「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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今回は、2020年02月04日(火)配信その2をお届けします。
次回は、2020年3月31日(火)20:00の配信です。
お楽しみに!
2020/02/04配信のハイライト(その2)
- 暗号について心配すべきなのはソフトウェアバグ
- ブレグジットで英語はどうなる? と「通貨の力」
- 100年後にも価値が落ちない『息吹』と問題提起する『21 Lessons』
- オリンピックへのコロナの影響と「論弾中国ロケ」
暗号について心配すべきなのはソフトウェアバグ
山路:読者から質問が届いてたので。先にこれお答えしますか。
量子コンピュータの回、拝見しました。量子コンピュータの悪影響といえば、素因数分解を使った暗号が破られてしまうという話がよくされていると思います。」これについて疑問があると。「量子コンピュータでhttpsの暗号を高速に敗れるようになったら、仮に強力な新暗号方式が開発されたとしても、インターネット上の過去のトラフィック、旧方式で暗号化されたトラフィックを保存してる悪意ある人たちが、後になってそれらをのんびり復号することで、センシティブなデータがすべて流出してしまうということは起きないのでしょうか。
小飼:あのですね、ストレージもただじゃないんですよ。
山路:ただそのストレージとかも、膨大に安くなってたりとか、あるいはテープメディアとかでも新しいやつが出てきて、低コストなメディアとかどんどん出てたりもする。
小飼:だけれども、もっとも人気のあるYouTuberというのは、どれくらい見られているかとして、控え目にみて100万のオーダーとしましょう。暗号化を解くというのは、その100万ストリームを全部傍受して、それを記録しておかなければいけないんです。それだけで100万ですよ。もちろんそれはhttpsなので。昔のSSL通信も全部傍受しておくというのは、ストレージの無駄遣いもいいところです。
だからこれが暗号化されていないのであれば、100万ストリームというのは、全部同じシグナルが流れているわけですから、1まとめに出来るわけですね。100万だろうが、10億だろうが、1つの番組なんですけども、SSLで通信しているということは全部鍵が違うわけです。だからけっこう凄いことなんですよ。
山路:それはなんか、それこそ将来的に、ストレージで仮にじゃあ……。
小飼:だからNSC(国家安全保障会議)でも
山路:そんなことはできない。
小飼:そんなストレージは世界にどこにも存在しない。
山路:じゃあ、これに関して、この読者の質問に関してはまあ杞憂といっても大丈夫?
小飼:ほとんどの人に関して。こういったものの傍受というのは、やっぱり1番大事な人々を狙うわけですよ。VIPを狙うわけですよ。だから一般兵士の動向というのはどうでもいいけれども、山本五十六提督がこれから飛びますというのは、凄い耳を傾けているんですよね。だからどうしても情報というのは、インフォメーションの段階ではどっちも同じ1バイトでも、インテリジェンスの段階になると、ぜんぜん価値が変わってくるんですよね。
山路:ああ、それは普通のYouTubeのやつなんかをキャプチャーしてそんなに取っておくことなんてあり得ないだろうという、なるほどね。じゃあまあ本当に。
小飼:だからそれはあなたがVIPだったら心配しなければいけない。
山路:ということでじゃあ。
小飼:だけどもなあ。ねえ、カンザスシティがカンザスだと思ってて、それをそのままTweetしちゃう、世界最強の軍隊の最高司令官もいるわけですからね。
山路:アハハ
小飼:だからどう考えても、コスト割れしちゃうんですよね。でも、もしその通信が暗号通貨の送金情報とかだったら、どうだろうと。だからエフェクティブな盗聴をするためには、そもそも何が通信されているかというのを、当たりを付けなければいけない、たとえ量子コンピュータがあったとしても。
山路:うんうん、そうか量子コンピュータが。
小飼:暗号をクラックするというのが安くないんですよ。量子コンピュータといえども。もちろんまだないですよ。しかも量子暗号というのがありますからね、今は。
山路:なるほどね、じゃあ本当に心配はしなくてもいいんじゃないかと、現実的には。
小飼:うん。だから盗聴しても意味がないレベルまでには、暗号化が施されていますからね、今どきは。
山路:ということでいちおう質問者さんは安心して下さいという感じですかね。
小飼:ただし、あなたが。
山路:VIPである限り。
小飼:そうそうVIPであったら、内閣官房にいらっしゃるとか、米国の上院スタッフにいらっしゃるですとか、あるいは中南海にお勤めですとか、そういうのであればちょっと心配がいるか、ちょっと覚悟はしておけですね。そうでないほうに関しては、今のところは。それよりもバグのほうが怖い。
山路:バグ?
