バナー

もくじ

1.HOTトピックス
  • Overview :いま、これが話題 ー2013/02/10〜02/22の注目記事ー
  • トリビア :白いロープのこっちと向こう
2.書籍&映画 :アカデミー賞に2本のイスラエル=パレスチナ映画が
3.コラム:
  •  アルミ缶回収 働く喜びと行政による犯罪化の狭間で-中森圭二郎
4.字幕スクリプト;コーパス:アーロン・シュワルツはなぜ死んだか



HOTトピックス



Democracy Nowから最新のトレンドを抽出してざっくり紹介。ニューヨークを中心に、米国の良識派や進歩的文化人やアクティビストが、いま注目している話題をお届けします。字幕では古くなってしまう事件、気になる事件のフォローアップ、トリビアなどのコーナーも有り


Overview: いま、これが話題 : 2013/02/10〜02/22の注目記事


なんだかなあ。期待薄の一般教書


0701一般教書

魔力を失ったカリスマ。こうなると演説上手もむなしさがつのるばかり。2月12日、第2期目初年にあたるオバマの一般教書は、議員たちの度重なるスタンディングオベーションがしらける演説になりました。1月の就任式にオバマが行った演説に一定の評価がみられたように、確かに大統領選ではあまり表に出てこなかった内政でのより革新的な項目をちらつかせてはいます。けれども多くの人々を奮い立たせる深いビジョンも、実現への具体的なイメージも感じさせてくれません。例えば、銃規制。銃を買う人の身元調査の徹底、装弾数の多いマガジンの規制などは、昨年12月のニュータウン市の小学校乱射事件など、特に世間を騒がせた銃乱射事件を念頭に置いて論じられている規制案です。でも、銃がからむその他の犯罪は、どうなのでしょう。DNにゲスト出演したシカゴ大学政治学教授キャシー・コーヘンは、つい最近オバマのシカゴの自宅の近所で起きた15歳の少女が流れ弾で死亡した事件を機に、オバマにシカゴ訪問を促し、インナーシティでの銃と暴力の問題に大統領の注意をひきつけた人物です。このような地区で子供たちが直面する教育、暴力、失業、多くのマイノリティが微罪で刑務所に送られ重罪の前科を背負わされていく現状などにも目を向けなければ銃をめぐる米国の問題は解決しないとコーヘン教授は主張しています。この日のもう一人のゲストで元ニューヨーク・タイムズ紙コラムニスト、ボブ・ハーバートも、人口3億人の米国で3億挺の銃が出回っている現状を指摘し、銃と暴力でカネもうけをする米国社会そのものの問題を問うべきだと指摘しました。

一般教書でオバマは、中間層の再生を説き、最低賃金を1時間7.25ドルから9ドルに引き上げるよう提案しました。ですが、時給9ドルになっても、貧困に陥った人々が中間層に浮かび上がることは経済的に不可能です。米国では5000万人近くがすでに貧困の状態にあり、さらにもう5000万人が貧困に陥りかけているのが現状なのに、オバマが貧困の問題について語らなかったことにも、ハーバートは疑問を呈しました。オバマ大統領は、製造業の再生を謳い、そのための方策としてインフラ再建、研究開発への投資、気候変動への対策にもつながる新しい産業への投資を説きました。もっともな政策です。でも、いずれもおカネがかかります。それなのにオバマは、財政赤字を10セントたりとも増やすことはないと述べました。財源はどこから来るのか、いったいどうやってそんなことが可能なのか、ハーバートは実現性に首をかしげ、さらにメディケアなど、医療福祉の削減の可能性を危惧します。 オバマが一般教書で気候変動問題を大きくとりあげ、議会に取組の必要を説いたことは、革新派の間で好意的に受け止められました。が、具体的にどう動くのか?まずは、キーストーンXLパイプライン建設に関する、大統領の決断が待たれています。オバマには「ノー」と言う準備があるのか、演説が言葉だけのものに終わるのか、注目されるところです。

女性への暴力反対。10億人で立ちあがれ!


