「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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今回は、2022年05月10日(火)配信のテキストをお届けします。
次回は、2022年05月24日(火)20:00の配信です。
お楽しみに!
2022/05/10配信のハイライト
- ウクライナ情勢と「ロシア海軍と軍港」「プーチンも謝るレベル」
- 「金本位制の可能性」と日本の景気
- 「ウクライナの戦争は長期化する?」と「マスクにしかTwitterは運営できないかも」
- 視聴者からの質問「コンピューターの作り方」と「本物のチューリングマシン」
- 『戦争は女の顔をしていない』『石の花』紹介
- 「アメリカ最高裁と中絶問題」解説と「高温ガス炉」「パワー半導体」など
ウクライナ情勢と「ロシア海軍と軍港」「プーチンも謝るレベル」
山路:じゃあさっそくなんですが、まぁもうやっぱり今も世界のニュースの半分ぐらいを占めているウクライナ侵攻、なんかその、この前戦勝記念日、昨日か、ロシアあったんだけど、
小飼:なんかえらいスベってたというのか、情報量ゼロみたいな感じで。
山路:あれ、びっくりしたんですけど、ロシアが嘘をつかないと言うか、その戦果を膨らまして言わないほど押されてるってこと?
小飼:そう、だから針小棒大にはするんだけど、たとえば真っ赤な嘘は言えなくなっちゃいましたね。おそらく、情報手段の発達で。たとえばキーウをもう占領しましたとかっていうのは言えないわけじゃないですか。
山路:だけど、マリウポリをなんかもう支配下に収めたぐらいのことは言うかなと思ったんですけど、それも言わなかったってことは(笑)。しかもこれ、未確認情報ですけど、フリゲート艦までまた今度は沈没させられたという話まで出てきて。
小飼:しかも今度、新しいやつね。そう、だから沈没させられたのかどうかはとにかくとして、あのクラスのやつというのはわりと急ごしらえなんだけれども、もう本当に黒海艦隊向けに作ったというやつで、どういうことかって言うと、
山路:違うってこと?
小飼:いや、背景としてまずNATOの東方拡大というのがあって、アメリカの軍艦が黒海にも入ってきたと。アメリカの軍艦が黒海に入ってくるっていうのはどういうことかって言うと、アメリカの軍艦が黒海から巡航ミサイルをロシアの本土に対して撃てるじゃないかと。だから、これを迎撃する手段が欲しいということで、その前にもっと先進的なデザインのフリゲートを作ってたんですけど、ゴルシコフ級って言って。そっちのほうが間に合わないからということで、だから割と手堅く作ったのが、
山路:旧来型というか、
小飼:そうそう、旧来型というのか、まぁでもそれ黒海で作ってたんですけれども、2014年にクリミア半島併合します。なんですけれども、それ用のガスタービンエンジンはウクライナで作ってたと(笑)。
山路:っていうか、それ忘れてたのかお前らみたいな感じなんですけど(笑)。
小飼:そう、だから4番艦以降は、けっこういろんなのが宙に浮いて。
山路:しかもその、そういうガスタービンみたいなことをウクライナで作ってたってことは、その戦艦、軍艦の仕様に関してはめちゃめちゃウクライナ側が細かく知ってるっていうことでもある、
小飼:そういうことでもあります。
山路:特性というか、
小飼:そう、何しろ、じつはウクライナで作ってという(笑)、いや、でもじつはモスクワもそうなんですよね。そう、ロシア海軍っていうのは主に3つの地域に分かれてて、1つは日本でも一番身近なところで言うと、太平洋。これが一番新しい。同じく日露戦争のおかげで日本人にはおなじみのバルト海。そして黒海なんですけども。黒海の艦隊というのは、基本ずっとウクライナだったんですよね。
山路:なるほどね。しかしフリゲート艦を沈められてるみたいなところってのはちょっと笑える話ではありますけどね。
小飼:海軍は笑っちゃいますねと言うのか、今やウクライナはもう実質海軍がない状態なのに海軍力があるという。なんとも不思議な。
山路:これって、太平洋艦隊みたいなものを呼び戻すみたいなことにもなっちゃったりとかするんですか?
小飼:今、ボスポラス海峡通れなくなってます。
山路:トルコの、
小飼:黒海というのは内海なんですよね、地中海の。地中海にしか出入り口がないんですよ。大洋に出ようと思ったら、ボスポラス海峡を渡って、その後ジブラルタル海峡を通って、あるいはスエズ運河を通っていかなきゃいけないんですけれども。
山路:じゃあもう海軍に関してはロシアは今ちょっと詰んでる?