小飼:暗号に関するライブラリにバグが出たから、この間Microsoftがやらかしたじゃないですか。楕円暗号で。あれは本当に際どいバグで、素因数分解ではなくて、楕円曲線暗号なんですけども、要は正しい鍵でなくても、開けられる鍵が簡単に見つけられちゃうという。
山路:へえ。
小飼:そう、だから合鍵、簡単に作れちゃうという。だからそういうところのバグっていうのは、本当に怖い。だから今や、セキュリティでも恐るべきなのは、ハードウェアのほうでよりも、むしろソフトウェアですよね。SSDとかもファームウェアにバグがあったお陰であー! 、というのは本当にバグが怖い。
山路:じゃあこの、そういう通信なんかに関してはあんまり。
小飼:量子コンピュータでクラックされるよりも、あなたが今お使いのソフトウェアのバグを恐れなさいという。
コロナウイルスよりもインフルエンザのほうが怖いんだぞというのに、似たところはありますね。もっと怖いものが世の中にいっぱいあるのですよと。
山路:なんかむしろ不安にさせてしまうような、結果的に。結果的に量子コンピュータを待たなくても、怖いこと起こるよと言っていることになりませんか、という気がしますけどね。
小飼:棘を抜く痛みを紛らわせるために、腕を切り落とそうとしている(笑)。そこまではいかないか。却って不安を煽ってしまった。
山路:次、どうします? 『息吹』のほう、いっちゃいます? それともブレグジットのほう、先やります?
小飼:ブレグジットのほうが先かな。
ブレグジットで英語はどうなる? と「通貨の力」
山路:じゃあブレグジットのほう、いきますか。とうとう本当にやっちゃったぞと、ブレグジット。なんか歴史を見ている感じがありますけどね。1月31日でしたっけ? 1月31日にイギリスが正式にEUから離脱をしたという。始めはビッグベンとか、時計台鳴らしてお祝いするつもりだったんだけど、それは結局もうやめてっていう。
小飼:だって、ブレグジットするする詐欺状態が、ずーっと続いていたわけだよね。
でもしましたというふうにやっているだけで、じゃあ今後どうするの? というのは、まだブランクで、だから本当のブレグジットというのは1年後なんだよね。来るのが。今のところモラトリアムなんだよね。だからとりあえず何も決まってないので、決まってないことに関しては、今まで通りやりますというのが、今のところ。
山路:面白いところでは、このブレグジットの影響が出るかもしれない。この番組では1回取り上げたかもしれないんですけども、EU離脱したことで英語がEUの公用語でなくなるかもしれないというのが、ちょっとニュースとして出てまして。こういうこと、起こり得るんですかね。つまりEUの公用語から英語が外れちゃうっていうことってあり得るんですか、かなりEUの首脳とかも英語で話してたりするじゃないですか、そういう議題なんかも。それを今さらフランス語とかにするのか……。
小飼:でも英語が圧倒的だから、数カ国語は皆さんお話になるんですけども、その中で全員が共通して話すものというのは、英語になっちゃうでしょうね。数カ国語話すうちの1つは英語なんですよね。
「国民はどうせ使い続けるでしょ」(コメント)
山路:現実的に出来ないですよね、ドキュメントとか。
小飼:強烈な意思を持って、たとえばラテン語を復活させるとか。
山路:それだったらエスペラント語のほうがまだマシのような気が。
小飼:でもフランス語とドイツ語は、逆に駄目だろうな。
山路:対立が、どっちが主導権とるかみたいな。
小飼:どっちが主導権をとるかではなくて、特定の言語を贔屓しちゃうというので。
山路:なんかそれを考えると、イスラエル人て凄いですよね、言語を復活させて。
小飼:そうなんだよね。ヘブライ語って一時ほとんど死んでたんですけどね。
山路:発音もだいたい、なんというかよくわからんみたいなものにもなっていたわけでしょう。今の別に近代、今、話されたものって、昔に話されたものと同じかどうかもわかんないわけでしょう。
