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非会員でも購入できる大好評インタビュー詰め合わせセット! part87大好評記事21本、13万字オーバーで600円!!(税込み)
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part87
女子格闘技で続出する計量オーバー。なぜ女性格闘家に多いのか? はたしてプロ意識だけの問題なのか? 元シュートボクシング王者・髙橋藍さんに話を伺った。高橋さんは編集者として、実体験をもとに『生理が楽しみになる本~知って、やって、身体が変わる!~』を企画・編集している(聞き手/松下ミワ)
――最近、女子選手の計量オーバーが散見されて、1大会で複数人の選手が計量オーバーになっちゃうケースもあったんですよ。
――女子選手の計量オーバーと聞いて、単純に髙橋さんはどう感じますか?
髙橋 簡単に減量ができそうな「情報」って、ネットなどでもすぐにわかりそうですが、でも、人それぞれ身体も、生活習慣も違う部分がある。これさえやれば大丈夫という方法はない。にもかかわらず、情報のみを鵜呑みにしているから、計量オーバーが頻繁に起こるのかな、とは思います。
――鵜呑みにしがちなネットの情報というと、たとえば?
髙橋 単純に「糖質オフがいい」「肉を食べれば体重が落ちやすい」とかですか。私も減量でぜんぜん落ちないときもありました。もともと本を読んだり、情報を頼りにやっていましたが、あるとき不調も続き「こんなんじゃ選手としてもダメになる」と。そんな枝葉の寄せ集めじゃなく、自分で軸を作らないとダメだと思ったんですよね。それで、たまたま知人を通じてアスリートの食についての講習を知り、みっちり3ヵ月間学ばせていただいて。
――専門的な方の知見を?
髙橋 一般社団法人食アスリート協会という、インストラクターの資格を発行しているところで学びました。私はインストラクターになりたいとかではありませんが、本当に藁にもすがる思いだったので、そこで学び始めました。食と心と身体の仕組みのつながり、体調の良し悪しを測るべきポイントなどがわかり、いままでとまったく違う視点に、もの凄く驚きました。
髙橋 たとえば、AさんとBさんが1週間同じ食事や練習をしても、体重の増減や、メンタルや身体の変化は同じような状態にはならないですよね。体質やメンタルの問題も関わってくるからです。単純に同じカロリーや栄養素を摂っても、結果がぜんぜん違うわけです。
――あたりまえですけど、個人差があると。
髙橋 自分にとって何がベストなのか、その軸を作っておかないといけないんです。皆さん、減量となるとやっぱり体重だけを見がちです。しかし、見るべきポイントはほかにもあります。体温は何度か、排泄がきちんとあるか、こういう部分がかなり重要です。体重や摂取するたんぱく質が何グラムとか、数字だけを見ていると抜け落ちてしまうところがあるんです。よく聞く、摂取カロリーのぶん、同じカロリー動けばいいって、身体ってそんなに単純にできてないですからね。
――髙橋さんが現役の頃は、契約体重51キロとかでしたよね?
髙橋 そうですね。でも、普段の体重は58キロとかだったので、めちゃくちゃ減量してました(苦笑)。それこそ、Girl’s S-cupでRENAちゃんと戦ったときなんかは、食事内容とかも本当にボロボロだったと思います。
髙橋 当時はいまみたいな視点はまったくありませんでした。ただ「落とせばいい」と。それこそ、甘いものを食べたくなったら、お昼ごはんはコンビニでケーキを買って食べたり、「そのぶんカロリーを消費すればいいや」と考えていましたね。減量の際も体重は落ちたんですけど、肌はボロボロだし、普段から体調は悪かったですね。でも、減量ってそういうものだと思っていました。
――でも、それだと精神的にすり減りそうですね……。
髙橋 そう。こんな減量をしていたらメンタルが追いつかないのは当然ですよね。不眠や鬱っぽくなったり、それこそ減量で落ちないことも出てきます。私も当時は誤魔化しながらやってました。
――まだ、誤魔かしがきいたと。
髙橋 というか、それしか知らなかったから(苦笑)。
――髙橋さんの場合、試合の何日前から減量を始めていたんですか?