070210億人で立ち上がれ

「ヴァギナ・モノローグ」で有名な米国の戯曲作家で女性に対する暴力に反対する運動の活動家でもあるイブ・エンスラーが呼びかけた「10億人で立ちあがれ!(One Billion Rising)」が2月14日実施され、世界各地200以上の都市でデモや集会、ワークショップ、ダンスなどの活動が繰り広げられました。中でも注目なのは、12月にニューデリーでバスに乗っていた女性が集団レイプされ殺害された事件が起きたインドで、「10億人で立ちあがれ!」が大きな盛り上がりを見せたことでした。エンスラー自身、子供の頃、実の父親から肉体的・性的な虐待を受けた体験の持ち主です。今回のキャンペーンでは、アクティビストやセレブリティが自らの体験をビデオ・メッセージで語り、女性たちに運動への参加を呼びかけました。その一人に有名なシタール奏者ラビ・シャンカールの娘のアヌーシュカ・シャンカールがいます。インド出身でアメリカで育ち、いまはロンドンで暮らすアヌーシュカは、子供のころ受けた感情的・性的虐待に触れ、「私の心の中にいる子供時代の私は(あの体験から)完全に回復することはけっしてないでしょう。その子のために立ちあがります。『もう我慢できない』と口々に語るインドのすばらしい女性たちと共に立ちあがります。立ちあがりましょう。ダンスしましょう。ダンスには癒やしの力があります。自分を変えましょう。世界を変えましょう。一緒に立ちあがりましょう」とよびかけました。
One Billion Rising short film in Vimeo


焼き討ちか?警官殺しの元警察官追跡に見る軍隊化した米警察

ロサンゼルス市警の不正と不当な解雇を主張し、警察へのテロ作戦と称して警察官およびその近親者計4名を殺害し逃亡した元ロサンゼルス市警察官クリストファー・ドーナーは、軍隊で戦闘訓練を受けていたこともあり、危険な容疑者として全国の話題をさらいました。カリフォルニア史上最も広範囲に及んだ追跡劇の末、ドーナーは州内の焼け落ちた山小屋で遺体で発見されました。市警当局は、発火性の催涙ガスを使用したことは認めましたが、小屋を燃やす意図はなかったと発表しました。けれども、警察無線の録音記録では、郡保安官局が、木造の小屋に撃ち込めば火事を起こして何の不思議もない引火性の催涙ガス弾を投入することを計画していたことが示されています。また現場周辺で取材していたTV局による生放送でも、「やつを火で炙り出せ」とか「小屋を焼き落とせ!」と叫ぶ警察官の声が録音されていました。当局の発火性催涙ガスの使用による火災は今回が初めてではありません。1993年にはテキサス州ウェイコのブランチ・ダビディアン施設急襲でも使われ、おとな55人と子供28人(うち10歳以下が17人)が焼死しました。また1985年には、フィラデルフィアの黒人解放団体MOVE本部に対し、警察は空から爆弾を投下し、おとな6人、子供5人が死亡、周囲65世帯が焼け落ちる事件も起きています。このような大事件とは別に、ここ数年、戦場にいるのかと見まがうばかりに武装した警察官が、非暴力のデモ参加者に襲いかかる光景が見られるようになりました。Cities Under Siege: The New Military Urbanism(『包囲される都市 新たな都市の軍事化』)の著者、スティーブン・グラハムの話では、冷戦終結後、国防・安全保障およびIT関連大企業は、ビデオ監視システムや地理マッピングシステム、ついには無人機にいたるまで、かつては軍隊のものとされた機械や機器を国内の警察その他の取締当局に売り込もうと躍起になっています。今回、デモクラシー・ナウにゲスト出演したラドリー・バルコは、新刊Rise of the Warrior Cop : The Militarization of America’s Police Forces>(警官戦士の誕生:米警察の軍隊化)の発行間近い調査記者ですが、テレビや映画の影響を受けて、いまどきの警察官は、戦闘気分に駆られ、まるで兵士気分。ドーナーの追跡に関しても、似ても似つかぬ別のトラックを逃走車と早合点して蜂の巣状態に射撃したり、すっかり舞い上がって本来のプロの警察官にあるまじき心理状態に陥っていたとし、警察の軍隊化の危険を指摘しました。