小飼:たぶんかなり違うんじゃないかな。
山路:強引に作ったわけですもんね。現代のそういう言葉、表せるように、そんな覚悟を持ってEUができるとは。
小飼:たとえば日本の義務教育では、ユリウス・カエサルという名前で教えられている人がいますよね。英語では、Gaius Caesarと言うんですけれども、でもなんでカエサルっていうかっていうと、Cをカキクケコで発音するというのは、ドイツ人が考えたラテン語であって、あくまで。母国語がアルファベット圏の人は、自国語読みしちゃうんですよね。
山路:へえ。
小飼:だからイタリア人からすれば、チェザーレなんですよね、彼は。たぶんイタリア人、もちろんローマは、今だったらイタリアにあるところなんだけども、イタリア人の読み方が1番近いはずなんだけど、でも日本ではドイツ人が読むラテン語を。でも本当のところどう発音してたのかっていうのは、やっぱりわからんないね。
山路:読み方わかんないやつを現代に復活させるというのは、なんかそこで一揉めしちゃいそうですよね。
小飼:でもそれやって欲しいな。
山路:アハハ、言語的に、学問的には面白い、凄い面白いんでしょうけども。
小飼:でも学問的ではなくって、イスラエルがヘブライ語を復活させたというのは、まさに学問とは真反対じゃないですか。
山路:うーん、政治的統一。
小飼:まさに、政治政治…、民族民族……。ですよ。建国建国…ですよ。
山路:凄いエネルギーだよな、しかし。
小飼:凄いエネルギーですね。
山路:普通、そんなこと思いつきもしないじゃないですか。新しく国を作るのに、言語復活させるとか、作るとかって、考えつきもしなかった。怖いような、怖いほど凄いなみたいな。
小飼:でもな、それ見てみたいな、というのも、英語って決して習いやすい言葉ではないんですよね。
山路:何か規則に不規則な事が多すぎる、例外が。
小飼:例外が多いですし。発音も難しいほうに入りますし。
山路:thの音とか。他の言語にない音とかあったり、文法もいろんな言語のやつが入り混じってて、おかしなことになってたりしますよね。
小飼:そうなんですよ。だからあんまり枯れた言語ではないんですよね。たとえばラテン語はもとより、中国語とかと比べると。
山路:いやあまあ、しかし、こんだけインターネットでなんというか、コンピューターアシステッドな翻訳だったりとか、そういう面もあるから、何かある意味、英語のいい加減さというのを機械が補ってなかなかそこのところの不便を人間は意識しづらくて、そういう覚えやすい言語を作ろうという気概が持てないんじゃないかという気がしますけどもね、逆に。
小飼:実際問題、これで英語を母国語とする国というのは、EUからはなくなったんですけども、見ての通り実生活において、連合王国でないところでも使われてますからね。たとえばブリュッセルの市の議会というのは、敢えて英語にしたんですよね。確か。
山路:ああフランス語系とオランダというか。
小飼:そうそうオランダ語系と、どっちからも中立であろうということで。
山路:なるほどな。
小飼:中立でよく使われるということで。だから市議会、英語でやってたはずですよ。
山路:へえ、なんかまあEUのほうも公用語が外れるっていうのは、なさそうだな。
小飼:というよりも、EU英語が出来るかもしれないですよ。
山路:もっとシンプルにした。
小飼:はい、EUで話されているのはイギリスっぽい英語なんですけども、当然EU市民というのは、ちゃんと自国語訛りで話してますからね。
何ヶ国語話せる人というのも、むしろポリグロットほど、キチッと訛っているんですよね。だからけっこうイタリアで感心したのは、イタリア語訛りのドイツ語を聞けたこと。
山路:アハハ。それは聞き取りづらそうな難しそうな。へえ。あとブレグジットの今後の影響、この番組でも何回か取り上げてる、弾さん的には今後イギリスっていうのは、どんどん安い労働力の供給源になっていったりするんじゃないかみたいな。