小飼:詰んでるというのか、昔からの悩みだったんですよ。まとも海軍港が欲しいというのは。あれだけ領土が広いのに、3つあるうちの2つというのは簡単に他国に閉鎖されちゃう。で、じゃあ北極海があるんじゃないかと、でも北極海は冬に凍っちゃうわけですね(笑)。
山路:なんかこうサハリンのほうとか、その辺の、あっちのほうとかはなんかこう、海軍港とかにはならないんですか?
小飼:もちろんあるんですけれども、海軍港っていうのはそこに港があればいいというわけではなくって、そこに工業力もなければいけないわけですよね。新しい艦を建造したり、大規模改修をしたりとかっていうのは。じゃあ、どのレベルの港がいるかって言ったら、横須賀とか呉なんですよ。ロシアにとってその規模っていうのは、もうサンクトペテルブルクとセヴァストポリしかないんです。
山路:もうある意味、ロシアにとっては新しい都市を作るみたいな話なわけだ。
小飼:そうそうそう。ウラジオストクでもぜんぜん足りない。じつはけっこうあれじゃないですか、この番組でも不沈空母という、中曽根康弘大御大のセリフが出てきましたけれども(笑)、でもアメリカ海軍が空母の母港にしてるんですよね、横須賀って。
山路:ふーん。そういうレベル、それに対抗できるレベルのものをやらないといけないわけだ。
小飼:横須賀一個分の軍港もないと見ていいですね。まぁでも、でもなんとか核ミサイル潜水艦のパトロールは維持してるらしい。
山路:しかし不思議なのが、こんなに冷戦から時間もあったのに、なんというか、極東でそんな軍港を一つ作れなかったっていうのはなんか、
小飼:いや貧乏だったから、ずっと貧乏だったから。わりと金回りが良くなったのは、
山路:天然ガスの価格が、
小飼:そう、化石燃料のおかげで、それもわりと最近の話で。
山路:そうか(笑)、いや軍事詳しいっすね、本当に(笑)。
小飼:いや、でも逆にロシアの立場になってみると、こんな使いにくい国土ないなっていうのはいつも思いますよ。
山路:でかいわりに、でかいからこそ。
小飼:北の端で。
山路:北極海とか凍ってて、使い物にならない土地もあって、
小飼:逆にアメリカがいかにヤバいかっていうのも、太平洋と大西洋、両方にあるでしょう。しかもその間を結ぶパナマ運河も、まぁ実効支配しているようなものじゃないですか。少しトーンダウンしましたけどね。いちおうパナマというのは独立国ということになってますけどね。
山路:素朴な疑問として、ロシアがその広大な土地とかを全部、その一国で治めようとしなきゃ済む話じゃないですか(笑)、そんなの、
小飼:まぁそれもそうです、それもそうです、土地が多ければいいというものではないっていう格好の例なんですよ、ロシアのあり方っていうのは。
山路:けっこういろいろ笑っちゃうようなことっていうのがロシアのほうでは起こってたりとかして。陰謀論者Qアノンっているじゃないですか、ロシア国内にもQアノンがいるらしいんですけど、ロシア国内のQアノンはプーチン政権の言うことを疑い、
小飼:オウムもいたぐらいだからなあ。
山路:プーチン政権ということを疑い始めたっていう(笑)、他の国の陰謀論者から、いやいやおまえたち何言ってんだって、たしなめられてるっていう(笑)、もうなんか、わけがわからない状態になってるんですけどもね。
小飼:まぁでもこう言うのもなんだけども、なんだかんだ言ってネット時代というのは、嘘をつくのも工夫がいるなというのか、真っ赤な嘘はつけなくなったなと。要するに、本当に火もないのに煙を起こすというのはダメだなと、やっぱり種火ぐらいはいると。
山路:でも、本当に戦勝記念日の話だけど、マリウポリは十分種火ぐらいの話にはなったと思うんですけども、それもならんのかっていうのはびっくりな話なんですけどね。
小飼:いや、本当にもう靴の中の小石みたいな存在なんでしょうね。
山路:マリウポリは今。はー。しかしこう単純に考えて、製鉄所一つでよくあんなに持ちこたえられるなっていうのが、何か。
小飼:大義名分がなくっても、単に戦闘に勝利するというのであれば、ガスなんですけどね、毒ガス一択なんですけど。
山路:それだと大義名分が立たなくなっちゃうわけだ。
小飼:大義名分がないわけでもないんですよね。そう、こう言うのもなんですけれども、全面戦争でないことで、特殊作戦なのでという縛りができちゃってるわけですよね。
山路:だから大量動員もできないし、
小飼:特殊作戦なのに、なんでガスを撒くんだ(笑)、核攻撃するんだっていうことになる、