髙橋 基本的には、遅くとも1ヵ月半前ですね。練習も含めて、1ヵ月半前には試合に向けたモードに入って、減量メニューもセットしていくという感じです。
――練習も1ヵ月半前からセットするんですね。
髙橋 練習は、1ヵ月半前ぐらいになるとどんどん強度が上がり、だいたい1ヵ月前ぐらいになると一番強度が高くなります。残り2週間前ぐらいからピークアウトしていくという、そんな感じでした。スパーリングは避けて、ケガしない練習をするというか。
髙橋 私は、たとえば8キロぐらい減量があるとしたら、1週間で1.5キロずつぐらいコンスタントに落としていく計画で、最後の2~3キロは水抜きで調整するというのがベストでした。試合の1週間前に「2キロを切ってたらいいな」というところに持っていくという感じでしたね。ただ、MMAの選手と立ち技は違うかもしれないし、男子と女子とではどうしても違います。
――それは、女子は水抜きがしづらいということなんですかね?
髙橋 水抜きは単純に体内に水分がどれぐらいあるかで、落とせるか落とせないかが決まってくるんですよ。人間の基本的な水分バランスとしては約60パーセントが正常な水分量なんです。ただ、普段から水分や食事の摂取が体調によって水分量が58パーセントの状態から、水抜きをしようとしても60パーセントの水分量だった状態とはまったく違う身体の状態なので、身体が水分量を排出するのをストップするんです。
――身体が危険を察知して。
髙橋 普段は3キロ水抜きできたのに、今回はできなかったという場合、ひとつ見るべきところは体内水分量です。同じことやっても落ちないんですよ。
髙橋 目安としては体組成計で測ります。ただし、これも確実に正確なわけではないので、目安です。それも一度ではなく、普段から目安としてチェックしておく必要があります。減量末期でしたら、自身の状態は選手でしたら、肌の質感とか頬のコケ具合とかでも自覚できると思います。
――その水分量が男子と女子では違うんですか?
髙橋 筋肉量が違いますからね。筋肉は水分保持能力もありますから、筋肉量ある男性選手と女性選手を同じ減量方法を実践すると失敗する傾向にあります。
――つまり、筋肉量が多いと水分量も多いということなんですか?
髙橋 そのとおりです。だから、男子に比べると女子はどうしても筋肉量が少なくなるので、男子が一気に5キロとか水抜きできても、女子だと同じことやってもできないとか。
――はー、なるほど!
髙橋 だから、たとえば1~2日で3~5キロ落とす男子選手を見て、減量幅を予測してスケジュールを立てるのは危険ですよね。よく見てほしいのはパフォーマンス能力が高い選手がどのような減量をしているのかってことです。減量のうまい選手から学ぶのではないですよね。選手は自分にとって何が重要なのかをきちんと見る必要もあると思います。
――「計量クリアして試合できればOK」でいいのか? と。
髙橋 見せるべきは試合でのパフォーマンスですよね。いくら計量をパスしても、いい試合を見せられていないとか、ケガが多いとかだと話にならないんで。だから、選手はどこに照準を合わせているのか一度考えるべきです。
――一番重要なところを見落としてはいけないということですね。
髙橋 減量方法は人それぞれです。人によっては計量前に一回アンダーにすることで調整する人もいますけど、私は絶対にできない(笑)。そんな余裕もありませんでしたし。
――おお、そんなに変わるんですね!
髙橋 メンタルも本当に大きく変わりました。食事を変えると一番最初に変わるのはメンタルなんですよ。
――へえ~、面白いですね。
髙橋 メンタルは本当に数日で変わります。3日後ぐらいに「あれ? そういえば落ち着いてるなと」と。よく「おまえはメンタルが弱い」とか言いがちですけど、本人の問題より食の問題なのかもしれないという視点が持てました。
――具体的に、食事はどう変えたんですか?