小飼:まさに島国というのは、似ますね。
山路:日本が今たどっている道と。
小飼:イギリスのほうが先に衰退したんですよね。
山路:タイミング的にということですか。第2次大戦後とかもアメリカとかが圧倒的に影響力増してきて、代わりにガーッと地盤が沈下していったという。
小飼:そうです。だから確かにイギリスから見ると、まだEUがECだった頃というのは、まだ世界No.1は米国に持って行かれたけれども、欧州No.1はまだうちだろうというふうに言えたんですけども。どうあがいてもドイツよりも。
山路:今それこそブレグジットしたイギリスなんか、日本にもけっこうアプローチして、もしかしたらTPP入るんじゃないかとまで言われるようなことになって。
小飼:なんか凄いな、負け犬同盟っぽいよな、それって。なのにあまり衰退していない、輝いているように見えた1番の力というのは、さっきも言ったように英語なんですよ。
山路:ああなるほどね。なるほど。イギリス文化みたいなものって、英語が強いから。
小飼:だから文化的に楽できたんですよね。
山路:でも今後そういうのっていうのが弱まっていく、強みみたいなものはイギリスの存在感だったりというのは、やっぱり低下は避けられないと、弾さん的には思います?
小飼:だから相対的に抜かれていくというのは、間違いじゃないんですよ。中国が日本を抜いていってというのは、それ当然のことですよね。
山路:人口も、人口動態が。
小飼:そうです。でも中国はあれだけ大きくても、まだ日本のたかだか2倍なんですよ。だから人口比で言うと5分の1なんですよ。まだ。
山路:そうかそうか。
小飼:アメリカを抜いた時点でも、日本の3分の1。
山路:ああ。
小飼:アメリカを抜くのは確実、ほぼ確実なんですけれども。じゃあ1人あたりでというと、また別の問題になってくるわけですよね。その頃にはインドも日本を抜いているはずです。イギリスを見てみたら、とっくのとんまに追い抜かれているわけですよ。
山路:アハハ、とっくのとんま。
小飼:はい、とっくのとんまに。韓国にも抜かれてますし。
山路:ただ1人当りのGDPで見ると、なんかまだまだというのは、1人当りのGDPで中国とかインドとかが日本だったりとか、その辺を抜くことってあるんでしょうかね?
小飼:どうなんでしょうね。
山路:なんか人によっては、それこそそのバスに乗り遅れた国っていうのは、難しいんじゃねえのみたいな、中進国の罠ですよね、いわゆる。
小飼:でもどちらかというと、国ごとというよりも、国の中での差というのが凄いので。皆さんご存知の通り中国人のお金持ちは、日本のお金持ちよりもずーっとお金持ちですし、ちゃんとお金持ちっぽく振る舞ってますし。
その一方で現金まだ見たことがないという人たちが、まだいっぱいいるんですよ。まだ日本の人口と同じか、それ以上はいるはずなんですよね。
インドのダイバーシティはもっとだもんな。
山路:さらに、中国よりも。
小飼:今年当たり、インドの人口が中国抜くんじゃなかったっけ?
山路:もう今年か、早いな。
小飼:どっちの国にもな、人口統計あやふやなところもあるからな。まあいいや。それでいうと日本もどうなんだろ? って。
山路:統計的なその国での1人当たりGDPってあんまり意味ないかもしれないですけどね、そういうように差が広がっていくんだったら。
小飼:どっちかというと『ファクトフルネス』で4つに分けてたじゃん。あれのほうが実情にあっているように見えますね。
山路:国で分かれるというよりは、その人らのそれぞれの国の収入レベルとかで見たほうがいいんじゃないのっていうような。
小飼:やっぱり通貨で見てみると痛々しいイベントなんだよね、ブレグジットって。
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