山路:でもそれを言ったら、虐殺とかはどうなるんだっていう話になるんですけどもね、
小飼:その虐殺にしても、こう言うのもなんですけれども、ホロコーストレベルではないわけじゃないですか。いや、十分にひどいんだけどね、病院に爆弾を落とすとか、
山路:拷問して殺すとか、
小飼:十二分にひどいんだけれども。でも桁が二つ違うんで、第2次大戦のときのやつというのは、今のところは。
山路:ホロコーストの話が出たところで、これ行っときましょうか。プーチンも謝る(笑)、
小飼:プーチンも謝るレベルという、新たな表現が出ましたね。ガンジーも助走つけて殴る級の。
山路:何て言うのかな、なんでそうなるみたいな話なんですけども、これまぁ、ラブロフ外相がヒトラーっていうのはじつはユダヤ人だったんだよみたいな、もう手塚治虫の『アドルフに告ぐ』みたいなことを言い始めちゃって、
小飼:ここ笑っていいところなのだろうか、でもおかしいものはおかしいよね(笑)。
山路:で、イスラエルが激おこになってプーチンが謝ったって、ロシア国内では報道されてないらしいですけど、イスラエルのほうは謝ったって。ただ不思議に思ったのは、そこまでプーチンがなぜユダヤ人に、イスラエルに気を使うのでしょうかと、
小飼:やっぱり敵に回すのが嫌な国家ですよね。こう言うのもなんですけれども、今のロシア四面楚歌って言うかって言うと、まぁそうでもないな、いわゆる西側の包囲網っていうのは、けっこう穴があって、たとえば中国も穴になってますし、インドも穴になってますよね。イスラエルもまぁ、穴とまでは言わないけれども、たとえば、ウクライナのほうでも、どうせならアイアンドームくれって言ってても、それはダメだって言ってたのに(笑)、こう言われちゃったら、軍事支援も、ガチの軍事支援を(笑)、
山路:アイアンドーム、もうウクライナに設置するぞみたいな話になっちゃうかもしれないっていう。
小飼:そうそうそう。
山路:なんかプーチンがウクライナのことをネオナチ、ネオナチってひたすら言い続けてるのって、イスラエルの機嫌をとっている面もあったりとかするのでは、
小飼:いや、それはさすがにエクストリームではないか、いや、もう、もはやあれでしょうね。プーチンの中では、もうナチというのはもはやドイツとかっていうのももう離れちゃって、
山路:俺の敵(笑)?
小飼:そうそうそう、ロシアの敵みたいな。
山路:なんかこう、本当にただの悪口みたいな感じになってますよね(笑)。
小飼:今では、Zマークが、アルファベットのZが、スワスティカの逆卍の代わりになってるけど、でもよく考えたら、ナチにもZ入ってますね。
山路:そうですね、確かに。
小飼:ただそれはじつは略語で、
山路:国家主義社会労働者党でしたっけ、
小飼:nationalなので。もともとナチではないんですね、Zではないんですよね。略語からきました。
「Zの文字が使えなくなったら辛そう」(コメント)
山路:いや本当ですよね、なんかチューリヒとかも社名のロゴを変えなきゃいけないんじゃないかみたいなことを話出てましたね。
小飼:そうだよ、水木兄貴に謝れという(笑)。本当に。ナチズムって言えば、もう、何でもいいかっていうと、ナチズムっていう言葉そのものが使いづらくなっちゃいましたね、おかげで。
山路:なんか更にまたアホなニュースのほうをしておきますと、盗んだ農業機械が使用不能にされちゃったっていう、リモートでコントロールできる、
小飼:まぁでも、今どきの重機というのはウクライナのそれにかかわらず、みんなそうです、日本も少なくともKOMATSUのやつであればリモートロック全部かけられる。全世界の。
山路:ロシアってそういうものが、最新型の農業機械がないから知らなかったみたいなことなのかな、
小飼:その可能性はなきにしもあらずだけれども、でも制裁を受ける前というのは、西側からも買ってたんじゃなかったっけな、イタリアのイヴェコのトラクターとかってなかったっけ、どうでしたっけ、
山路:ただまぁその、ロシア人のリテラシーっていうのが全部の地域で同じじゃないですしね。特にその今、前線に送られている兵隊ってめちゃめちゃ地方の、それこそ水道も通ってないみたいな、そういうちっちゃい田舎の国から送られているみたいな話は聞きますけどもね。
小飼:いや、まぁでもトラクターパクる連中はさすがにわかる、でもどうなんだろうなあ。
山路:あとこの、いろいろまたキナ臭いというか、謎の自殺報道みたいなもんもあったりとかして、これなんか、オリガルヒが自殺報道が相次いでいるという話ですけども。