髙橋 基本的には、米とおかずを6:4の割合で食べるんです。ご飯には雑穀を入れてそこで副栄養素を摂って、主菜は肉でも魚でもオッケーです。そして、味噌汁は基本的に具だくさんにして、野菜を摂る。とにかく6:4の割合が基本です。
髙橋 そうですね。だから、減量期に入ると、でっかい鍋に豚汁を作っておいて、ヘロヘロになって帰ってきてもすぐに食べられるようにしていました。このバランスで食べると、排泄物の回数や状態が変わってきます。胃腸の状態もよくなるので、メンタルが変わってくるわけです。
――そこが、お通じにもつながるわけですね。
髙橋 以前、MMAの選手で「炭水化物は太るからおかゆにしてます」と言ってる方がいましたけど、よくよく聞いたら便秘。身体はムキムキでしたけど、便秘が常態化していました。結果も伴っていませんでしたが、大事なのは食べてちゃんと出せる身体を作っておくことです。
髙橋 周りから「ご飯はあんまり食べるな」「肉を食え」というアドバイスや、水分を凄く気にした時期もありましたが、しっかりご飯を食べることで神経質にならなくなりました。なぜなら、ご飯は6~7割ぐらいが水分ですから。
――ああ、そうなんですね。
髙橋 水分というと、みんなコップに入った水を思い浮かべるんですけど、きちんと食事をとらないと、のどが渇き、水ばっかり飲むんですよ。しかし、食事でとる水分は吸収もゆっくりで、しかも栄養も含まれています。水をガブ飲みしなくてもよくなります。ただの水は代謝としてもすぐに体外へ出てしまいます。ですから、すぐにのどが渇く、極端な水分制限を必要とする選手は、まずは普段の食事をしっかり見直すと改善点が見つかりやすくなります。
――やっぱり、基本は食事。
髙橋 もちろんです。また、食事と向き合うときに、どういう気持ちで食べるかによって胃腸の働きも大きく変わります。
――そんなことがあるんですか?
髙橋 たとえば、減量がキツくなって食事も単調になってきたりする時期でも、「これを食べたら午後も頑張れる!」とか、「この食事がエネルギーになってくれるんだから、これを食べて絶対に勝つぞ!」という意識で食べると、胃腸もめちゃくちゃ働いてくれるんです。減量中にかぎらず単なる栄養管理だけになると、「これを食べなきゃいけないんだ」「あの栄養素が足らないんだ」と、逆にプレッシャーになったりもしますし。
――面白いですねえ。
髙橋 ただ、私はこのスタイルが合ったのですが、人によって違う方法がベストである人もいるかもしれません。どの食事が合うのか、答えとして見るべきなのは、排泄物です。排泄物が毎日、毎朝、きちんと出ているかどうか。そこは1つの大きな答えだと思います。毎朝で出ていないとか、状態がゆるいとか。それは身体からのサインです。食べてから消化する過程で、どこかで、なんらかの負担がかかっている合図です。
――つねに身体と会話しておくことが重要なんですね。
髙橋 「疲れたからグルタミン酸を摂るか……」とか、栄養素のみで判断する頭でっかちになっちゃうと、それはそれで自分の身体じゃなくて、情報を見ちゃってるという。自分の身体を見つめていると自分で調整するには、いま何が必要なのか、普段の食事、生活を見直すと答えが見えてくるはずです。その観察できる視点こそ、まさに自分の軸ですよね。
――じゃあ、みんなもっと自分のことを勉強しなきゃダメなんですね。
髙橋 それは選手も指導者も、問題意識をもって学ぶ必要はあります。
髙橋 それは、充分にありえます(苦笑)。だから、指導者や選手同士で情報交換していたとしても、それは正しいとはかぎらない。
――髙橋さんの現役時代というのは、周りは男子選手や男子トレーナーばっかりだったんですかね?
髙橋 そうですね。
――となると、相談する相手というのはいなかったんですか? もしくは、女子選手同士で情報交換をしたりとかは?
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女子格闘技で続出する計量オーバー。なぜ女性格闘家に多いのか? はたしてプロ意識だけの問題なのか? 元シュートボクシング王者・髙橋藍さんに話を伺った。高橋さんは編集者として、実体験をもとに『生理が楽しみになる本~知って、やって、身体が変わる!~』を企画・編集している(聞き手/松下ミワ)
――最近、女子選手の計量オーバーが散見されて、1大会で複数人の選手が計量オーバーになっちゃうケースもあったんですよ。
髙橋 ああ……。まあ厳しい言い方ですけど、プロとしては計量をクリアして試合ができるわけなので、批判されるのは当然だと思います。
――女子選手の計量オーバーと聞いて、単純に髙橋さんはどう感じますか?
