言っちゃいけないことが多くて。
小飼:エバンジェリストには一番きつい環境じゃない?
GOROman:そうですね。ちょっと病気になりそうでしたね。入ってすぐやめようと思いました。それでも、Oculusが発売されるまではやろうと思って2年くらいはいましたよ。
山路:そして、2016年末に退職されたと。
GOROman:クリスマスイブに辞めましたね。覚えやすいかなと思って(笑)。厳密には、Oculus Touchというのがリリースされた時に辞めたんですよ。
山路:これからはMikulusに専念するみたいなことをおっしゃられていましたが。
GOROman:そうなんですよ。でも、元祖ファミコンを改造するのに、今ハマっていて。
元祖ファミコンで、バーチャルリアリティ体験
山路:このファミコンは、バーチャル・リアリティーの話とつながってくるんですか?
GOROman:つながりますね。昔のファミコンゲーム、例えば、『スーパーマリオ』を遊ぶとするじゃないですか。ブロックとか割った時とかに、MicrosoftのHoloLensとかでブワッといっしょに効果が出てほしいわけです。そうすると昔のレトロゲームが、今風のエフェクトで楽しめる。それをやりたいんですね。誰もやってないじゃないと思うんですけど。要は、ファミコンと同期を取って情報をインする。『ゲームセンターあらし』みたいなことができると思って。
小飼:「炎のコマ」とか。
山路:すごくそれ面白そうだ。
小飼:でもバーチャルキーボードで、ファミリーベーシックとか辛そうだな。
GOROman:辛いですね(笑)。コントローラーとかは今まで通りで、画面から出て来るものを、シンセサイズするというか拡張したいですね。
初音ミクは恐れ多くて、エロコンテンツにできない
小飼:VRといえばエロという話があります。山路さんも展示会に行ったんでしたっけ?
山路:秋葉原で最初に開催された「アダルトVRエキスポ」は、会場の前まで行ったんですけど、あまりにも人が多くて中止になり、入れなかったんですよ。
小飼:そうでしたね。でも思ったよりも流行っていないというか、本来エロとデジタルの相性というのは、とってもいいはずなのに、動画を見る、見られないくらいで止まっちゃっているというのは不思議だと思うんですよ。
そういえば、この前、カナダの企業がスマホと連動するアダルトグッズのデータを無断で収集していたという事件がありました。
GOROman:細かな動きみたいなものまで、メーカーに筒抜けになっていたっていうやつですね。
小飼:そういうのって、PS3の頃に出ていてもおかしくないじゃん。PS3が出た頃、Bluetoothを活用して大人用コンテンツを作ればいいと僕は書いたんですけど、全然そういう風にはなりませんでしたね。
山路:不謹慎かもしれませんけど、Mikulusの進化の先が、そういうエロティックなものになる可能性はあるんですかね。
GOROman:僕は、恐れ多くてできないですね。菩薩像みたいな人なので。心を洗われるみたいな。
小飼:身体を洗ってくれなくてもいい?(笑)
山路:初音ミクを選んで、VRコンテンツを作っていこうと思ったきっかけは、何なんですか?
GOROman:僕は「ニコニコ技術部」が好きでよく見ていたんですが、大体素材にミクを使ってるんですよ。最初はみんな使っているから使っていただけなんですが、僕もだんだんハマってきました。
VRで盛り上がる中国のアーケード市場
山路:VRはよく新聞などでも取り上げられますが、現状の盛り上がりはいかがでしょう? PSVRが昨年末に出たことが一番大きいんじゃないかと思うんですけど、開発者の熱気はどこに集まっているのか。あるいは、MicrosoftのHoloLensが大注目だったりするのか。
GOROman:この前韓国に行ってきたんですけど、国ごとにそれぞれ特徴があって、面白いです。ビジネスの温度差がすごくあって。例えばこの前、韓国のVRエキスポというのに行って、登壇をさせてもらったんですよ。で、アーケードとか、とにかく何億も使ってそうなコンテンツが、すごくいっぱいあって、ちゃんとビジネスとしてVRをやろうというスタイル。これに対して、日本だと「面白いからやる」という人が多いですよね。
小飼:まだまだ、これで一儲けという風にはなってない。
GOROman:はい。どちらかというと昔の8ビットパソコンにプログラミングコードを打ち込んで「面白いよね」とか言って見せ合っている、みたいなフェーズだと感じるんですよ。
小飼:確かにCPUをガンガン使う、いわゆるゲーミングPCを使わないと遊べないようなゲームコンテンツっていうのは日本だとイマイチパッとしないですよね。
GOROman:難しいですよね。リソースを使い切るって意味では。
小飼:PS4も海外の方が売れていたし今も売れています。
GOROman:実際そうですね。北米で一番売れていますよね。もう4000万台くらい行っているんじゃないかな。やっぱり国内市場がある意味シュリンクしているのは事実なんで。
小飼:PS4はものすごく成功したプロダクトなのにあんまり大きくは取り上げられてないですよね。PS2の時が一番社会的には着目されてそのあと地味になっていったイメージがあるんですけど、実際にPS4というのは今やソニーの屋台骨を支えるプロダクトですからね。
GOROman:僕もPS2が出てきた頃は、PS2のゲームフォロワーの1人として、盛り上がりを全部リアルタイムで見ていたわけですが、PS3は買わなかったですからね(笑)。
小飼:なんと!