小飼:もしかして自殺に見せかけて謀殺してるっていう可能性はないのだろうか、資産を接収するために。
山路:というか自殺する必要はあるのでしょうかと、オリガルヒの人たちは。
小飼:いやまぁ、それは彼らの立場になってみないとわからないけれども、でも、目端のきくやつというのは、
山路:もう逃げちゃってる、
小飼:もう逃げちゃってる。
山路:もう今ロシア国内にいるオリガルヒは、
小飼:外貨にできるものは外貨にして、まぁまぁヨットは仕方がねえなみたいな(笑)。
山路:じゃあ今残ってるオリガルヒは、もう完全に詰んだ状態なのかもしれない。
小飼:どうなんでしょうね、いやでも仮に謀殺しちゃった場合というのは、口座にあるお金とかっていうのは出せなくなっちゃうと思うんですけどね。
不動産とかの名義は勝手に書き換えちゃうという荒業が使えるかもしれないけども。何度も繰り返しになりますけれども、ロシア帝国だった頃の、さらに本物のツァーリがいた頃のロシアの拡大主義の時の富の形と、現在の富の形っていうのは違うんですよね。現在の富の形っていうのは、あんまりはっきりとした形を持ってなくて、それは権利だとか知的財産だとかノウハウだとか、要するに人と人との関係で生ずるものであって、
山路:単純にこう金塊を持ち運べたらどうにかなるみたいな話ではぜんぜんないっていう、
小飼:そうなんですよ。
山路:これはあとオリガルヒじゃないんですけど、ロシアの銀行のガスプロムバンク、あるじゃないですか、そこの副総裁がロシアを脱出して、ウクライナ軍に参加したという(笑)、
小飼:ウクライナの生まれだったらしくて。
山路:なんか、すごいですよね(笑)、日本で言ったら、まぁなんていうか、なんだ、みずほの副頭取みたいな感じ、
小飼:そうですね(笑)、そうですね。
山路:みずほの副頭取がなんか別の国行って、なんか軍隊に加わったみたいな感じなんですかね。あと、ちょっとびっくりしたニュース、これウクライナ人の大学教授が、
小飼:ああ、戦場で講義やってるという、
山路:そうそうそう。
小飼:すげえな、そんな、本当『MASTERキートン』に似たような場面が、しかもそれ、2次大戦のときのロンドン爆撃の時の、あくまでも思い出話として出てきたんだよね、戦場で講義してる、授業やってるっていうのは。オンラインでやってるっていう、
山路:しかもそれは、その大学教授は軍隊に所属してるみたいですけどね、あれ(笑)。
「何の学問」(コメント)
山路:学問の内容までは書いてなかったですけどね。
小飼:ちょっとあれなんだよね、スマホに向かって喋ってる場面で、もう少し画面みたいなものが見せたらよかったのに、
山路:それにしてもこう、実況レポートされるだけでも普通の大学の講義の数倍の密度になる可能性がありますね。
「金本位制の可能性」と日本の景気
山路:で、そのロシアのトンデモニュースで、なんかこうこれに尽きるというのはこれなのかなと思うんですけれども、また弾さんの脱力が(笑)、ロシアの中央銀行は否定してるんですけど、ロシアの政府のほうは、なんか、
小飼:確かロシアって財務的には大した国じゃないんですけども、前にも言ったように、人口が半分以下の韓国ぐらいのGDPしかないよとは言いましたけど、それでも基本に金本位にできるほど金は持ってないはず(笑)。
山路:これ単純にその金本位にするっていうことは、金の裏付けで紙幣を発行するってこと、金を発行するってことですよね。つまりは、
小飼:そうそうそう、だから持ってる金の分しか通貨を発行できないということ、裏を返すと。
山路:そんなのでなにも買えないから、またロシアのその例によって嘘つきでいい加減なその札とかをガンガン、仮に金に換えられますよって刷ったら、それはそれで信用されなくなって暴落するじゃないですか。
小飼:どこかに埋まってるのかしらね、
山路:金が(笑)。
小飼:いや、だから北方領土とか。いや、じつはそれが五稜郭にあってとか(笑)、
山路:そこで『ゴールデンカムイ』に(笑)、それ言っちゃってよかったの?(笑)
小飼:いや、それで北海道はロシアの固有の領土だということになってみたいな。
山路:それはちょっと続編期待ですね、『ゴールデンカムイ』の。
小飼:いや、でも確かあれだとなあ、8000億円くらい、たった8000億円かよみたいな(笑)。
山路:今の時代に金本位制に移行してメリットのある国ってあるんですか?