髙橋 簡単に減量ができそうな「情報」って、ネットなどでもすぐにわかりそうですが、でも、人それぞれ身体も、生活習慣も違う部分がある。これさえやれば大丈夫という方法はない。にもかかわらず、情報のみを鵜呑みにしているから、計量オーバーが頻繁に起こるのかな、とは思います。
――鵜呑みにしがちなネットの情報というと、たとえば?
髙橋 単純に「糖質オフがいい」「肉を食べれば体重が落ちやすい」とかですか。私も減量でぜんぜん落ちないときもありました。もともと本を読んだり、情報を頼りにやっていましたが、あるとき不調も続き「こんなんじゃ選手としてもダメになる」と。そんな枝葉の寄せ集めじゃなく、自分で軸を作らないとダメだと思ったんですよね。それで、たまたま知人を通じてアスリートの食についての講習を知り、みっちり3ヵ月間学ばせていただいて。
――専門的な方の知見を?
髙橋 一般社団法人食アスリート協会という、インストラクターの資格を発行しているところで学びました。私はインストラクターになりたいとかではありませんが、本当に藁にもすがる思いだったので、そこで学び始めました。食と心と身体の仕組みのつながり、体調の良し悪しを測るべきポイントなどがわかり、いままでとまったく違う視点に、もの凄く驚きました。
――3ヵ月の勉強でかなり変わったんですね。
髙橋 たとえば、AさんとBさんが1週間同じ食事や練習をしても、体重の増減や、メンタルや身体の変化は同じような状態にはならないですよね。体質やメンタルの問題も関わってくるからです。単純に同じカロリーや栄養素を摂っても、結果がぜんぜん違うわけです。
――あたりまえですけど、個人差があると。
髙橋 自分にとって何がベストなのか、その軸を作っておかないといけないんです。皆さん、減量となるとやっぱり体重だけを見がちです。しかし、見るべきポイントはほかにもあります。体温は何度か、排泄がきちんとあるか、こういう部分がかなり重要です。体重や摂取するたんぱく質が何グラムとか、数字だけを見ていると抜け落ちてしまうところがあるんです。よく聞く、摂取カロリーのぶん、同じカロリー動けばいいって、身体ってそんなに単純にできてないですからね。
――髙橋さんが現役の頃は、契約体重51キロとかでしたよね?
髙橋 そうですね。でも、普段の体重は58キロとかだったので、めちゃくちゃ減量してました(苦笑)。それこそ、Girl’s S-cupでRENAちゃんと戦ったときなんかは、食事内容とかも本当にボロボロだったと思います。
――当時は、そういう不安定な中でも落とせていたということなんですか?
髙橋 当時はいまみたいな視点はまったくありませんでした。ただ「落とせばいい」と。それこそ、甘いものを食べたくなったら、お昼ごはんはコンビニでケーキを買って食べたり、「そのぶんカロリーを消費すればいいや」と考えていましたね。減量の際も体重は落ちたんですけど、肌はボロボロだし、普段から体調は悪かったですね。でも、減量ってそういうものだと思っていました。
――でも、それだと精神的にすり減りそうですね……。
髙橋 そう。こんな減量をしていたらメンタルが追いつかないのは当然ですよね。不眠や鬱っぽくなったり、それこそ減量で落ちないことも出てきます。私も当時は誤魔化しながらやってました。
――まだ、誤魔かしがきいたと。
髙橋 というか、それしか知らなかったから(苦笑)。
――髙橋さんの場合、試合の何日前から減量を始めていたんですか?
髙橋 基本的には、遅くとも1ヵ月半前ですね。練習も含めて、1ヵ月半前には試合に向けたモードに入って、減量メニューもセットしていくという感じです。
――練習も1ヵ月半前からセットするんですね。
髙橋 練習は、1ヵ月半前ぐらいになるとどんどん強度が上がり、だいたい1ヵ月前ぐらいになると一番強度が高くなります。残り2週間前ぐらいからピークアウトしていくという、そんな感じでした。スパーリングは避けて、ケガしない練習をするというか。
――減量はどういう計画で行っていたんですか?
