小飼弾です。ブロマガをお届けいたします。
200 Any Questions OK
今号の発行が遅れたのは、質問が重かったから。後回しにしようかとも思ったのですが、八月のうちに「今の私なりの」解答を出しておきたいという気持ちも強かったのです。
Q. なぜ戦争はなくならないか
https://twitter.com/snezu/statuses/367993601097084930
「戦争は悲惨でした」「戦争しちゃいけません」という授業は小中学校で沢山あったような記憶があるが、「なぜ社会はかくも愚かな選択をするのか」というのは、もっと義務教育で教えられていいと思うのだがさてどうだろうか
https://twitter.com/dankogai/status/368004396245712897
教えられるほど分かってないでしょ我々は
A. We♡War
まず最初に言っておきたいのは、「戦争は悲惨なだけのものではない」ということ。それどころか、我々は戦争を愛してすらいます。我々がどれほど戦争を愛しているかは、映画館のスケジュールからもTVの番組欄から本屋の本棚からもスマフォアプリのマーケットからも確認することが出来ます。架空の戦争から実際の戦争のドキュメンタリーにいたるまで、そこに戦争がない日はありません。
「戦争」という言葉に至っては、銃弾も飛び交わず死傷者も出ない場においてすらありふれています。「受験戦争」に「経済戦争」…戦争が本当にただ悲惨で厳に避けるべきものだとしたら、なぜ戦争という言葉はこれほどまかり通っているのでしょう。たかが不純異性行為の描写ですら取り締まる、平和憲法を擁するこの国で。
ヘルシングの少佐ではありませんが、まずは、はっきり認めましょう。
我々は、戦争が好きだと。
A. もし戦争が嫌いだったら…
ではなぜ我々はかくも戦争が好きなのでしょう?
こういう時に役に立つのが、背理法。「もし我々が戦争が嫌いだったら」と考えてみるのです。
もし我々が戦争が嫌いだったら?
人類が霊長を名乗ることはなかったはずです。
ボノボという種がいます。我々 Homo Sapiens とは最も近縁とされる種です。毛深さを除けば彼らと我々の一番の違いは、彼らは "Make love, not war" を体現していることでしょう。同族間の争いを、彼らは本当にセックスで解消しているそうです。
これに対して、同じぐらい近縁のチンパンジーはなかなか好戦的であることが近年わかってきています。
群れ間の関係は敵対的で、集団で他の群れの行動圏にのりこみ殺し合いになることもある。集団から離れて一頭でいるところを数頭で狙うことが多い。単位集団内のオス、メスの比が出生時は1:1であるのに対し成獣では1:2に偏っているのは、ここに一因があると考えられる。同属別種のボノボのオス、メス比が1:1であるのと比べると特筆されるべきことである
で、どちらが栄えているのかといえば、チンパンジーの方。そのチンパンジーより栄えている我々人類が、ボノボはおろかチンパンジーよりも好戦的であることは驚くにあたらないでしょう。
A. 「戦争好き」なのに「痛がり」
しかし好戦的であるにも関わらず、我々は実際の殺し合いがそれほど好きなわけでもなさそうです。兵士に人を殺傷させるのがどれほどの難事かは、「戦争における「人殺し」の心理学」にしっかり書かれています。
そんな「虫も殺せぬ」一般人を、どのように兵士に仕立てるのかというのが同書の主題の一つですが、その前になぜ人は人を殺傷するのを避けるのか考えてみると、一つの結論のたどり着きます。
それは、我々が「痛がり」だということ。
ヒトの痛点は1平方cmあたり100-200個で、他の感覚全てあわせても50に満たないそうです。なぜヒトがこれほど痛みに敏感かといえば、ヒトが壊れやすい生き物だという点にたどり着きます。指一本失われたらそれっきり。もしプラナリアのような組織再生能力があったら、我々はこれほど痛がり屋さんになっていたでしょうか?
さらにヒトの場合、生理的な痛みに加えて心理的な痛みにも敏感です。他のヒトが苦しんでいるのを平然と見れるヒトは滅多にいません。もしそれが標準的なヒトであれば、放送禁止コードなるものも不要だったでしょうし、ましてやはだしのゲンを図書館でどう扱うかが問題になるなどということはなかったでしょう。
「戦争好き」なのに「痛がり」。ヒトの戦争を考える上で、この二つがカギだと私は考えています。
A. 戦争の進化
「戦争好き」なのに「痛がり」。この我々の特性は、二つの方向に人類社会を「進化」させてきました。
- 戦争から痛みを取り除く
- 戦争以外の方法で好戦性を満足させる
まずは1.を見てみましょう。
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「人が戦争を好き」との事ですが、
「他人が戦争してるのを、横から見てるのが好き (おもしろい) 」
ってだけだと思うんですけど…映画しかり、スポーツ観戦しかり。
自分が参戦しなくちゃならない「受験戦争」が好きなヤツなんていないってば。
戦争は、しなくちゃならん状況で勝ち抜かなきゃならんために、しょうがなくするもんでしょう。
スポーツは、実際自分がやればおもろいのかもしれんが、それだって多数派でもないような気がする。
オリンピック観戦よりは、一般の人間は自分自身がやるスポーツに興味なんぞない人が大多数だと思うが。
苦痛耐性があると危険視され、
そうでなければ、敏感と馬鹿にされる上に、
苦しみに耐え続けなければならないというのは、
なかなか世知辛い世の中ではあります。
文章には全く同感です。