GOROman:ゲーム開発者としてゲーム業界にいて「もうコンシューマーいいかな」みたいに思っちゃったんですね。ゲーム機がPCみたいになってきて、だったらPCでいいじゃんみたいな。
山路:韓国のVRについての熱気はどうでしょう?
GOROman:ビジネスにしようという意気込みがすごい。何故かと言うと、韓国の人口はそれほど多くないので、中国をターゲットにしているんですよ。ターゲットは中国のアーケード。
山路:ゲームセンターみたいな?
GOROman:はい、そういうVRアーケードがもう3000店舗くらいあるらしいんですよ。3000から5000あるらしいんですけど。みんなそれを狙ってVRをやっています。
小飼:日本のゲームセンターを見るとVR離れしているというか、昔の方がVRVRしていたというか。例えば、セガのバイクレースゲーム『ハングオン』とか、体感ゲームはちゃんとバイクにまたがっていたし。
山路:今だとガンダムの「戦場の絆」ぐらいですかね。VRっぽいものというので稼働しているのは。
GOROman:でもどうなんだろう。「VR」の定義にもよりますけどね。
「UFOキャッチャー」(コメント)
小飼:それそれ。
GOROman:日本はUFOキャッチャーとプリクラとパチンコみたいなのばっかりですね。ゲーセン行くと。あとコインゲーム。
小飼:いやでもわざわざゲームセンターまで行ってガチャります?手元で出来るのに。
GOROman:手元でほとんど遊べるようになったのに、ロケーション移動することが結構ナンセンスになってきたなというのは感じます。僕は小学校からずっとゲーセン行っていましたが、当時はゲーセンに行ったら先生に殴られる時代ですよ(笑)。
小飼:(笑)
GOROman:ドラゴンバスターとか、インベーダーとか、やっていたんですけど、ゲーセンのイメージがすごく悪かったですよ、当時は。でも、ハングオンとかは、ゲーセンに行かないとできなかった。
小飼:確かに『アフターバーナー』は、駄菓子屋には置けないな。
GOROman:そうそう。やっぱり体感ゲームは場所を食うし、ギミックもすごいんで。
小飼:場所も食うからこそ、わざわざゲームセンターに置く価値があると思うんですけど。なんで、日本のゲームセンターには、行くまでもないコンテンツばかりあるんでしょうね? まあUFOキャッチャーは行く必要があるけど。
山路:遊ぶ文化みたいなのが日本では大分変質しちゃって。
GOROman:変わりましたよね。ゲームセンターがデートスポットみたいになっているんですよね。
小飼:一人で行くところではないと。
GOROman:僕が行っていた頃、ゲーセンといえば真っ暗で、ヤンキーに絡まれるところだった。そのドキドキ感の中、格ゲーをしないといけなかったのに。今はそういうのもないんじゃないか(笑)。
山路:昔のゲーセンは、リア充の行くところではなかったですよね(笑)。
GOROman:そうそう。むしろゲーセンにはモテ要素なんて1ミリもなくて(笑)。
小飼:最近のゲームセンターは、シネコンの隣とかにあったりする。親が映画見ている間に子供を放し飼いにしとくとかそういう使われ方をしていますよね。
GOROman:「アミューズメント」という言い方をするようになった辺りからすごくゲーセンの印象が良くなりました。昔は不良がいてタバコ吸っている奴がいてそいつらにタカられるというイメージでしたが、プリクラやUFOキャッチャーで一緒に遊べる、デートに使えるよと明るいイメージに変わった。多分ルーツが全然違うんですよ(笑)。
昔のモニターってそんな明るくないから、部屋の照明落として、インベーダーとかをやっていましたけど。暗くしないとゲームができなかったんですよね。
小飼:しかも色つけられるほどCPUパワーがなかったから。
GOROman:なかったからセロファンですね。
小飼:ブロック崩しの時とか(笑)。そうそうそうそう。
GOROman:セロファンて天才ですよね(笑)。白黒しか出せないんだからセロファンで色つけりゃいいじゃんみたいな。
山路:昔のインベーダーとかのそういうやつでありましたね。
小飼:でもあんなショボいものでも大の大人が100円玉をガーッと積んでハマっていたわけですよね。
投資家が群がるシリコンバレーのVRイベント
山路:アメリカにも行かれました? どうですか本場アメリカのVRの盛り上がりは?