髙橋 私は、たとえば8キロぐらい減量があるとしたら、1週間で1.5キロずつぐらいコンスタントに落としていく計画で、最後の2~3キロは水抜きで調整するというのがベストでした。試合の1週間前に「2キロを切ってたらいいな」というところに持っていくという感じでしたね。ただ、MMAの選手と立ち技は違うかもしれないし、男子と女子とではどうしても違います。
――それは、女子は水抜きがしづらいということなんですかね?
髙橋 水抜きは単純に体内に水分がどれぐらいあるかで、落とせるか落とせないかが決まってくるんですよ。人間の基本的な水分バランスとしては約60パーセントが正常な水分量なんです。ただ、普段から水分や食事の摂取が体調によって水分量が58パーセントの状態から、水抜きをしようとしても60パーセントの水分量だった状態とはまったく違う身体の状態なので、身体が水分量を排出するのをストップするんです。
――身体が危険を察知して。
髙橋 普段は3キロ水抜きできたのに、今回はできなかったという場合、ひとつ見るべきところは体内水分量です。同じことやっても落ちないんですよ。
――じゃあ、普段から自分の水分量がどのくらいなのかを把握しておかないといけないんですね。
髙橋 目安としては体組成計で測ります。ただし、これも確実に正確なわけではないので、目安です。それも一度ではなく、普段から目安としてチェックしておく必要があります。減量末期でしたら、自身の状態は選手でしたら、肌の質感とか頬のコケ具合とかでも自覚できると思います。
――その水分量が男子と女子では違うんですか?
髙橋 筋肉量が違いますからね。筋肉は水分保持能力もありますから、筋肉量ある男性選手と女性選手を同じ減量方法を実践すると失敗する傾向にあります。
――つまり、筋肉量が多いと水分量も多いということなんですか?
髙橋 そのとおりです。だから、男子に比べると女子はどうしても筋肉量が少なくなるので、男子が一気に5キロとか水抜きできても、女子だと同じことやってもできないとか。
――はー、なるほど!
髙橋 だから、たとえば1~2日で3~5キロ落とす男子選手を見て、減量幅を予測してスケジュールを立てるのは危険ですよね。よく見てほしいのはパフォーマンス能力が高い選手がどのような減量をしているのかってことです。減量のうまい選手から学ぶのではないですよね。選手は自分にとって何が重要なのかをきちんと見る必要もあると思います。
――「計量クリアして試合できればOK」でいいのか? と。
髙橋 見せるべきは試合でのパフォーマンスですよね。いくら計量をパスしても、いい試合を見せられていないとか、ケガが多いとかだと話にならないんで。だから、選手はどこに照準を合わせているのか一度考えるべきです。
――一番重要なところを見落としてはいけないということですね。
髙橋 減量方法は人それぞれです。人によっては計量前に一回アンダーにすることで調整する人もいますけど、私は絶対にできない(笑)。そんな余裕もありませんでしたし。
――髙橋さんが食事や減量について学ばれたあとというのは、やっぱり変化はありました?
髙橋 めちゃくちゃ変わりました! 食事への考え方もぜんぶ変わって。「減量はツライのが当然!」と疑問を持たずにやっていましたけれど、学んだことを実践したら、イメージ的にキツさは半分以下になりましたね。
――おお、そんなに変わるんですね!
髙橋 メンタルも本当に大きく変わりました。食事を変えると一番最初に変わるのはメンタルなんですよ。
――へえ~、面白いですね。
髙橋 メンタルは本当に数日で変わります。3日後ぐらいに「あれ? そういえば落ち着いてるなと」と。よく「おまえはメンタルが弱い」とか言いがちですけど、本人の問題より食の問題なのかもしれないという視点が持てました。
――具体的に、食事はどう変えたんですか?
髙橋 基本的には、米とおかずを6:4の割合で食べるんです。ご飯には雑穀を入れてそこで副栄養素を摂って、主菜は肉でも魚でもオッケーです。そして、味噌汁は基本的に具だくさんにして、野菜を摂る。とにかく6:4の割合が基本です。
――意外とご飯は食べていいんですね。
髙橋 そうですね。だから、減量期に入ると、でっかい鍋に豚汁を作っておいて、ヘロヘロになって帰ってきてもすぐに食べられるようにしていました。このバランスで食べると、排泄物の回数や状態が変わってきます。胃腸の状態もよくなるので、メンタルが変わってくるわけです。
――そこが、お通じにもつながるわけですね。
髙橋 以前、MMAの選手で「炭水化物は太るからおかゆにしてます」と言ってる方がいましたけど、よくよく聞いたら便秘。身体はムキムキでしたけど、便秘が常態化していました。結果も伴っていませんでしたが、大事なのは食べてちゃんと出せる身体を作っておくことです。
――まさに代謝ですね。
髙橋 周りから「ご飯はあんまり食べるな」「肉を食え」というアドバイスや、水分を凄く気にした時期もありましたが、しっかりご飯を食べることで神経質にならなくなりました。なぜなら、ご飯は6~7割ぐらいが水分ですから。
――ああ、そうなんですね。
髙橋 水分というと、みんなコップに入った水を思い浮かべるんですけど、きちんと食事をとらないと、のどが渇き、水ばっかり飲むんですよ。しかし、食事でとる水分は吸収もゆっくりで、しかも栄養も含まれています。水をガブ飲みしなくてもよくなります。ただの水は代謝としてもすぐに体外へ出てしまいます。ですから、すぐにのどが渇く、極端な水分制限を必要とする選手は、まずは普段の食事をしっかり見直すと改善点が見つかりやすくなります。
――やっぱり、基本は食事。
髙橋 もちろんです。また、食事と向き合うときに、どういう気持ちで食べるかによって胃腸の働きも大きく変わります。
――そんなことがあるんですか?
髙橋 たとえば、減量がキツくなって食事も単調になってきたりする時期でも、「これを食べたら午後も頑張れる!」とか、「この食事がエネルギーになってくれるんだから、これを食べて絶対に勝つぞ!」という意識で食べると、胃腸もめちゃくちゃ働いてくれるんです。減量中にかぎらず単なる栄養管理だけになると、「これを食べなきゃいけないんだ」「あの栄養素が足らないんだ」と、逆にプレッシャーになったりもしますし。
――面白いですねえ。
髙橋 ただ、私はこのスタイルが合ったのですが、人によって違う方法がベストである人もいるかもしれません。どの食事が合うのか、答えとして見るべきなのは、排泄物です。排泄物が毎日、毎朝、きちんと出ているかどうか。そこは1つの大きな答えだと思います。毎朝で出ていないとか、状態がゆるいとか。それは身体からのサインです。食べてから消化する過程で、どこかで、なんらかの負担がかかっている合図です。
――つねに身体と会話しておくことが重要なんですね。
髙橋 「疲れたからグルタミン酸を摂るか……」とか、栄養素のみで判断する頭でっかちになっちゃうと、それはそれで自分の身体じゃなくて、情報を見ちゃってるという。自分の身体を見つめていると自分で調整するには、いま何が必要なのか、普段の食事、生活を見直すと答えが見えてくるはずです。その観察できる視点こそ、まさに自分の軸ですよね。
――じゃあ、みんなもっと自分のことを勉強しなきゃダメなんですね。
髙橋 それは選手も指導者も、問題意識をもって学ぶ必要はあります。
――そういう意味では、指導者ですら曖昧な情報しか持ってない可能性もあるということなんですね。
髙橋 それは、充分にありえます(苦笑)。だから、指導者や選手同士で情報交換していたとしても、それは正しいとはかぎらない。
――髙橋さんの現役時代というのは、周りは男子選手や男子トレーナーばっかりだったんですかね?
髙橋 そうですね。
――となると、相談する相手というのはいなかったんですか? もしくは、女子選手同士で情報交換をしたりとかは?
髙橋 女子選手に相談しても、結局持っている情報がみんな同じなんですよねえ。それこそ、格闘技はまだアスリートの世界の中でも情報が回ってくるのがわりと遅いというか。科学的で専門的な人たちの見解が降りてくるのが遅い気がするんですよ。だから、情報交換をあまりしないというのもあるし、あとはよくも悪くも「格闘技はこういうものだから」という固定観念もあるし。だからこそ、自分からちゃんとした情報を取りにいかないと解決策は見出せないですよね。
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